ご機嫌取りに勤しみましょう
「そういえば、お前、何を企んでいるんだ?」
ふわふわと花壇の中へ入っていった精霊はいつの間にかいなくなっており、残念、と花壇を見渡していれば。
冷たい流し目をこちらに向けているレイシアと目が合う。
「なんのお話ですか?」
首を傾げて聞き返す。
企んでいるとは人聞きの悪い。
しかもそんなことを言われるような発言をした覚えはない。
企んでいるようなあくどい顔でもしていただろうかと頬をむにむにと摘んでみる。
私の行動に、珍獣を見るかのような顔をしているレイシアに私は慌てて手を離した。
「この間の交流会のことだ。ヨルダシア公爵令息に媚びを売っていただろう」
「失礼ですね!そんなことは……いえ、その通りですね」
媚びを売るというはしたない言葉に憤りを感じたが、よくよく考えてみれば間違っちゃいない。
媚を売ってどうにか暗殺ルートは回避しなければならないのだから。
私が素直に認めたことに少し驚いた様子のレイシア。
この間の交流会。
定期的に交流会をすることになった私達は三度目の交流会を行った。
「リラ!」
ぱああああ、と私を見て笑顔になったティナが私に駆け寄る。
「何して遊ぶ?」
にこにこと笑うティナ。
天使か。
ゲームでは顔は可愛いけど、ぶりっこなティナをうぜえ女と認識していたが、幼いティナとのギャップにそんなことを思う。
「おい、そこの女ども!うるせえ!」
ルーファスが偉そうにソファにふんぞり返ってこちらにガンを飛ばす。
「ふぇ!?」と可愛いらしい悲鳴をあげるティナに口元が緩みそうになる。
特にうるさくしたつもりはないし、ティナに声を掛けられた程度でうるさいとは、彼は一体何が気に入らないのだろうか。
「君が一番うるさい」
「ああ!?」
ティオがティナを庇うようにルーファスの視線から守り、睨みながら言葉を返す。
お姫様を守る騎士みたいだなぁ、なんて微笑ましくなったが、あれだ。
私はルーファスのご機嫌を取らなければいずれ暗殺者を送って来られる可能性が高い。
それを阻止すべく私は行動に出た。
「ルーファス様はいつも何をして過ごしていらっしゃるのですか?」
ルーファスの隣に座って、そんな質問をすれば、ルーファスは少し目を瞑り、怪訝な表情をした。
「なんだブス。近寄るな」
「じゃあ少し離れます」
拳一つ分、横にズレる。
「これでいいですか」と聞けば、ルーファスはぐっと顔を顰めた。
舌打ちをして、横を向くルーファスに私は再度質問をした。
その間、ティナはぽかんと此方を見ているし、ティオは嫌そうに顔を顰めている。
「本を読まれたりされますか?」
「まあな」
「どのような本を読まれるのですか?」
「なんでお前にそんなこと言わなきゃなんねぇんだよ」
「知りたいからですよ」
にっこりと笑っていってるのに、ルーファスはしかめっ面のままだ。
「この前とは随分態度が違うな」
「そうですね。この前は貴方がたに関わるつもりはなかったのですが、今後そんなことも言ってられそうにないですし。どうせ関わるのであれば仲良くした方が人生楽しいと思いませんか?」
その言葉に嘘偽りはない。
咄嗟に口から出た言い訳ではあるが、結局のところ本音が漏れた。
よくよく考えれば私はゲームの中のルーファスしか知らない。ティオもティナもゲームとは違うように感じるし、レイシアなんて謎過ぎて面白い。
彼のご機嫌取りをしなければいけないとは思うが、嫌々するより、本当に仲良くなれたらどれだけいいか。
ふと思いついた考えだが、なかなかどうして妙案だ。




