第82話 個人戦①
朝食の後、ヒカリとメーリアは、武闘大会のエントリーのため、一足早く闘技場まで来ていた。武闘大会の出場は、メーリアの修行を兼ねているため、メーリアには個人戦と団体戦の2種目を、ヒカリは、メーリアとともに団体戦にエントリーをする。受付で登録をしている時、背後から見知った声がかけられた
「ヒカリにメーリアちゃんじゃないか。お前たちも大会に出場するのか?」
ヒカリが降る向くと、そこには、タケル達『暁のトラ』とサトミさんがいた。
「タケルじゃない。あなたたちも、大会に出るの?それにサトミさんは、どうしているのですか?」
先にヒカリの問いに答えたのは、サトミだった。
「私は、只の王都観光よ。でもヒカリちゃんが大会に出るのなら、私も出てみようかな。」
「ヒカリは団体戦のみの出場だぞ。メーリアちゃんは、個人戦もでるがな。でも、サトミさんとヒカリが、同じパーティで出ると只の蹂躙になるだろうが。」
ガッハッハと、大笑いしながらタケルが茶化す。
「それもそうね。ヒカリちゃんとは、一度本気で戦ってみたかったから、私は、列の人とパーティを組んで出る事にするわ。丁度、ダーカルにいる2人も、今この町にいる事だし。」
「それはいい案だね、サトミさん。なんだかんだ言って、あの2人もSランクの冒険者だから、面白い試合になりそうだし。サトミさん、事後承諾でいいから、勝手に応募しておこう。」
「それはいい案だヒカリ。」
ダーカルの2人という事は、サキさんとナオコさんですね。可哀想に…。この3人にかかれば、本人の意思など関係なくなるみたいです。
「それはそうと、タケルたちも参加するのよね。」
「おお、ワイスとコリンスは、学園があるから参加しないが、俺たち4人は、それぞれ個人戦と団体戦に出るぞ。メーリアちゃんも、今日は学園じゃなかったのか?」
「私は、王族の仕事として今王都にいるので、今週は学園をお休みしています。その代わり、ヒカリさんから補習を毎日受けています。まだ2日しか経っていませんが、便利な魔法も教えていただきました。この大会の出場も、補習の一環です。」
メーリアは、タケルの質問にいろいろと端折って答えた。
「そうか、ヒカリから直に補習を受けているのか。しかし、メーリアちゃんが王族だったとは知らなかった。」
王族だと分かっても、タケルはメーリアの事を『様』付けではなく『ちゃん』付けで呼び続ける。メーリアは、自分の身分が解っても、態度を変えないタケルに好感を覚えた。
「タケルさんは、私が王女だと分かっても、態度を変えないんですね。」
「まあな。こういう事は、ヒカリで既に経験済みだからな。ヒカリも、地球にいた時は、住んでた土地のお姫様だったんだぞ。俺は、高校時代からの知り合いだが、ヒカリ自身が『様』付けで呼ばれるのを嫌ってな。お屋敷の中以外では、町の住民からも『ちゃん』付けで呼ばれていた。今も、その傾向が色濃く残っているけどな。」
「確かにそうね。ヒカリちゃん、神殿のお仕事以外ではカランのどこにいても、『ちゃん』か『さん』で呼ばれているからね。メーリアちゃんも、ヒカリちゃんの弟子だけあって、その傾向が強いみたいだしね。」
「はい。私も、友達や知り合いには、『様』付けで呼ばれたくありません。何か、『様』付けで呼ばれると、大きな壁が出来ている感じがして、息苦しいです。そういう場面では仕方がないことですが、普段は『ちゃん』付けで呼ばれたいですね。」
懐かしむようにタケルが過去をばらす。サトミも相槌を打ち、メーリアもそれに頷いた。ヒカリは、只苦笑しているだけだ。
「タケルは、この大会の名目は何か知ってる?」
ヒカリは、思い出したかのように、大会の名目をタケルに聞いた。
「確か『皇太子就任祝い』だったか。今代の皇太子は、10歳の王女様だったはずだ。」
「そうよ、10歳になる王女様が皇太子よ。その王女様が、メーリアだと言ったらどうする?」
「メーリアちゃんがそうなのか!
