↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私達、『パーティ鷺宮』です。  作者: ai-emu
第9章 帝国軍の侵攻
71/111

第66話 国境の町の攻防

年末の慌ただしさが始まる頃、コロラド王国のの北、ケール山脈によって隔てられたタリルトリア帝国の帝都べリングラード王宮内の帝王の執務室の扉を叩く音がした。

”コンコン”

「誰だ。」

「カイト様、補佐官のクニマツです。コロラド王国侵攻作戦の作戦指示書が完成いたしました。ご覧になりますか。」

「クニマツか、早速見ようではないか。」

「畏まりました。」

帝王の補佐官クニマツが、帝王であるカイトの許しを得て、執務室に入ってくる。執務室の机の上に広げられているのは、タリルトリア帝国とコロラド王国が描かれている1枚の地図。その地図を挟んで、帝王と補佐官が向き合った。

「地図に示しながら、早速説明をしてくれ。」

「分かりました。では、我が軍の現在の状況から説明いたします。」

補佐官の報告は、現在の帝国軍の状況の説明から始まり、春の雪解けを待って、コロラド王国の王都ドンドリアまでの最短ルートでの侵攻作戦の概要を、帝王に説明した。

「以上で説明を終わります。この作戦でよろしければ、こちらにサインをお願いいたします。」

「分かった。この計画に従い、滞りなく準備をしろ。来年の春になったら、目に者見せてやる。」

肯定は、書類にサインをした後、窓から外の景色を見た。窓から見える城下は、降りしきる雪が果てしない銀世界を作り出していた。

「クニマツよ。」

「はい、何でしょうか。」

机の上に広げられた書類や地図を片づけながら、補佐官は答えた。

「俺たちがこの城の中庭に落ち、何の因果か、時の皇帝陛下に見初められてから40年の月日が経った。跡取りのいなかった皇帝陛下の養子になって、玉座を継いでからの日々は、大変だったな。」

「はい、今ではいい思い出です。」

いつの間にか用意された果実酒をコップに注いで、皇帝に手渡す補佐官。コップに注がれた果実酒を飲みながら視線を城の中庭に落とすと、そこには、1台のバスが止まっている。40年経った今でもまだ現役で動かせれそうなほど、そのバスは色褪せずに時を止めていた。

「…、帝国の版図は、広く深い。おそらくは、テラフォーリアで最大の版図を誇っているだろう。」

「……。」

補佐官は、無言で肯定し、果実酒を飲んでいる。

「素化し、人が生活できる場所は、世界で最も…、狭いだろう。平原の広がる北の大地は、万年雪と万年氷に覆われ、使い物にならん。雪と氷の下には、良質の大地が眠っているだろうが、…使うことが出来ん。

広大な森に覆われている東側は、魔物の巣窟だ。奥に入るほど強い魔物が跋扈しておる。今の帝国の戦力では、それらを駆逐する事は出来ん。魔法と言う地球ではありえんほどの大火力をもってしても、所詮人の力には限界がある。

人は、南と貫く山脈と氷原に挟まれた狭い土地でしか生活することが出来ない。故に今日の帝国の版図は、豊かな土地を求めた結果と言える。」

「…皇帝陛下。」

「何だ。」

「歴代の皇帝陛下は、行軍のしやすい西へ向けて進行してまいりました。しかし、何故今回の侵攻は、山脈を越えた南側のコロラド王国なのでしょうか。」

「そんな事か。補佐官は、コロラド王国とは、どんな場所か知っているか?」

「はい、豊かな台地が広がり、鉱物資源に富み、…国土の南には、凍る事のない海が広がっております。それと、龍神の神子がいるとかどうとか。」

「豊かな国土と海も大事だが、一番大事なのは龍神の神子だ。時には、国王ですら命令に逆らえないほどの権力がある。補佐官よ、この龍神の神子、お前はどう感じた。」

帝王は、補佐官に、感じたままを聴いた。

「龍神の神子ですか。たしか、この世に現れたのは、数年前の今頃の事でしたか。神子については、密偵に調べさせて、姿絵まで書かせましたな。その姿絵を見せられた時は、心底驚きましたな。神子の本名については、調べることが出来なかったのですが、『光の神子』と呼ばれている方は、まさしく鷺宮学園の生徒会長『今宮光莉』だったのですから。」

「そうだな。さらにまだ二十歳前後の若さだ。あれは。一体どうなってるんだと、当時は思ったものだ。」


時は経ち、行軍できるまでは雪解けも済んだ3月中旬、帝都べリングラードの郊外では、10万にも及ぶ帝国軍が、行軍のために集まっていた。

「敵国を蹂躙せよ!」

帝王カイトの合図で、帝国軍が、コロラド王国にむけて進軍を開始した。

1か月後、帝国軍は、コロラド王国との国境まで進軍していた。タリルトリア帝国とコロラド王国の間には、ケール山脈が両国の交流を阻むかのように横たわっている。そのため、両国を結ぶ街道は限られている。大動脈となっているのは、帝都べリングラードから山脈の一番低い場所を抜け、カランに至り王都ロンドリアへと抜けている街道だ。

