第23話 指名依頼②
多佳子に、護衛依頼を任せた光莉は、ケルンの騎士団の屯所に来ていた。光莉の他には、総勢20人の騎士団と、通常依頼を受けた冒険者が数人。昨日の話し合いで、光莉は、騎士団隊長から、魔法剣を教えてほしいと言われていた。テラテクスの固い表皮を貫ける武器がケルンにはなく、遠くカランから取り寄せるには時間がない。既に封鎖されている街道を使えないためだ。南から攻めるセイルンには、カランから武器が運び込まれていた。よって必然的に使用できる武器が、魔法剣だけになっていた。
魔法剣の魔法は、有名な魔法だ。詠唱の新代魔法文字も、簡単に手に入る。しかし、いざ使おうとすれば、莫大な間量を消費する。しかし、発動時間がとても短いため、最終奥義としての役割しかない。
騎士団隊長は、そんな魔法剣を只の鋼の剣のように操る少女に教えを乞うことにした。このテラフォーリアでは、力こそ全て、コロラド王国に至っては、年齢、性別、種族すら関係なく、力ある者が、それ相応の地位に就いている。ちなみにコロラド王国の王国騎士団総隊長は、20代の女性という話だ。
光莉は、『魔術大全』に書かれていた魔法剣発動の方法を参考に、少量の魔力でも発動するように改造した魔法陣を、剣の柄の内側と、騎士団のはめる籠手に刻武庫とで、この問題をクリアーして見せた。つまり、長時間魔法剣を発動させることに成功したのだ。
これについては、一緒に研究開発した隊長と、装備課の課長も、驚きを隠せなかった。光莉は、短時間で、魔法剣の問題を克服し、尚且つ誰でも長時間発動できるようにしてしまったのだ。それは、詠唱の新代魔法文字に起因したいた。誰でも使える新代魔法文字は、モノによっては魔力の無駄遣いを産む。しかし、言霊を使用すれば、その問題が無くなるのだ。言霊による詠唱は、最少の魔力で、最大の結果を生み出せるからだ。
光莉は、この開発した『魔法剣の柄と籠手』について、金貨1500枚の値段を付けた。それは、開発に携わった隊長と、装備課の課長がこう言ってくれたからだ。
「光莉君が最初から最後まですべて製作したのだから、商品として売りなさい。売値は、光莉君の言い値になるだろう。それについては、誰にも文句を言わせないから安心しなさい。」
騎士団隊長は、討伐メンバーの前で、討伐時の確認事項について話している。
「…さて、ここで私から質問だが、テラテクスと討伐するにあたって、君たちは、どんな武器を使うかね。」
隊長の質問に、冒険者の一人が答えた。
「テラテクスは、龍種の魔物だけあって、全身に生えている鱗が固くて、只の鋼の剣じゃ肉まで届かん。鱗を貫通させて肉まで切ろうとするなら、精霊の加護が付いた『属性剣』か、聖剣魔剣の類を用意すればいいだろう。
今、ここにいるメンバーで、それらの剣を持っているのが、どれほどいるのか知りたいな。あと普通の鋼の剣でも、属性剣並に強化できれば何とかなるのだが。」
今回集まったメンバーのほとんどは、剣に魔法を纏わせた戦法を採っているのが多く、属性剣や聖剣を持っているのは少なかった。それは、騎士団の中でも言える事だった。何より、属性剣や聖剣、魔剣はとても高く、ホイホイ持ち歩ける代物ではない。剣に魔法を纏わせるのは、高価な属性剣や聖剣に変わる代用手段だった。隊長は、それを見越して、皆に提案した。
「ところで君たちは、魔法剣を使うことが出来るかね。」
冒険者の一人が大きく笑いながら答えた。
「隊長ともあろうものが、そんなことを聴くのっかね。魔法剣は使い勝手が悪いから、たとえ知っていても使おうとは思わないな。たしかに、魔法剣なら、テラテクスの固い鱗を切り裂く事は出来るが。」
「その使い勝手の悪い魔法剣が、長時間使用できる魔道具があると言ったら、どうする?」
隊長は、そんな魔道具が存在するかのように語る。
「そんな便利な魔道具があるのなら、開発者の言い値で購入してもいいぜ。」
冒険者たちは、笑いながら話す。魔法剣を長時間使用できるようにした魔道具を、誰も開発成功したなどと言う話は、これまで一度たりとも聞いたことはなかったからだ。
