七話 始まる生活
ステンバーイ……
ステンバーイ……。
ファイア!!
「グギッッ!!?」
「オラぁ!!」
罠にはまったモンスターをひたすら銃で撃つ。引き金を引いたままにしておけば後は勝手に射撃が続く。罠の効果が終わるころにはモンスターはすでに瀕死になっていた。
悪いな。
心の中で少し謝っておく。
俺は容赦なく引き金を引き続けた。
「グ……ギ……」
打ち込まれる弾丸に耐えきれなくなったのか、モンスターは最後に小さく唸ると、倒れ伏してそのまま息絶えた。
ふぅ……。
やっぱ、罠があるとそこらのモンスターならこんなもんだよな。
あれから一週間。
ガンさんのもとでいろいろ修行し、ちょくちょく依頼をこなしていた俺は、ようやくこの世界での生活基盤を手に入れた。昨日、ガンさんの家を出るといった時に、ちょっとしたパーティを開いてくれたのはいい思い出だ。本当にあの人には頭が上がらない。
ともかく、一刻も早く元の世界へ帰るためにさらなる強さを目指して精進していた。
言ってしまっては何だが、こんな辺境では手掛かりが少なすぎるため、いずれは拠点を王都に移したい。そのためにはお金はもちろん、強さも全然足りない。
こうして金稼ぎ兼修行としてコツコツと依頼をこなすしかないのだ。
「この解体作業にも慣れないとなー……」
目下のところ最大の敵は、命を奪うことに対する良心でもモンスターでもない。このリアルな環境での死体の解体作業だ。
俺としては銃撃でぐちゃぐちゃになった傷口を見るのすら抵抗感があるのに、さらに皮やら臓物やらをバラバラにする気にはなれない。
自分で言った通り慣れるしかないだろうけど。
「……うぷっ…………オロロロロロロロロロ……」
ダメだ。限界。
せり上げたものを抑えきれず、もろに吐き出してしまう。
おえええええええ……。
こういう魔物じゃない怪物はドロップ品なんて概念ないからなぁ……。使える素材が多いのはいいけど、それはあくまで解体になれた冒険者だからだ。
ガンさんも言ってたけど、駆け出し冒険者はやっぱモンスターよりも魔物を好むというのもよくわかる。キツ過ぎるぜマジで。
「……うぇぇ……」
その後も何度かえずきそうになりながらも、なんとか解体作業を終える。ポーチにアイテムを入れた瞬間、ようやく戦いが終わったことを実感した。
「ふぅー、オロロロロロロロ……」
気持ち悪い……。漂っていた濃厚な死臭を思いっきり吸い込んでしまった。
こんなところにいつまでもいられるか! 俺は拠点へと帰るぞ!!
* * * * *
「はい、じゃあこれ、依頼料500Gね。皮とか肉とか、何か買い取って欲しいものはある?」
「……肉って食えたりすんの?」
「モンスターによるけど、今回のは大丈夫。普通に食べられるよ」
「肉売ったら集会所で食う飯、安くなるかな」
「売ってくれるなら、100G/kgで+食事券。あくまでそのお肉分しか使えないけどね」
「じゃあ売るわ」
「毎度ー。はいこれ。次もよろしくー」
「あいよー」
あの様子だと完全に顔覚えられちゃったな。ガンさんが有名だったし、一緒にいた俺もそれなりに知られてんのかね。これは嬉しい誤算だ。
それはともかく。
あの肉、意外といい値段になったな。どうやらゲームよりも依頼料が安くなった分、素材とかの値段が上がってるように感じる。これも現実化の弊害なのか? ここが避難先って言うのも関係してそうだけど。さて、せっかくの食事券、タンス、もといポーチの肥やしにするつもりはさらさらないし、今日は豪勢に肉料理と行くかぁ!
こうしてゲームの世界へ飛ばされた俺、氷川凍樹の生活が本格的に始まった。
――ようやく見つけました…………。
――ワタシの全てをマスターに……。
……to be contenue……?
これでプロローグの終わりです。
次章、まだ未定!
お読みいただきありがとうございました。