第34話 鷺宮雑貨店
『鷺宮』の名のもとに一つの家族となったヒカリたち。今日は、ヒカリが経営する雑貨屋の開店の日だ。店の開店準備のため、忙しく動いていたヒカリ。
魔法薬は、効果の効き具合によって、5段階に値段を設定した。一番高い魔法薬は金貨1枚という値段だ。これを使用すれば、命さえあれば大抵の怪我なら瞬時に治癒するほどの優れもの。切断された腕でも、切断か所に魔法薬をかけて固定しておけば、一日でくっつけることが出来る。二日もすれば、問題なく腕を使えるようになるのだ。一番安い魔法薬でさえ、大抵の毒の解毒をしてくれる。値段は、銀貨1枚である。材料さえあれば、すぐにできるので、店の裏の倉庫には、大量の薬草が保管されている。
魔法薬に加工してしまうと、長期間の保存には向かないのが難点だ。そのため、消費期限を10日に設定している。10日を過ぎたモノは、効き目の保証は一切しないことを明記した紙を、魔法薬を売る際に手渡すことにしている。
魔法薬は、雑貨屋を開店する前に、冒険者仲間に無料で試してもらっている。すでになかなかの高感度で受け入れられており、店の開店日を聴きに来る冒険者が後を絶たなかった。
あとの売り物は、ヒカリが作り出し、先の魔物討伐時に好評だった魔道具だ。
ヒカリのメイン武器でもある『魔法剣の柄と籠手』、値段は金貨1500枚。
武空を、風属性でもない術者でも使えるようにした『風の執行者』、金貨1500枚。
風の執行者の水属性版である『水の執行者』、金貨1500枚。
『闇の革袋』と命名した、闇魔法『闇の倉庫』を簡略化し、誰でも使えるようにした品だ。『闇の革袋』は、闇属性の魔布(闇属性を付加された糸で織られた布)を袋の裏地として使用している。袋の入り口の大きさまでの物しか中に入れる事は出来ないが、荷物を少なくするメリットがある。値段は、大きさにより銀貨5~50枚。
あと、数多く取り揃えた小物の中では、『水玉』と命名したものがある。竹筒の中などにこの球を入れておくと、発動キーを唱えるだけで、いつでも新鮮な水が手に入る逸品だ。水の豊富なカランではあまり利用価値はないが、水資源の乏しい場所では大活躍するだろう品物だ。大きさによって一回あたりに出る水の量が決まるため、値段は、鉄貨10枚~金貨100枚まで幅広く設定してある。小指の先ほどの大きさが鉄貨10枚で、出る水の量はコップに1杯程度。金貨100枚ともなるとその大きさは、小さな倉庫ほどある。出る水の量は、小さな溜め池程度なら満水にできる量だ。店には、スペースの関係上、テニスボール程度までの大きさしか並べない。それでもバスタブ1杯程度の水を出すことが出来る。値段は、銀貨50枚とした。
これに火属性を加えてお湯を出すタイプもある。名称を『温玉』とした。お湯の温度は、40℃~100℃まで5℃間隔で設定している。こちらは、玉の大きさと設定温度により値段が違い、銀貨10枚~金貨1枚とした。
また、闇魔法『闇の倉庫』を発動するための術式付与も行うことにした。闇の属性持ちしか使う事は出来ないが、これを使えれば、冒険者の悩みの種だった荷物の運搬が容易になる。術式付与の料金は、金貨50枚だ。これは先のケルンで術式を付与したときの値段にした。
生活に密着している魔法は、術式付与を積極的にしていこうと思う。値段は、金貨1枚程度にする予定だ。値段が高いと思うなら、自分の力で習得してくれればいい。
雑貨屋は、武器屋も兼ねており、武器や生活刃物を製作するケンジも忙しく働いていた。ドメイクの屋敷で、ケイコたち奴隷を拘束していた鉄格子と拘束具は、光魔法で神鉄にしてからケンジに渡した。神鉄で製作された武器は、魔法剣と同様、何でも斬ることが出来、さらに刃こぼれしない。
開店準備の傍らで、ヒカリは、コロラド王国のあちこちに購入した、家とカランの本宅とを繋ぐ転移ゲートの設置もしていた。それぞれの家の地下にゲートは設置されている。ゲートを利用できるのは、ヒカリから通行パスを受け取っている者だけだ。
今現状では、鷺宮家の家族だけに使用できる権限が与えられていた。通行パスは、指輪の形をしており、指輪には、白く輝く水晶が埋め込まれていた。ゲートを利用する時は、指輪の水晶と、ゲートに設置してある黒水晶とを合わせ、行きたい町のゲートを指定し、発動キーの『ゲートオープン』と唱えると、瞬間移動していくのだ。よく利用しているのは、武器や刃物の材料を調達するために、カエデテラスに行くケンジと、食材の魚の買い付けにバーガルに向かうサトミだ。