メーリアちゃんも10歳で王女様だし、いろいろと一致するな。俺にとっては、この国の皇太子が誰だろうと関係のないことだ。どんな肩書がついても、メーリアちゃんはメーリアちゃんだ。
それよりも、猛者が勢ぞろいする大会に出て、メーリアちゃんは大丈夫なのか?この大会には、男女はおろか、年齢別でもないぞ。」
当たり前の事が気になったタケルが、ヒカリに聞いた。仮にも皇太子だ。怪我などさせたら問題だろう。タケルの心配をよそに、ヒカリはあっけらかんと答える。
「大丈夫よタケル。剣技の方は心もとないけれど、事魔法に関しては、タケルはおろか、ノリコにもひけを取らないわ。嘘か本当かは、お互いのスキルカードを見せ合えば解るでしょ。」
受付を済ませ、選手控室に移動する一行。メーリアが皇太子のため、特別に一部屋が与えられている。その部屋は、メーリアの関係者しか入ることが出来ないのだが、ある意味タケル達『暁のトラ』も、鷺宮を名乗っているのでヒカリの関係者だ。そのため、堂々とメーリアとヒカリのための控室に入室する。
「タケル達も私の関係者だから、この部屋を使いなさい。」
ヒカリの許可も出ているので、部屋を守る近衛騎士も文句が言えないのである。サトミは、サキとナオコに、大会出場を話してくるそうなので、『団体戦の時に合流する』と言い残して、とりあえず別れた。部屋に入るなりタケルが、先程話に出ていたことを確認する。
「さっきヒカリの話に出たと思うが、お互いのスキルカードをこの場で確認しておこうか。メーリアちゃんが、どんなステータスを所持しているのかが気になるしな。」
ヒカリを含めた6人全員が、スキルカードを具現化して見せあった。
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【カード番号】001-17450-0001
【種別】人間族
【名前】鷺宮ヒカリ(女)
【生年月日】17430年4月15日生(20)
【ギルド口座残高】11,799,664,320,000テラ
【所属】光の大神殿属託大神官(光の神子)・鷺宮商会会長・カラン商工ギルド会頭・鷺宮魔法学園理事長・属託カラン常駐騎士団魔法指南役
【身体的特徴】
身長/体重(165/48)
知力レベル(95/100)
使用体力量/保有体力量(10/3500)
【魔法特性】
魔法レベル(100/100)
魔法属性 光闇風水火地
使用魔力量/保有魔力量(1/5000000)
魔法構築能力(100/100)
【戦闘特性】
戦闘レベル(93/100)
冒険者ギルドランク S
使用武器 魔法剣
【戦闘スキル】
護身用基本体術(90/100)
今上流格闘術(95/100)
コロラド王国騎士団剣技(55/100)
召喚術(100/100)
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「ヒカリはあいも変わらずチートだな。こんな化け物に、どうやったら勝てるんだ?」
「そう?」
ヒカリのカードを見て、タケルが茶々を入れた。
「今日の所は、1割くらいの力しか出さないつもりだから、タケルでも勝てる確率が上がるかもよ。それに、私は団体戦しか出ないから。」
「それでもこのスキルだと…。まあいい。次は俺だな。」
駆けるは、呆れたような顔をすると、自分のカードを見せた。
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【カード番号】001-17450-0010
【種別】人間族
【名前】鷺宮タケル(男)
【生年月日】17430年6月15日生(20)
【ギルド口座残高】1,899,664,320,000テラ