隊長は、薄ら笑いを堪えながら、話を進めていく。
「実は先日、ここにいる今宮光莉君の協力の下、『魔法剣の柄と籠手』と言う魔道具が完成した。この魔道具は、その名の通り、魔法剣を長時間使用できるようにした魔道具だ。さらに言えば、発動時の魔力が、通常の詠唱での発動時に比べて、1/100以下だ。
ちなみに光莉君は、先日テラテクスを1人で倒した強者だ。この魔道具は、彼女の言い値で、金貨1500枚で売ってくれるそうだ。私はすでに、この魔道具を彼女から購入済みだ。」
実際は、開発者特権で、光莉から無償で贈られたモノだが、ここは言わなくてもいいだろう。
隊長は、魔道具『魔法剣の柄と籠手』を手に取る。今は只の鋼の剣の状態だが、隊長が、剣先を外して魔力を流し込み魔法剣を発動させた。隊長の魔力に反応して、柄の先から緑色の刀身に光る魔法剣が姿を現す。
「騎士団も、冒険者諸君も、この魔道具が欲しいというなら、金貨1500枚をもって、光莉君のところに行きなさい。」
隊長の一言で、ヒカリの元に殺到するメンバー。今回のテラテクス討伐以外でも、この魔道具があれば、これから先の討伐依頼も楽になる。さらに普段は、柄の先に鋼の剣先を付けておけば、只の鋼の剣に見えるので、盗難対策としても重宝する。
討伐メンバー全員が、魔道具を購入して手元に渡ると、制作者である光莉は、皆の前で実演しながら魔道具の使用方法を伝えていく。光莉が手にしているのは、自分用に試作した特注品だ。
「まずこの魔道具ですが本体である『柄』と、魔力を効率よく流す『籠手』の別れています。地かと籠手には、それぞれ魔法陣が刻んであり、魔法陣によって、魔法剣が発動する仕組みになっています。魔力を効率よく流すことが出来れば、私のように『籠手』をする必要はありません。」
光莉は、素手で柄を握り魔法剣を作り出していた。
「では、早速魔法剣を発動させてみましょう。手元にある魔道具は柄だけの状態ですが、普段は、偽装のために、柄の先には剣先が嵌っています。剣先は、柄との形が合えば、どんな物を嵌めていても構いません。
まずは、剣先を取り外します。剣先を取り外すことが、発動の第1段階となります。剣を鞘に入れた状態で柄を握り、軽く魔力を籠手に込めて、『開錠』と唱えます。面倒くさいですが、こうする事によって、剣先がなくなることを防ぐ効果があります。鞘には、特殊な魔方陣が刻まれており、剣先を鞘の中に固定するようになっています。
戦闘が終了したら、剣を鞘に入れて、『施錠』と唱えます。剣先を変更する時は、鞘から出した状態で唱えます。」
皆が、剣先を付けたり外したりするのを、暫く見守った光莉が、頃合いを見て次に進めた。
「それでは、次に行きましょう。柄だけの状態で剣を構えます。構え方は、各々の自己流で結構です。構えたら、剣先の形をイメージしながら、魔力を込めて発動キーを唱えます。
『|具現化、魔法剣(リアライズ、マジックブレード)』
これで、イメージ通りの形状をした剣を具現化します。」
光莉の後に続いて、発動キーを唱えてた。すると、それぞれの柄から、属性の色をした剣先が現れた。皆、イメージ通りの剣が出現しているようだ。それぞれが上下左右に剣をふるって、感触を確かめている。光莉は、微笑ましくそれらを観賞しながら、次に進む。
「この『魔法剣』は、術者が思い描く通りの形状に変化します。長さなども自由に変えれます。」
光莉は、剣を長くしたり、形状を鞭のようにしたりしてみた。
「戦闘が終わったら、流し込んでいる魔力を断ち切ります。魔法剣が発動している間は、周囲から断続的に魔力を吸い上げています。方法は、各自で考えてください。術者が使用する魔力は、最初の発動時と、終了時に放出する魔力のみです。」
光莉の説明が終わると、体長が、明日以降の行動を話した。
「日の出前、町の南門の外に集合してください。それまでは各自、修練に励むよう、解散。」
その日、ケルンの騎士団の屯所では、魔法剣を手にした者たちの修練が、日が沈むまで行われた。
話の矛盾点を修正しつつ、加筆しています。
話の内容を、大幅に改稿しました。