それぞれの町の家には、現地で雇った管理人さんが暮らしており、維持管理を任されていた。管理人さんには、緊急事態が起こった際には、ゲートを破壊できる魔法を教えてある。魔法と言っても、ただ発動キーを唱えるだけだが。発動キーは、家の中でならどこで唱えてもゲートを破壊できるようになっている。
雑貨屋の開店の日、ヒカリは、朝早くから店を開けた。隣でサトミが開いている食堂と同じ時間に、雑貨店を開いたのだ。回転と同時に、冒険者たちが店に押し寄せた。開店日を知らせていなかったのにも拘らず、店の中はすでに客でごった返している。彼らは、朝早くに町の外に飛び出す冒険者だ。彼らの目的は、お試し期間中、無料で配られていた魔法薬だ。受けた依頼に応じて危険度が上がるため、それぞれにあった魔法薬を購入していく。『水玉』と『温玉』も飛ぶように売れていた。大きさはピンポン玉サイズが売れているみたいだ。『温玉』は、90℃の熱湯が出るタイプがよく売れていた。
早朝の喧騒が落ち着くと、ヒカリは一度店を閉めて、朝食の準備をする。そのあと、書類整理や買い物などをするため、昼食後までは店は閉めたままだ。昼食後、再び店を開く。昼からは、ゆっくりを買物をする人で賑わっている。ヒカリ謹製の魔道具やケンジが作り出した刃物や武器は、この時間帯によく売れる。早朝の時間帯に買っていくのは、すぐに必要な人だけだ。使い物にならない武器を買い替える人は、この時間帯にゆっくりと買いに来る。己の命を預ける武器は、慎重に選ぶのは当然のことだ。これに時間をかけない者は、たいていすぐに死んでしまう。
今はまだ従業員がいないので、店を閉めなければいけないが、ギルドに出した求人がうまく集まれば、1日中店を開いていることもできるだろう。ヒカリが雑貨屋を開いて、1ヶ月がたったある日の午後、ギルドの職員が、ヒカリの元を訪ねてきた。ヒカリは、雑貨屋のの事務スペースでギルドの職員と対面した。
「今回訪問させてもらった内容は、鷺宮商会からギルドに依頼された求人に関することです。今、この求人に、20人近くの応募があります。内訳は、すべて女性で、人間族が13人、獣人族が10人となっています。我々といたしましては、仕事が少ない獣人族を中心に雇っていただきたいと考えています。」
「私としては、獣人族だからという理由で門戸を閉ざすようなことは致しません。こちらの要求通りの仕事をしてくれれば、誰でも構わないのですが。ちなみに今回応募してきた者の身元はしっかりしているのでしょうか?」
「なぜ身元をお聞きになるのですか?」
「私たち鷺宮商会が扱っている商品の中には、高価なものも含まれております。特に『鷺宮雑貨店』の商品に多くあります。商品の盗難横流し等がありますと、私の信用が落ちてしまいますので。」
「そうですねえ、特にここは、冒険者にも人気の雑貨店ですから。どうしてもそのような事を考えている者も中にはいますね。しかし、ギルドからご紹介する者たちの身元は、我々ギルドが保証人となっているのでしっかりとしています。過去の犯罪歴や、誰と友好関係があるのか等、しっかりと調べさせております。」
「そういうお話でしたら、一度面接をしてこちらで判断しましょう。そうですね。3日後の日曜日の午前中、そうですね、9時と10時の鐘の間に来てください。隣の食堂の方で面接をしたいのですが、応募者に連絡をしてもらってもよろしいですか?」
「いいですよ。応募者全員に話を通してこちらに来させます。私も3日後の面接時、こちらに来させていただきますがよろしいですか?」
「はい、それは別に構いません。こちらからもよろしくお願いします。」
こうして、3日後に急遽面接をすることになった。ヒカリは、この求人に関係するサトミにも話を持っていった。
「サトミさん、3日後の日曜日ですが、1日開けておいてくれませんか?」
「ヒカリちゃん、何か私に用事でもあるの?」
「はい、ギルドを通して求人していたのですが、その日にその子たちを集めて面接をここで行います。一応私の雑貨店の求人でしたが、サトミさんの食堂でも、人員を募集していたので、一緒に面接をするのもいいかなと思いまして。」
「分かったわ、ヒカリちゃん。次の日曜日は開けておくから、2人でいい子を採用しましょう。」
サトミは、ヒカリの申し出を快諾した。
話の矛盾点を修正しつつ、加筆しています。




