プロローグ
「ふぁ・・・・・」
大きなあくびをする一人の男子高校生がいた。
「どうした雄也?新学期早々眠たそうな顔をして」
「いやぁ、昨日まで遊びまくってたからなぁ」
大きなあくびをして方は、ここ、私立呈邦高校二年生でこの学校の中で、一番のモテ男である。大和雄也である。
「いいよなぁお前は。運動できて、イケメンで。それに比べて俺は・・・・・」
自分で聞いときながら、勝手にしょげているのは、雄也の一番の親友である八坂実である。
二人は小学校からの親友で、付き合いが長い。お互い信頼し合っている仲だ。
「ははは・・・・・」
「で、でも成績ならお前よりは上だからなっ!」
「はいはい」
雄也は運動はできるが頭のほうは下から数えるほうが早い。
「ん?」
雄也の目に、一人の女子が入った。
「実、あの子誰?」
「どこの子?」
「ほら、今女子便から出てきた子」
そう言って、雄也は一人の女子を指す。
肩甲骨程ある黒髪に、体は細めで、何といっても言葉に言い表せないほどかわいい。
「ああ、早川ね」
「早川・・・・・?」
「えっ、お前、早川知らないの!?」
すごいカミングアウトをされた後のような顔をする実。
「うん・・・・・。」
「お前、人生の九割は損してるな!」
「そんなにか!」
「コホンっ仕方がないなぁ」
実は一つ咳をし、まるでどこかの博士のように説明を始める。
「早川知弦、俺らと同じ二年で成績は学年トップで、けど運動はできない、お前と真逆みたいなもんだ。でも多分、この学校で一番かわいいと思う。ほぼ毎日のように告白されているらしいけど、全部断っているみたい」
「へぇ、彼氏でもいんの?」
「それがなぁ・・・・・いないらしい」
「じゃあ・・・・・俺が告ってみよっかな?」
「マジかよ!」
「もしオッケーもらったら、飯おごりね!」
そう言い残し、雄也は知弦の方へ向かっていく。
「おい!待てよ!」
実が呼び止めらが、一歩遅かった。
「雄也が告って、ごめんなさいする女子なんかいねーだろ・・・・・」
「早川知弦さん?」
知弦は後ろから名前を呼ばれ、振りかえる。
「はい?」
「っ!」
雄也は自分で呼び止めたくせに、近くで見る知弦の容態、そして澄んだ声に、心を奪われる。
「どうかしましたか?」
「あっ、ゴメンゴメン。えーっとね・・・・・・」
話しかけたのはいいが、何も話す内容を考えてなかった。やっぱりバカだった。
「用が無いのなら、失礼します」
礼儀正しく一礼をして背中を向ける知弦。
何か言わなければと思い、雄也がとっさに雄也が出した言葉が。
「俺と付き合ってくれ・・・・・」
雄也の言葉に、廊下にいた生徒が一瞬で注目する。
それはそうだろう。学校一のイケメンが学校一の美少女に告白したからだ。
知弦はゆっくりと振りかえり、そっと口を開ける。
いや、雄也がただそう感じただけかもしれない。
時間が進むのが遅くなった・・・・・。
「ご、ごめんなさい・・・・・」