第78話 鷺宮魔法学園の制服と初めての授業
5月5日、今日は待ちに待った鷺宮魔法学園入学式の日です。私は今日から4年間、鷺宮魔法学園で学んでいく事になります。真新しい制服に身を包み、私たちヒカリさんの弟子になった10人は、鷺宮家から学園のある場所まで仲良く歩いていきます。
今日は、大事な娘たちの晴れの日という事もあり、私の両親である国王夫妻。この町の領主であり、私のお友達でもあるテレサちゃんの父親、カトリア様をはじめとしたそれぞれのご両親。そして何と、ヒカリさんとサトミさん、タケシさんの3人が、私たちと一緒に学園まで歩いてくれています。
私たちが通う鷺宮魔法学園は、ヒカリさんの故郷の学校を参考にして、決められた服装を着用して授業を受ける形態です。初等部、高等部ともに、同じ制服を着用します。
私たち女子の制服は、ヒカリさんの故郷の学校でも着ていた『セーラー服』と呼ばれる服です。このセーラー服、私は初めて見る形なので、とてもお気に入りの一着だったりします。夏用として、半袖丈で、白地に独特の形の黒襟、黒襟には3本の白線が入っています。冬服は、黒地に白襟、襟には3本の黒線が入ります。季節を通して、膝丈の黒いプリーツスカートと、黒色のニーソックス、黒のローファーを合わせています。
ちなみに男子は、騎士団の簡易礼装を簡略化したものです。
あと、夏用冬用ともに、セーラー服の胸当てと呼ばれる布に、学園の校章が刺繍されています。男子の方は、胸ポケットに刺繍してあります。
この校章、実はすごい魔法が発動する魔方陣だったりします。発動する魔法は、『始原還元魔法』と呼ばれるもので、次の3つの事象を行います。魔法が発動する時は、空中に漂う魔力を使うため、着用者の魔力は一切使いません。
1つ目は自動修復。制服が戦闘訓練などで破れたりした際、元の姿に修復するみたいです。修復速度は、制服の破れ具合に左右されるそうですが、概ね1~5分程度で元の形の戻るそうです。
2つ目は、1つ目に付随して自動清浄。日常生活でできる汚れはもちろん、血飛沫などの戦闘時の汚れにも対応。この2つの魔法で、制服は、いつでも新品同様の輝きを維持します。
3つ目は、着用者の体の成長に合わせて、制服も成長?するんです。何時でもベストな着丈になるように制服も大きくなっていくんです。最初にこのセーラー服が私の手元に届いた時は、初等部1年生のサイズで作ってあるみたいで、とても入らないだろうと思いました。しかし、校章部分に、私の血液を1滴たらすと、私のサイズにセーラー服が大きくなったのです。それを始めて着た時は、まるでオーダーメイドで作ったかのような着心地でした。
この魔法がかけられた制服は、本当にすごいです。王都にある魔法学園でも、こんな機能の付いた制服は、着用していなかったように思います。それもそのはず。この制服は、今年度から着用が始まったもので、魔法自体、ヒカリさんのオリジナルだったりします。お父様は、私服に駆けられた魔法の性能を聴いた瞬間、ヒカリさんから魔法の購入を打診していました。ヒカリさん曰く、この魔法は、設定金額さえ払って貰えれば、誰にでも教える魔法みたいです。魔法自体はそんなにも高くないのですが、魔法陣を刺繍する時に使う糸が、光属性が付与された糸を使うため、糸代が結構するみたいです。
ちなみに、お父様は、私のセーラー服姿を始めて見た時、すごく感動していました。
去年の鷺宮魔法学園は、没落した貴族の屋敷をそのまま使用していたそうですが、生徒数の増大とともに、今年からは、カランの南門付近に造られた新しい校舎で授業を受けるみたいです。この土地は、鷺宮商会が町の再開発のために購入された土地みたいです。
各学年6クラスある中で、私は、1年1組に決まりました。ヒカリさんに弟子入りした子は、全員同じクラスにいます。初等部も同じようなので、どうも、警備上の関係が一番の理由でしょうか?人ずつばらけて配置されています。クラスの人数は、30人です。初年度は、50人だったそうですが、入学希望者が多かったため、30人編成の6クラスになったそうです。そして、驚いたことに、4年間、クラス替えもなく、また担任も変わる事がないそうです。
ここカランは、王都ロンドリアから遠く、私の素性を知っている子はほとんどいません。しかし、私は、素性を隠したりしません。ありのままの私を受け入れてくれ、そしてたくさんのお友達を作っていこうと思います。入学式が終わり、私たちは、『1年1組』の札の掛かった教室に、担任の先生に引率されて入りました。
「入学おめでとう。そしてようこそ、鷺宮魔法学園へ。まずは、自分の名前が張られた席に座ってください。」
担任に言われるとおりに、自分の名前を探します。どうも、名前が張られている順番には、規則性はないよです。私の名前は、窓際の前から2番目にありました。担任は、クラス全員が席に座るのを確認すると、自己紹介を始めました。
