第22話 指名依頼①
光莉が狩ったテラテクスは、頭と胴体が別れている以外、ほぼ無傷な状態だった。鱗や骨を材料にするため、とてもいい値段で売ることが出来た。通常の冒険者ならば、この巨体を運ぶことが出来ないため、たとえ倒せても、部分的に持ち帰るだけだったので、テラテクスの素材は、高額で取引されていた。ズタズタに切り裂かれた内臓や筋肉は、もともと食用としての流通はなく、どちらかといえば、騎獣向けの餌として安く買いたたかれた。光莉にしてみれば、どうでもいいことだったが…。
テラテクスの出没で、ケルンからセイルン迄の街道が封鎖された翌日、光莉たちは、本拠地のあるカランへと戻る事が出来ずにケルンにたち往生していた。セイルンまで出れれば何とかなるが、セイルンまで抜ける街道が通行止めになっている現状では仕方がなかった。
光莉は、とりあえずケルン周辺で何かいい依頼はないかとギルドの掲示板を物色していた。掲示板には、昨日今日で、既にテラテクス討伐の依頼が出されている。その他の依頼を見てみると、この先の国境の町ケロット目での物資移送を受け持つ商隊の護衛依頼が多い。光莉はその中の一枚を掲示板から抜き取ると、昨晩対応してくれた受付嬢のもとに行く。その際、受付嬢から、光莉宛に手紙を渡されていた。その際、受付嬢からは、
「おはようございます、光莉さん。まずは、この手紙を受け取ってください。手紙の内容は、当ギルドと、ケル寺領様、セイルン領主様からの共同依頼となります。この手紙について知っている者は、ギルド内では、私とギルド長だけです。内容は、手紙を読んで確認してください。もし依頼を受けられるようなら、手紙を私に返してください。それを以て依頼の受理といたします。
後、こちらの依頼ですが、こちらについては、関係なく受けられますか。」
光莉は、手紙を受け取ると、持ってきた依頼書について話す。
「この手紙については、何処か静かな場所で読ませてもらいます。この依頼については、私以外のパーティメンバーが受ける事になると思います。私以外の仲間でも十分な仕事が出来るでしょう。」
「そうですね。光莉さんのパーティは、全員Bランク以上ですからね。それでは、手紙を読まれるのでしたら、そこの相談室をお使いください。」
そういうと、受付嬢は、光莉に相談室の鍵を手渡した。光莉は、ありがたく鍵を受け取ると、相談室の中に入っていった。相談室の中のソファーに腰を下ろすと、光莉は手紙を開いて、内容を熟読していく。
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指名依頼書
依頼対象 今宮光莉様
依頼主 ケルン領主 ミステリク=カスタイル
セイルン領主 マリス=ギルガルド
ケルンギルドギルド長 コミエル=スレイマン
依頼内容
テラテクスの群れの討伐
テラテクスは、群れで生活している個体のため、1匹見つかると、10匹前後の群れがいることが確認されています。我々ケルン及びセイルン騎士団の中で、討伐ランクAの魔物に対抗できる人員は少なく、テラテクスの殲滅は状況的に無理があります。そこで、テラテクスを単独で倒された貴殿のお力をお借りしたいと思い、指名依頼をいたしました。
成功報酬 テラテクス1匹につき、金貨20枚
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光莉は、手紙を読んで考えた。報酬として、1匹倒すごとに金貨20枚は破格の値段だろう。昨日倒したテラテクスは、金貨10枚だったから倍の値段だ。それだけ掃討作戦を急いでいるのだろう。光莉は、指名依頼を受ける事を了承した後、受付嬢とともにギルド長室の扉をくぐった。
「今宮光莉様、今回の指名依頼を受けてくださリ、誠にありがとうございます。」
「堅苦しい挨拶は抜きにして、本題を話してください。お互い、そんなに暇ではないでしょう?」
