俺の将来がヤバい
初めまして。宜しくお願いします。
はたと気づいてしまった。俺は、死ねなくなったのだと。
不死って格好いいじゃない、とか。無双できるじゃん、とか。
いやいや……。それは、時と場合によるのだよ。
現代社会より文明が劣り、剣と魔法が横行するファンタジーな世界に生まれ落ちたなら、歓迎だったよ!大歓迎だったさ!!
いいか?俺の記憶が確かなら……。
ここは地球にちょっとだけ似ているが、頻繁に不思議エネルギーが発見される世界。
日本国の特定地域が常に侵略の魔の手に脅かされ、人知れず撃退する孤独のヒーローが現れる世界です。一年サイクルで。
日曜の朝に放送されるような世界だと思ったか?
俺もそう思ったが、まだ先があるんだよ。
……パロディ。
その世界観をパロディにしたゲームの世界なんだよ、ここは。
『暁の騎士 アポロクロス』ってな。馬型のバイクにまたがって、こう……なんというか、イカれた格好のヒーロー様が勧善懲悪するアクションゲームがな、有るんだけどさ。
その、懲らしめられる悪の組織『デスロアー』に所属する博士が親父です。
俺を戦闘員に改造したあと、本人が悪い笑顔で話してきたので間違いない。
機械の体を手に入れた!やったね!!エネルギーはクラインの壺から無限ですって……。
ハイここ。ここです。
「おいおい、クラインの壺ってアポロクロスかよ……」
って。
「あれ、何でそんなこと知ってんの、お父さん言ったけ?」
「へっ??」
ってなもんですわ。
「ま、いいか。裏切者の名前が丁度でたし、説明しとくかな」
アレー?聞いたことあるよ、俺の使命。
戦闘員に偽装して戦闘経験を積み、アポロクロスを越える存在になる。
だから信頼する息子に、アポロクロスと同じ……か、それ以上の技術で人体改造を施した、と。
それ知ってます。んで、よく考えたら、でるわでるわ無駄知識。
一致するする現状と。
はい、大好きだったゲームの世界にいます。戦闘員Cとして。
あかーん。戦闘員Cは、だめやー。
奴は戦鬼獣にクラスアップ改造されたあと、予想外の人気が出てさぁ。
製作会社も、ファングッズが売れるし殺すのが惜しくなったんだろうね。
続編の裏ボスにするんだよ。そっからが長い。
続編が次々出るんですわ。その度に死亡撤回。悪びれもなく飄々と姿をあらわすんだぜ?それから、同じ世界観だと必ず敵味方関係無くゲスト出演。
もう、コイツが主人公でいいんじゃないかな?って。
んで、だ。俺の記憶に残る、コイツの最新情報と言えば……。
そうそう、初登場した時代から千年後に発掘されて、正義側で大活躍してたぞ?
機械化と、謎エネルギー設定のおかげでな。
うん……。
そこで話は戻るんだけど。俺がCなんだとしたら最低、千年はこの世界から逃げらんない?ってこと。過酷すぎるんじゃないか、おい。
時間経過系のボッチって最終的に発狂エンドが多かったよな……。
よし、抗おう。この世にさっさと見切りをつけ、来世に期待だ。
が、待って欲しい。
俺を殺せる奴がいるのか?
自殺?謎エネルギーで蘇生しました。
破壊?あ、米粒ぐらいの残骸があれば、謎エネルギーのおかげで完全再生できました。
色々試しました。
耐久性の実験ってな嘘で、親父にも協力してもらいましたが無理でした。
痛覚ある不死身って拷問以外のナニモノでもないわな。
……これは、主人公に頑張ってもらうしかないのっすわー。
将来を憂いて俺、川村 拓也はトイレの個室で咽び泣く。