街道の国境は、両側を高い崖に阻まれた幅100メートルほどの空間を仕切るように高さ20メートルほどの城壁が帝国側と王都側にそれぞれ聳えている。城壁の間には、雪解け水が溜まった深く広い濠になっており、この濠に溜まった水を、両国が生活水として利用していた。国境上にあるこの濠を渡るには、各城門観を繋ぐ幅10メートルほどの橋を渡るしか方法がない。

門の内側には、帝国側、王国側ともに、宿場町が形成されている。帝国側の宿場町をマリングース、王国側の宿場町をケロットを呼んでいた。国境を挟んだ宿場町だが、町の規模、発展度合共に、ケロットの方が上だ。その差は歴然で、両国の経済力の格差を物語っているかのようだ。

ケロットの町並みは、崖の谷間に造られた細長い町だ。城門に向けてのなだらかな上り坂になっており、城門付近に警備兵の宿舎があり、街道沿いには、宿屋が100軒ほど軒を連ねている。国境から一番離れた場所には、少し広い土地があり、そこがケロットの町の中心地になっている。建物は、冬場の豪雪に耐えれるように造られた石造り。街道には、石畳が敷かれ、宿屋と街道の間には、深さ2メートルの幅の広い側溝が整備されている。側溝には常に濠から引き入れた水が流れており、除雪された雪を投げ入れる仕様になっている。

逆に、帝都側の宿場町マリングースは、何処か寂れた感じの町並みだ。ケット同様に雪対策で石造りの建物なのだが、建物の整備、修復はあまり進んでおらず、長年放置されて崩壊してしまった廃屋が、街道沿いに点在している有様だ。帝国は最低限の経済力しかなく、何処の領主も、自分が住む町の整備しかお金を使う余裕がないのだ。

そのため商人や旅人は、よほどのことがない限り、ケロットに宿をとる。ケロットの市場の方が物資が豊富であり、何よりも、宿の部屋のグレードがいいからだ。マリングースが整備されない理由の一端でもあるのだが、帝国側は、町を整備してお金を落としてもらおうとする考えがないように伺えていた。

今、ここマリングースには、帝国軍約5万人が駐屯していた。その眼前には、固く閉ざされた国境の門がある。帝国軍が大軍を引き連れて国境に現れた時に、王都側が国境を閉鎖してしまったのだ。侵攻軍の隊長クラスは、ぼろいながらも宿屋に入り、それ以外は、町の郊外にテントを張って、前線基地を形作っていた。マリングースで一番豪華な宿屋の一室で、侵攻軍を率いる将軍を前に、作戦会議が始まっていた。

「明日の日の出を待って、ケロットに総攻撃をかける。その際の注意事項だが、町の建物には、一切の被害を与えるな。無傷で町を占領する事を心がけろ。そのためにもまずは、王国側の警備兵を根絶やしにすることが肝心だ。」

こうして作戦会議が始まり、実行に移される。

翌日、日の出と同時に帝国軍の攻撃が始まった。両軍とも、唯一の進入路である橋の確保を最優先に、城壁の上の警備兵の駆逐に当たっていく。両軍の攻撃で、双方の城壁があちこち崩壊し、城壁の機能を失った頃、帝国側から、大群が押し寄せてきた。雪解け水をが大量に流れ込んでいた濠は、水嵩が増しており、現在は、橋桁ギリギリまで水を湛えている。帝国軍は、双方の城壁が崩壊するのを待って、堀の水を凍らせたのだ。凍った濠の上を、帝国軍が渡り、ケロットの町に雪崩れ込んでいく。防戦で手いっぱいだった王国軍は、帝国軍の侵入をあっさりと認めてしまい、ケロットの町は、ほぼ無傷で帝国軍に蹂躙されてしまった。

数日間の睨み合いの間に、町の住民はすべて避難しており、町を接収する作業は、滞りなく終了した。

ケロットの町からは、遠くケルンの町並みを見ることが出来る。ケロットの町を占領した帝国軍は、町の代官所を本部に据えて、次なる目標であるケルンの町を遠くに見ながら作戦会議を始める。

「次の目標は、あの町だな。参謀長、物資の接収と搬入状況はどうなっておおる。」

「は!ケロットの町からの物資の接収状況ですが、芳しくありません。睨み合った時間が長すぎたみたいで、住民が避難していく際に、物資も粗方持ち去っていったみたいです。そのため、物資の大半を、帝国側から運び入れている最中です。ケルン攻略には、後2~3日の準備期間が必要だと思われます。」

「そうか。それでは、ケルン攻略時は、奉仕した後すぐさま攻撃できるように準備しろ。」

「畏まりました。そのように準備いたします。」

ケルンの町が攻撃されたのは、ケロットの町が攻略されてから5日後だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。