優雅に出された紅茶を飲みながら、光莉は、話を進めた。
「そうですね、…、では、早速本題である『テラテクス討伐』についた話を進めたいと思います。現在進行形の話ですが、昨日、光莉さんがテラテクスを当ギルドに持ち込んだ後、私は、すぐに領主のもとに行き、今後の事を話し合ってきました。
その一環として、今朝から行っている街道の封鎖があります。手紙に書いた通り、テラテクスは、群れで生活する習慣があります。ケルンの町としても、生命線である街道の封鎖は避けたいところでしたが、街道を行き来する商隊や冒険者たちの安全を考えて、封鎖する事に致しました。」
ギルド長の視線に、光莉は、肯定の意味で頷いた。
光莉が所有する図書館には、テラテクスで使用されている、または、過去に使用されていた魔法のすべてが記載されている『魔術大全』の他にも、生息する魔獣や間ののがすべて記載されている『魔獣・魔物大全』という本もあった。光莉は、暇な時間にこの本を読んでおり、ある程度の魔獣・魔物の知識を頭に入れていた。つまり、初見の魔物でも、魔物からの攻撃方法や、弱点なんかも知っており、それにいあった対抗策も持っていた。
ヒカリの頷きに、ギルド長も頷き、話を続けていく。
「今朝早く、ここの騎士団の偵察部隊が、光莉さんがテラテクスと遭遇した場所を中心に探索を行っております。無論、セイルンのほうにも、ケルン、セイルン両領主の連名で警告がされており、情報も共有しております。光莉さんにも、もちろんすべての情報をお渡しします。テラテクスへの掃討作戦は、明日以降を予定しておりますが、偵察状況によっては、開始時期が前後します。」
光莉とギルド長が話し合いをしている最中でも、ギルド長の元には、最新の情報が記された報告書が届いている。ギルド長が報告書を一通り眺めた後、光莉に報告書がそのまま手渡された。光莉も、報告書を読んで情報を頭の中に入れていった。
「光莉さんも、こういう事には慣れている感じですね。」
「まあ、ぶっちゃけて言いますと、テラフォーリアに来るまでは、私の実家での仕事は、『情報を管理』することでしたから。こういう事は、片手間でやらないと、飛び交う情報を整理できません。」
「ちなみに、何処のご出身ですか。」
「どこの空間にあるのかは知らないのですが、銀河系にある太陽系第3惑星の地球を言う星の出身です。まあ、この名称は、地球にいた誰かが勝手につけた名称ですが…、他の星や空間では、どのように呼称されているのか、ここに来てからは、興味の対象の一つですね。暇が出来たら調べてみようと思っています。
話が逸れましたが、私、いや、私たち『パーティ鷺宮』のメンバーは、地球の中にある国家の中の日本という国の出身です。私の実家は、日本のある地方を治めていた領主の家柄です。」
「ほう、日本ですか。懐かしい名前を聴きました。『今宮家』といえば、徳川様の懐刀だった大名ですね。御当主の影秋様は、ご健勝ですか。
光莉は、疑問に思った。現当主である光莉の父は、そんな名前ではない。確か先祖の中に、そんな名前があったのを思い出してはいたが、それに、『徳川様』と呼んだという事は、目の前に座っている男性は、江戸時代からここに飛ばされた人なのだ。光莉が、思考の中にいるのを見たギルド長は、申し訳なさそうに話をした。
「あっ!失礼。こう見えて私も、その日本の出身なんですよ。たぶん、生きていた時代は違うと思いますが。」
「ごめんなさい、この話は、あとでゆっくりと時間を取りましょうか。それより、テラテクスについてです。」
その後、テラテクスの討伐について、最新の情報を加えながら話し合っていく。途中、領主側からの代表も加わり、明日の朝日の出前に、討伐に出発することになり、光莉は、ギルドを後にした。護衛依頼のほうは、多佳子に一任した。
話の矛盾点を修正しつつ、加筆しています。




