第92話 2つの聖剣のありえない性能
私とヒカリさんの試合が終わり、サトミさんたちと昼食を頂いた後、私とヒカリさんは王城に来ていた。鷺宮家の関係者で行われた昼食会で、私が、
「サトミさんたちの試合を、見ていかなくてもいいのですか?」
と、ヒカリさんに尋ねると、
「タケル達がサトミさんに勝てる確率なんて、限りなく0だから。」
と言っていた。
そうなんです!準決勝第2試合は、タケルさん率いる『暁のトラ』と、サトミさん率いる『水の踊子』の試合なんです。でも決勝戦で闘うのは、どうも『水の踊子』チームらしい。『暁のトラ』も結構強敵だったりします。なんせ、世界中の『精霊』を味方につけているのですから。
しかし相手は、あの有名な『水の神子』ことサトミさん。パーティメンバーのナオコさんとサキさんの戦闘能力は知りませんが、ギルドランクがSランクと一番上のランクであり、Sランクになった要因が、暇つぶしに行う海の魔物討伐で、海洋性魔物の最大脅威である『テコギンド』の群れを倒してしまったことらしいです。その時いたテコギンドは、20匹ほどだったらしい。普通の冒険者なら、たとえ1匹でも倒すのに苦労するらしいです。
陸上戦と水中戦とでは、そもそも戦い方が違うのですが、20匹のテコギンドを、たった2人で倒してしまうほどの腕前です。ヒカリさん曰く、「『神子』と呼ばれている私たち8人以外で、『化け物』と呼ばれる領域に両足を突っ込んでいる2人」なんだそうです。ちなみにタケルさんは、「片足だけを突っ込んでいる」らしいです。
という事は、『月読みの神子』である私は、『化け物』の1人という事でしょうか?そんな疑問を、ヒカリさんに訊いてみると、涼しい笑顔を浮かべてこう宣言してくれました。
「もちろん!私も、サトミさんも、メーリアも、『化け物の領域』の中に大きな家を建てて、涼しい顔で寝息を立てて昼寝をしている。そして、『化け物』と呼ばれる連中が、その昼寝を邪魔しないように、大きく迂回して『逃げる』ようにその場を立ち去る存在よ。」
それを聴いていたサキさんが、付け足すようにこう言いました。
「そうです!ここテラフォーリアで、『最も喧嘩を売ってはいけない人物トップ10』の中に、メーリアちゃんもしっかりと入っています。ちなみにランキング1位がヒカリちゃんで、2位がサトミさんです!」
以上、昼食時に交わした会話の一部でした。
そんな天地が引っくり返るような会話を肴に、昼食会を終え、私とヒカリさんは今現在王城の中にいます。ヒカリさんは、お父様と2人で、何やら話す事があるらしいので、暇を持て余した私は、騎士団の鍛錬場で、オーガストさんとカラリスさんに、剣と魔法の修練に付き合ってもらっています。いや、実際は、拉致同然に連れ出されたのですが。
オーガストさんも、先日手に入れた聖剣『黄昏の鎌鼬』のスペックを知りたいらしく、王城に現れた私を半ば拉致同然で鍛錬場まで連れてきました。騎士団の所有している剣では、軽く触れただけで粉砕してしまうこの『黄昏の鎌鼬』。まあ、『黄昏の鎌鼬』に対抗できるのは、今この場にある剣の中では、私の持つ『月夜見の剣』か、ヒカリさんが持っている『龍王の鳳凰剣』くらいでしょう。でもヒカリさんの持っている聖剣、実は私ですら見た事がないんです。なので、どんな形状をしていて、どんな能力があるのかも見当が付きません。只言えるのは、そこらにある武器では歯が立たない事だけです。
その事は横に置いておくとして、私も、全力全開の『月夜見の剣』の能力を試してみたいと思っていた処です。一応スペック的には、『黄昏の鎌鼬』よりも『月夜見の剣』の方が上らしいのですが、その差はほんの少ししかありません。剣を操る術者の力量で、簡単に覆るとヒカリさんが言っていました。剣技に腕は、オーガストさんの方が遥か上なので、この場合は、どちらが上に立つのか分からないという事です。