【所属】パーティ『暁のトラ』リーダー・鷺宮魔法学園属託講師
【身体的特徴】
身長/体重(175/88)
知力レベル(85/100)
使用体力量/保有体力量(10/13500)
【魔法特性】
魔法レベル(82/100)
魔法属性 光風水火地
使用魔力量/保有魔力量(1/150000)
魔法構築能力(90/100)
【戦闘特性】
戦闘レベル(93/100)
冒険者ギルドランク S
使用武器 魔法剣
【戦闘スキル】
護身用基本体術(90/100)
今上流格闘術(79/100)
コロラド王国騎士団剣技(55/100)
召喚術(100/100)
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「タケルも人の事言えないじゃない。」
ヒカリは、皮肉を込めて言い放つ。
「タケルさんもすごいですね。」
メーリアは、素直に感動する。
「次は私の番ね。」
タケルの横に座っていたノリコがカードを見せた。
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【カード番号】001-17450-0011
【種別】人間族
【名前】鷺宮ノリコ(女)
【生年月日】17430年3月22日生(20)
【ギルド口座残高】49,664,865,000テラ
【所属】精霊の神子・パーティ『暁のトラ』リーダー・鷺宮魔法学園属託講師
【身体的特徴】
身長/体重(162/48)
知力レベル(80/100)
使用体力量/保有体力量(10/4500)
【魔法特性】
魔法レベル(82/100)
魔法属性 光闇風水火地
使用魔力量/保有魔力量(1/950000)
魔法構築能力(95/100)
【戦闘特性】
戦闘レベル(93/100)
冒険者ギルドランク A
使用武器 魔法剣
【戦闘スキル】
護身用基本体術(90/100)
今上流格闘術(75/100)
コロラド王国騎士団剣技(45/100)
召喚術(100/100)
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「ノリコさんのこの『精霊の神子』とは、一体なんですか?」
「6体の大精霊は、1番最初に6体同時に顕現できたものと契約を交わすの。1番最初は私だったんだけど、既に光の神子だったから断ったんだ。で、2人目がノリコだったというわけ。」
メーリアの問いに、ヒカリが答える。
「そうなんですか。ヒカリさん、私にも精霊魔法は使えますか?」
「使う事は出来るけれど、メーリアはそれ以上のことが出来るのだから、精霊魔法を覚える必要はないわ。次はメーリア。あなたのカードを見せなさい。」
「はい、ヒカリさん。」
本命のメーリアが、カードを見せた。
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【カード番号】001-17450-0155
【種別】人間族
【名前】メーリア=サンダレス(女)
【生年月日】17440年10月22日生(10)
【ギルド口座残高】??テラ
【所属】フレア教ロンドリア大神殿属託大神官(月夜見の神子)・鷺宮魔法学園高等部1年1組・コロラド王国第4王女(現コロラド王国皇太子)
【身体的特徴】
身長/体重(132/22)
知力レベル(33/100)
使用体力量/保有体力量(10/1500)
【魔法特性】
魔法レベル(88/100)
魔法属性 光闇風水火地
使用魔力量/保有魔力量(1/1950000)
魔法構築能力(92/100)
【戦闘特性】
戦闘レベル(56/100)
冒険者ギルドランク ?
