第88話 ヒカリの魔法講座~実戦魔法編~
「魔術に必要な『モノ』は、魔法を発動させるための『明確なイメージ』、魔法陣を作る際に唱える『呪文』、所謂『詠唱』ですね。あとは、魔法を発動させるための触媒となる『魔力』と『発動キー(カオスワード)』です。これはいいですね。」
ヒカリの問いかけに、全員が頷いた。
「全ての魔法は『魔術』、つまり魔王を発動させる球の行為が必要になります。ここで最初の質問、『火をつける魔法』に戻ります。それぞれの行為に当てはめて、『火をつける魔法』について述べていきましょう。
まずは『明確なイメージ』はいいですね。何処にでもある『揺らめく炎』、これをイメージすればいいだけです。実際、『炎』には、『燃焼』と言う化学反応と、『炎の色による温度変化』について説明する事が可能です。」
「ヒカリ様、質問よろしいですか?」
「はい、何ですか?」
「ヒカリ様の説明の中で言われた、『燃焼』、『化学反応』、『炎の色による温度変化』という言葉の意味が解りません。可能ならお教え願いませんでしょうか?」
カラリスは、ヒカリの説明の中で、意味の解らない単語が出てきたので、疑問をぶつけた。
「カラリスさんは、鷺宮魔法学園の授業で、『物理』と『科学』を教えている事はご存知ですよね。」
「はい。失礼ながら、鷺宮魔法学園については調べさせてもらいましたので。王都にある魔法学園では、取り入れていない授業ですので、何故教えているのかを疑問に思った事があります。」
「そもそもこの2つは何を教える学問なのかという事からです。メーリアは、特に聞いているように。」
「ヒカリさん、どうしてでしょうか?」
ヒカリに突然振られて、困惑するメーリア。
「これから説明する事は、今時分、学園で実験を交えて教えている個所だからです。王族の仕事で学園を休んでいるメーリアは、補習を兼ねているので、しっかりと聴いているように。」
「分かりました。」
姿勢を正して、聞く姿勢に入ったメーリアを見て、他のメンバーも大事な部分だと理解し、姿勢を正した。
「では話を戻します。簡単にいえば、『物理』とは、『自然現象の普遍的な法則を、数学を応用して表す』学問、『科学』とは、『自然現象の普遍的な法則を、理論立てて説明する』学問です。
鷺宮魔法学園では、魔法の現象を『より明確にイメージ』させるために、『自然界で発生する現象』をより深く理解させるために『物理と化学』を教えています。王都の魔法学園が取り入れていないのは、そもそも『自然界の現象を説明』することが出来る人材がいなかったからでしょうね。便利な『魔法』が昔から存在しているせいで、自然界で行われている現象を『何故?』と疑問に思い、説明しようとする環境がなかったせいです。
なので、カラリスさんたちが知らないのも無理はありません。その事を踏まえて私の話を聞いてください。
『化学反応』とは、簡単に言うと、『ある物体』が『別の物体』になる際に引き起こす『現象』を指す言葉です。それを踏まえて、『燃焼』について説明します。『燃焼』とは、『モノが燃える』という現象を指す言葉です。科学的に説明するならば、『燃焼』に必要なものは、燃料である可燃物、酸素を断続的に供給、可燃物の発火点まで温度を上げる。この三つが揃って、初めて『燃焼』という化学反応がおこります。
これを『火をつける魔法』に置き換えてみましょう。ではメーリア、『可燃物』は魔術的に言うならば何に当てはまりますか?」
メーリアは首を捻る。
「時間他在りますので、しっかりと考えてください。カラリスさんは解りますね?」
「はい、ずばり『魔力』ですね。すべての魔法は、『魔力』を糧に発動します。」
「正解です。メーリアも、少し考えれば出てくる答えですよ。なんとなしに魔法を使うのではなく、どんな原理で持って魔法が放たれるのかを考えながら使うことを、今後は頭の隅に留めておいてください。」
「分かりました、ヒカリさん。」
こうして、ヒカリによる魔法講座が始まった。そうして講義を聴く事約2時間、サトミたちの試合も終わり、今日の大会日程はすべて終了した。