「入学式でも紹介されたが、改めて自己紹介を行います。俺の名前は、『鷺宮マコト』。ここカランで一番の有名人である『光の神子』こと、鷺宮ヒカリの6番目の弟にあたります。鷺宮家に名を連ねて入るけど、俺自身は、二つ名はないから気楽に接してくれて構わない。マコト先生でもマコトちゃんでも、好きなように呼んでくれて構わないから。
教える教科は、『魔法物理学』と『魔法科学』です。要は、魔法を使うにあたり、大自然で起こっているいろいろな自然現象のしくみを、理論的に解説する教科だと思っておいてください。自然現象が、どんな仕組みで起こっているのかを知れば、魔法の使う際イメージしやすいでしょう。
それでは、皆さん、順番に自己紹介といきましょう。窓際の先頭に座っている子から順にどうぞ。」
マコト先生に指名された子が、席を立って自己紹介を始めた。
「わたしの名前は、ワイス=サギミヤです。ヒカリさんやマコト先生とは、親戚関係になります。ここに入るまでは、冒険者として、家族とともに世界中を旅してきました。よろしくお願いします。」
何と、鷺宮家の関係者がクラスメイトみたいです。次は、私の番です。私は籍を立つと、大きく深呼吸をしてから自己紹介を始めます。
「私は、メーリア=サンダレスと言います。一応、この国の第4王女と言う立場にいます。私は、平民だろうが貴族だろうが、分け隔てなく接していきたいと思っています。身分の上下問わず、お友達をたくさん作っていきたいと思っています。」
30人全員の自己紹介が終わると、早速授業が始まりました。最初の授業は、初等部の復習を兼ねた内容でした。
「じゃあ最初の授業を始めるぞ。まずは、初等部の復習からだ。全員、自身の魔力を具現化してみてください。」
教室の後ろで、初めての授業を見守る両親の前で、私たちは、自身の魔力を具現化しました。ヒカリさんから真っ先に教えて貰ったこの魔力の具現化、もし教えて貰えていなかったら、初日から赤っ恥を掻く事でした。クラス全員が、自分の頭上にそれぞれの魔力を具現化しています。
「次はそこから、拳大の魔力を3つ取り出してください。」
マコト先生が次の指示を与えます。ここまではそれほど難しくもなく、難なくできます。これは、同じ魔法、または、複数の魔法を同時発動する際に必要な事です。しかし、次の指示はとても大変な事でした。
「ここまでは全員で来たな。初等部に復習はこれで終わりだ。ここからは、高等部の領域になる。
では、次に行くぞ。次は、拳大を2個、ただし、込める魔力は、片方は2倍だ。」
私は一瞬固まりました。それは、周りのみんなも同じです。これについては、ヒカリさんから、何も教わっていません。つまり、ここからは自分で考えろという事です。
私は、必死に考えました。
まずは、『拳大』という事を無視して、拳大の大きさと、その2倍の大きさの魔力の球を2つ作ります次に、大きい球を、拳大の大きさまで縮めていく作業ですが、これがなかなかうまくいきません。縮めようとすると、魔力の球が弾けて無くなってしまいます。
「メーリア、なかなかいい線行っているな。着眼点はそれでいいぞ。あとは…、そうだな。『魔力を小さく固める』ことを考えてやってみるといい。『料理』を作るのと同じ感覚だ。」
マコト先生は、そう言いながら、私の頭を撫でていきます。どうも、マコト先生は、皆の周りを歩きながら、それぞれ適したアドバイスをかけているみたいだ。
私は、マコト先生の言ってくれた言葉を思い出します。キーワードは、『料理』。私が今まで作った料理はそんなにもないですが、その中にヒントがあるように感じます。その数ある数回の中で、私は、肉団子を作った時の事を思い出します。あの時は確か、ひき肉や卵などの材料を、練り込みながら捏ね、小さく分割して形を整えていました。…つまり、魔力に関しても同じことが出来ると。
私は早速、大きな塊の魔力を練り上げていきます。不思議な感じはしますが、練るたびに魔力が凝縮していくのが解ります。そして、練り上げる事10分、私は拳大まで魔力の球を小さくするのに成功しました。
「先生、出来ました!」
後ろで親が見ているのにも関わらず、思わず席を立って叫んでしまいました。教室の中にいる全員が、私の方を凝視しています。私は、自分の行動に、真っ赤な顔になって席に座りました。
「できたか、メーリア。少し時間をかけすぎだから、1分以内を目標にがんばれ。」
「は、はい。がんばります。」
マコト先生のかけられた言葉に、小さく返事をする私でした。そのあとすぐに、授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響きました。
「今日はここまで。出来なかった人は、出来た人にアドバイスを貰って、明日までに出来るようになっておく事。今日は半日だが、明日からは、午後からの実習もあるからそのつもりで。」
学級委員に指名された私の号令で、初めての授業は終わりました。