「私も剣の性能を、知りたいと思っていましたので、お互い限界まで聖剣のスペックを引き出してみましょう。
ちなみにオーガストさんは、聖剣のスペックをどのくらい知っていますか?私の方は、これまでの試合で、剣のスペックを2つほど発見しました。
1つ目は、魔力を込めて横薙ぎに振るうと、『鎌鼬』となって斬撃を飛ばすことが出来る。込められる魔力の属性に応じて、鎌鼬の性質が変わる。
2つ目は、『魔法で作り出された現象』を斬る事により『剣に取り込み』、斬撃として『鎌鼬』を撃ち出す時に、『鎌鼬に取り込んだ魔法の性質(火属性なら炎の鎌鼬)を付加』して撃ち出す能力がある。
まだまだたくさん隠されたスペックが存在すると思いますが、今はこの2つだけです。ヒカリさんに聞いても、『自分で調べてモノにするからこそ意味がある』と言われて教えて貰えませんでした。」
とりあえずは、私の持つ『月夜見の剣』の解っているスペックを述べてから、オーガストさんの方に、話を振ります。
「俺の方は、まだ何も解っていないな。なんせ、魔力を込めて軽く素振りをするだけで、鎌鼬が生成されて、数百メートル先の建物やら立木やらが真っ二つに寸断されるんだ。まあ、剣の銘から察するに、風属性の攻撃魔法なら、どんなものでも少量の魔力を込めるだけで出来そうな気がするがな。」
「そういう話なら、ここでやるのは危険ですね。始めたら最後、王城どころかロンドリアの町が、地図上から消えかねません。」
「確かに、それじゃあ、何処でやろうか。」
「そうですね。ヒカリさんとの訓練で、ある程度慣れてきましたし、ヒカリさんも、見ていなくても大丈夫だと言ってくれたので、訓練がてら使ってみようと思います。」
「メーリア様、一体何を使うのかね?」
「空間転移」
私は、オーガストさんとカラリスさんとともに、ある場所に飛びました。飛んだ先は、ヒカリさんと私たち10人が、いつも訓練で使っている草原です。周りを確認してみても、間違いありません。何時しか大きな威力の魔法を発動させて、上半分が消し飛んでしまった岩山や、遠くに見える大きな湖と麓に見える町。たしかあの町は、魔法の標的にされて町中の建物がボロボロのはずです。
「ここは何処ですか?」
感傷に浸っている私に、カラリスさんが聞いてきました。
「ここですか?ここはヒカリさんといつも、魔法の訓練で使っている場所です。場所的には、サンマリオス大陸と言って、テラフォーリアの上空を浮遊している大陸です。あそこに見える町には、1万人ほど生活しているらしいですが、鬼畜なヒカリさんの弟子である私には関係ありません。何時も魔法の標的になってもらっています。」
「サンマリオス大陸ですか。メーリア様も空間転移が出来るのですか?」
遠くに見える町の説明には、何の反応も示さず、私が、ロンドリアの王城からここまで飛んできた空間転移に関して質問してくるカラリスさん。カラリスさんも案外鬼畜なんでしょうか。
「空間転移ですか。大変でしたが、頑張って習得しました。訓練のかいあって、今では、指定した座標に指定したモノを100%空間転移させることが出来ます。そんな事よりもオーガストさん、ここなら何の憂いもなく全力で闘うことが出来ます。」
そうして私とオーガストさんは、剣のスペックを確認すべく、お互いの聖剣を全力で振るったのでした。そのかいあってか、お互いの聖剣のスペックを、いくつか発見することが出来ました。
月夜見の剣のスペック
(1)魔力を込めて横薙ぎに振るうと、『鎌鼬』となって斬撃を飛ばすことが出来る。込められる魔力の属性に応じて、鎌鼬の性質が変わる。出現する鎌鼬は1個だけだが、込める魔力量に応じて鎌鼬の大きさが変わる。