ところ変わって、今は夕方、場所は、闘技場から鷺宮家のロンドリア別宅。昔は支店だったらしいが、手狭になったとかで、今は、今週末にでも開業する鷺宮魔導鉄道鉄道のロンドリア中央駅の方に、支店機能は移っているみたいだ。そして新たに建て直された建物は、地上3階地下2階の大きなお屋敷に生まれ変わった。建物の建つ場所が、下町のど真ん中なので少し違和感があるが、鷺宮家の本宅もそういえば下町のど真ん中に立っていたの思い出した。ヒカリさん曰く、高級住宅街には住みたくないそうだ。理由としては、『堅苦しくて、空気が死んでいる。下町のこの何とも言えない雰囲気が好き』だと言っていた。かくゆう私も、王族、それも皇太子でありながら、この下町の空気が大好きだ。カランで慣れっちゃったのかねえ。
話がそれました。今は、そんな鷺宮家の地下に造られた訓練場にいたりしています。ここなら大きな魔法を使っても、周りに迷惑がかからないとのこと。一体どんだけ強力な結界が張ってあることやら。
「メーリア、それにカラリスさんとオーガストさん。闘技場で話した内容を復習してみましょう。
早速『詠唱』の違いによる魔法の威力の違いを体験してもらいます。使用する魔法は、風属性の基本魔法である『空裂弾』を使用します。その前にお二人は、『魔力の具現化』は出来ますか?」
またヒカリから、訳の分からない単語が出てきた。カラリスは、とりあえずヒカリに聞き返した。
「ヒカリさん、『魔力の具現化』とは一体何ですか?そもそも目に見えない魔力を具現化する事など、不可能なはずです。」
「やはり、ここから既に『魔法の修練のやり方』が違っているのですね。私の魔法の師匠からは、一番最初に『魔力の具現化』を習いました。ですから私は当然できますし、私の弟子であるメーリアも出来ます。メーリア、やって見せてあげなさい。」
「はい、ヒカリさん。」
私は、ヒカリさんい言われるがままに、自分の魔力を2人の前に具現化した。私の魔力は、私の身長の10倍はあり、この小さな体の何処に入っていたんだと思うくらい大きく、そして無色透明で轟々しく輝いている。
「これがメーリアの魔力です。お2人も頑張ればこれくらいの事はすぐに出来ると思います。では、メーリア、その状態のまま『空裂弾』を使っていきましょう。込める魔力は、全て同じ、『小指の先』程度の魔力で、魔力自体は練らずにそのままの状態で込めるように。
では新代魔法文字の詠唱からお願いしましょう。」
私は、オーガストさんとカラリスさんの前で、具現化している魔力から小指に先程度の魔力をと律して詠唱を始めた。使用する詠唱は、新代魔法文字による詠唱。
「我は願う、風塊の礎
風は瞬に駆け、業禍を打ち据えよ
『空裂弾』」
詠唱とともに、無色透明だった魔力が緑色に輝き、メロン大の空気の塊を作り出す。そして撃ち出された塊は、寸分違わず私の指定した場所に飛んでいき、小さな爆発音とともに消えていった。土煙が晴れた後にあったのは、直径50センチほどの小さなクレーター。
「これではオーク1匹殺すことが出来ません。かりに殺すとするならば、込める魔力を今の5倍程度必要です。ではメーリア、次は、古代魔法文字で撃ってみなさい。」
「はい、ヒカリさん。
我は求める、空弾の風神
風塊は全てを凪に導き、風の道を作る
風は瞬に駆け、業禍を打ち据えよ
『空裂弾』」
新代魔法文字とは少し名が撃唱える事になる古代魔法文字による詠唱。しかしその効果は絶大で、造られた空気の塊はスイカ大のサイズ。出来上がったクレーターは、直径が2メートすほどの大きさだった。
「これならばオーク程度何匹いても瞬殺できます。込められた魔力は同じです。しかしこれほどの威力の差があります。」
「たしかに、同じ魔法を放っただけなのに、詠唱1つでこれほど違うとは。」
カラリスさんは、威力の差に驚きを隠しきれていなかった。
「では、メーリア。最後の言霊詠唱をお願いします。」
「はい、ヒカリさん。
風は大地を駆け、全てを薙ぎ払う
風神の怒りは、全てを無に還し
大地に道標となる空弾の轍となる
我求め感じるは、風神の息吹
我求め語らうは、風雅なる風神の舞
風よ瞬に駆け、我とともに全てを滅せよ
『空裂弾』」
詠唱が完成し現れた空気の塊は、直径が1メートルはあるだろう。魔法が着弾した後に現れたのは、直径が20メートルはある大きなクレーター。50メートル四方はある地下室の約半分がクレーターと化していた。
もう乾いた笑いしか出てこない。放った私ですらこうなんだから、只見ていただけのオーガストさん、カラリスさんは、一体どんな表情をしているのだろうか。