使用武器 聖剣『月夜見の剣』
【戦闘スキル】
護身用基本体術(48/100)
今上流格闘術(59/100)
コロラド王国騎士団剣技(56/100)
召喚術(100/100)
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「おいおい、メーリアちゃんもチート持ちなんか。それになんなんだ?この『月夜見の神子』とか、武器欄にある聖剣『月夜見の剣』は。ヒカリ、教えてくれ。」
「メーリアは、テラフォーリアに輝く3つの月の女神の神子よ。夜空に輝く月は、光の眷属。遍く日天を照らすのが私『光の神子』ならば、メーリアは、夜天を遍く照らす『月夜見の神子』と言うわけ。聖剣『月夜見の剣』については、もともと第1王子が持っていた剣なんだけど、『皇太子叙任式』の日に、第1王子が反乱を起こしたの。その時没収した剣に、私が加護を与えてメーリアに渡したモノなんだ。メーリアがこの剣を使いこなすようになったら、向かうところ敵なしになるでしょうね。」
「最後になるが、俺とヒトミはいたって普通だ。何かの神子でもなければ、タケルのように脳筋族でもないからな。」
サトヒサとヒトミは、揃ってカードを見せた。
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【カード番号】001-17450-0012
【種別】人間族
【名前】鷺宮サトヒサ(男)
【生年月日】17430年8月30日生(20)
【ギルド口座残高】99,123,999,000テラ
【所属】パーティ『暁のトラ』リーダー・鷺宮魔法学園属託講師
【身体的特徴】
身長/体重(169/78)
知力レベル(80/100)
使用体力量/保有体力量(10/10500)
【魔法特性】
魔法レベル(70/100)
魔法属性 闇風水
使用魔力量/保有魔力量(1/250000)
魔法構築能力(75/100)
【戦闘特性】
戦闘レベル(83/100)
冒険者ギルドランク A
使用武器 魔法剣
【戦闘スキル】
護身用基本体術(85/100)
今上流格闘術(80/100)
コロラド王国騎士団剣技(55/100)
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【カード番号】001-17450-0013
【種別】人間族
【名前】鷺宮ヒトミ(女)
【生年月日】17430年2月3日生(20)
【ギルド口座残高】19,775,990,000テラ
【所属】パーティ『暁のトラ』リーダー・鷺宮魔法学園属託講師
【身体的特徴】
身長/体重(167/50)
知力レベル(80/100)
使用体力量/保有体力量(10/4500)
【魔法特性】
魔法レベル(72/100)
魔法属性 水火地
使用魔力量/保有魔力量(1/50000)
魔法構築能力(65/100)
【戦闘特性】
戦闘レベル(73/100)
冒険者ギルドランク A
使用武器 魔法剣
【戦闘スキル】
護身用基本体術(70/100)
今上流格闘術(55/100)
コロラド王国騎士団剣技(25/100)
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たしかに普通だ。一般的な冒険者はこんなのもだと言わんばかりに普通だった。
「1回戦、ノリコとメーリアちゃんにだけは同じグループにいてほしくないな。」
「なんでですか?」
不思議そうに聴くメーリア。
「1回戦は、参加人数と日程の関係で、30人が一斉に戦う方式でしょう。ノリコやメーリアちゃんは、魔法1発で瞬殺できそうじゃない。ていうか、あなたたちならやるでしょう。2人ともヒカリちゃんの教えを受けているからね。無駄な体力は使わない主義だから、ヒカリちゃんは。
そうでしょう、ヒカリちゃん。」
「そうね、無駄に体力を使う必要はないわね。メーリア、これも修行の1つです。瞬殺してきなさい。」
「でもヒカリさん、ルールでは、リングアウトしても10秒以内にリングに上がればセーフとなっています。瞬時に戦闘不能にしなければ、…只の風魔法で吹き飛ばすだけでは、瞬殺できません。」
ヒカリの指示で、全員をリングアウトさせて終わらせようと、メーリアは考えていたが、ルール上それは難しいと考え直す。
「相手を殺さない限り失格にはならないのだから、リング上で戦闘不能にしてしまえばいいんだよ。多少の怪我なら治療出来るんだから、手加減を覚えるのには最適な環境だよ。やり方はいろいろあるけど、メーリアが考えなさい。」
「はい。頑張って、瞬殺して見せます。」
「おお!なかなか言うじゃないか、メーリアちゃんも。ノリコも負けていられないな。」
「本当ね。どちらが先にやるのかはまだ解らないけれど、瞬殺勝負をしましょうか。罰ゲームはそうね、『負けた方が6人分の昼飯を奢る』でどう?」
「ええ、その勝負、受けてたちましう。お互い、正々堂々と相手を瞬殺しましょう。」
ノリコの宣戦に受けて立つメーリア。
「2人を相手取るやつが、可哀想に思えるのは俺だけか?」
「いや、俺もそう思っているから大丈夫だ。願わくは、全員がばらけますように。」
タケシとサトヒサは、2人の相手に合掌をした。