(2)魔法で作り出された現象を斬る事により、剣に取り込み斬撃として鎌鼬を撃ち出す時に、鎌鼬に取り込んだ魔法の性質(火属性なら炎の鎌鼬)を付加して撃ち出す能力がある。
(3)地面に剣を突き刺してイメージをすれば、イメージした通りのフィールドを作り出すことが出来る。範囲は、熟練度位応じて広くなるらしく、今の所半径10メートルほどの広さを変えることが出来る。また、解呪しない限り、フィールドは変化したままの状態を維持する。
(4)各属性に対し、1つの魔法を剣に記憶させておくことが出来、発動キーを唱えるだけで、何時でも発動させることが出来る。(発動回数は無制限)
(5)術者が剣を握った瞬間に、光属性の最強結界が出現する。
黄昏の鎌鼬のスペック
(1)魔力を込めて横薙ぎに振るうと、『鎌鼬』となって斬撃を飛ばすことが出来る。込められる魔力の属性に応じて、鎌鼬の性質が変わる。魔力を込める時に鎌鼬の数を指定すれば、無限に鎌鼬を出すことが出来る。
(2)風属性の攻撃魔法なら、詠唱なしで言霊による詠唱と同じ威力の魔法を撃ち出せる。
(3)風属性の魔法を使用する時、周りの風精霊たちに呼びかけて、術者の使用する魔力をほとんど使うことなく使用できる。
(4)風属性以外の属性魔法に対しては、無詠唱での発動が可能。(使用する魔力量の変化はなし)
(5)剣に魔力を送り込んだ瞬間から、術者の周りに風属性の最強結界が出現する。この結界を突破し、術者に傷を負わせるのはほぼ不可能に近い。(結界を突破できるのは、上位の聖剣のみ)
2時間ほどの戦闘で、見つけることが出来たのはこれだけでしたが、まだまだたくさんありそうです。しかし、これだけでも、剣を手に持った私やオーガストさんに怪我を負わす事など、今の人たちのは無理でしょう。なんという鬼畜なスペック、…さすが、鬼畜なヒカリさんが作り出した聖剣です。
余談ですが、剣のスペックを確かめるための戦闘で、私たちのいた草原の周囲は、地形がまた大幅に変わってしまいました。
具体的に並べてみると、放たれた鎌鼬の威力が強いのか、遠くに見えていた山のいくつかが、何かに切り取られたような形になっています。仮にその山の麓に町や村でも存在していたら、甚大な被害を受けているでしょう。まあ、どんな被害に遭っていようと、私には関係ないことですが。
近くの岩山なんかは、完全に跡形もなく無くなっています。
草原の中にカチコチに凍った氷原があったり、ドロドロに溶け、真っ赤に説けた地面の池があったりします。また、足元の地面には、数百条のの切れ目が遥か彼方まで走っており、遠くに見える湖の水が流れ込んできています。そういえば、遠くに見えていた町の方にもこの切れ目が何本か伸びていますが、…、まあ町がどうなっていようが私たちには関係のない話です。
ちなみみカラリスさんも、私たちの戦闘の余波を受けない場所で、『賢者の杖』でいろいろと魔法を発動していました。カラリスさん曰く、登録している2つの魔法は、発動キーのみで発動可能みたいです。その他の魔法は、詠唱による発動ですが、新代魔法文字で唱えても、古代魔法文字での詠唱よりも、少し上程度の威力に持って行けるそうです。この杖もやっぱり鬼畜仕様でした。
「空間転移」
空間転移で、私たちはロンドリアの王城に戻りました。空間転移舌先は、元いた騎士団の鍛錬場ではなく、ヒカリさんとお父様が会談しているお父様の執務室でした。たしか、騎士団の鍛錬場を空間転移先に指定していたのに、どうしてお父様の執務室に空間転移してしまったのでしょうか。
その事を、ヒカリさんに聞いてみたところ、多分空間転移するときに、私が「ヒカリさんは何をしているのかな」と思ったのが原因らしく、その意識に引きずられ無意識にヒカリさんの魔力を探していたらしいです。そして、その魔力のある場所に空間転移してしまったみたいです。
空間転移、恐るべし。




