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四話 高まる期待


 ひとしきりおっさん、もといクリ(20)の苦悩を聞いてやってから、俺は気になっていたことを聞いてみた。



「なあクリ」

「あん?」

「なんであれだけ疑われてたのに、いきなり無罪放免になったんだ? 状況がさっぱりわからん」



 あの糞イケメン野郎も、手のひら返したみたいに大人しくなったし、尋問も終わり。疑いが晴れたのはいいけど、なんかスッキリしないんだよなぁ。

 あの状況で必死の言い訳が通じたとは考えにくいし、他に理由があるだろ。今後のごたごたを避けるためにも聞いておきたい。


 クリは、俺の疑問を聞いてやれやれといった感じでため息をついている。

 これもまた常識の一つのようだ。



「はあ……。お前本当に何者なんだよ……。まさか【騙り水晶】も知らねえのか?」

「【騙り水晶】?」



 いや、名前は聞いたことはあるぞ。

 確か西方平原のレアモンスターのホラフキンボーンのレアドロップだった気がする。


 ホラフキンボーンとは見た目はそのまんま骸骨で、主に魔法で攻撃してくるモンスターだ。魔法自体は大したことはなく、しょっちゅう上位の魔法を使おうとしては失敗してたりする。

 ただこいつが真に恐ろしいのは、プレイヤーを混乱状態にしてくること。デバフで混乱魔法を掛けてきて、プレイヤーキャラクターが混乱したところで姿を現してくる。この状態になると、攻撃は外れやすくなるしたまに自分を攻撃してしまうこともある。なかなか厄介な状態異常なのだ。

 そしてホラフキンボーンはデフォで混乱付きの攻撃をしてくる。

 理屈はわからんが、奴の魔法に何回か当たるとランダムで混乱してしまう。

 おそらく、上位の魔法名を唱えて下位魔法を飛ばしてきたりするからではないだろうか。たまに生呼応して上位魔法が飛んでくることもあるし、キャラクターからしたら混乱するのも無理はない。


 こうしてみると厄介なモンスターだが、意外と『WFO』では人気だったりする。

 見かけは骸骨でおどろおどろしいのだが、上位魔法に失敗すると杖代わりの法螺をこんこん叩いて首をひねったり、逆に上位魔法が成功するとそのエフェクトに自分が腰を抜かしてる。

 そしてレアモンスターだけあって、確定ドロップする【たわごとほら貝】はなかなか結構な値段で売れるし、レアドロップの【騙り水晶】はそのままでも相当高いが、ある事情でオークションだととんでもない高値がつく。

 俺も現役時代は奴の挙動を楽しみつつ即死魔法でバンバン狩ってたものだ。


 で、その【騙り水晶】がなんだって?



「こいつはな、嘘ついてるやつの前に置いておくと、濁りが透き通っていくんだよ」

「へー。あ、確かに水晶にしては濁ってて汚いな」

「で、さっき目の前にこいつが落ちてきたろ? それで透き通らなかったから、少なくともお前が嘘をついていないことが証明されたわけだ」

「なるほどな。……ん?でも待てよ? それなら最初っから目の前に置いておけばよかったじゃねえか」

「バカ。そんなことしたら、下らない嘘つかれて透き通って使えなくなって終わりだ。こいつはまた濁るのに数時間はかかるんだよ。それに精神魔法かじってる奴なら【閉心】使われる」

「なるほどな。便利な嘘発見器ってわけにはいかねえのか」

「あと、対象の心理状態が平常だと十全な効果は発揮できない。どうにかして乱す必要がある」

「じゃ、あの尋問官がやたら人の話を聞かなかったり、挑発じみたことしてたのはその目的のためか」



 うまく乗せられてたのか俺。あのイケメン野郎も仕事上仕方なくやってたのか、悪いことしたな。

 次会ったら謝っておくか。




(ま、エイベック(尋問官)は好きであの仕事やってんだが)





    *    *    *    *    *




「で、これからお前は一応自由の身になるわけだが、どうするんだ?」

「どうするって言われてもな~」



 そもそもこの世界の人間じゃないんだよ俺は。いきなり自由って言われても……。


 あ、そういや。



「なあ、ここはどこなんだ? 少なくともファーストタウンじゃねえだろ?」

「どこと言われても説明しようがないんだよな……。まだ名前もねえし、どういったもんか」

「とりあえず避難所ってことだな?」

「まあ、そうなるな」



 避難所の割には、やたらと充実した建物じゃねえか?


 俺が治療を受けていたのはこの建物の三階あたり。で、さっき尋問受けたところは明らかにここの地下。で、今俺がいるのは二階で、この建物は石造り。


 これ、もともと村の中心の建物とか言われても驚かんぞ、ってレベルの完成度。どうかんがえても避難所って感じじゃないんだが、まあ大方、大地魔法使えるやつを酷使したんだろうなぁ。似たような建造クエストが『WFO』にもあったよ。


 てか、これだけ充実した建物が避難場所にある。それでいて魔法を使えるやつが建造したってことは、ここが今の集会所じゃないか?

 もしそうなら、速攻で冒険者申請とジョブ登録したいんだが。




「クリ、集会所はどこだ?」

「なんだ? もう依頼を受けるつもりか?」

「ま、そんなとこだ。で?」

「集会所ならここだぞ。受け付けはすぐそこだ」



 はい来ましたーーーーーー!!!


 これでようやくゲームをはじめられるいやいやゲームじゃないよ馬鹿!!


 逸る気持ちを何とか抑えているが、どうしても心臓の鼓動は収まらない。命を懸けたサバイバルが始まるかもしれないのに俺は異様にワクワクしてる。


 だって仕方ないだろ? 夢にまで見た世界で生活できるなら、多少危険でもこの興奮は当然だ。


 さーって、ジョブは何にすっかなぁー。


 俺の頭の中では、かつて愛用した魔法やスキルやネトゲ仲間のプレイスタイル、様々な見た目の武器防具達が渦巻いていた。

お読みいただきありがとうございました。

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