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亡国の姫と成り上がり王  作者: 灰色のアルタ
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王女の嘆き


 「なるほど………これで 納得がいった」ずっと 黙り込んでいた 男が、呟いた。

一同は、驚いたように 彼に視線を向ける。

「カイウス?!それは、どういう意味だ?」

エミリオは、不思議そうに 冷酷な目をした 男に問う。

「いくら 力で押しつけていたにしても………あそこまで 短期間にギオーレの民が逃げ出すとは思えない。

姫………貴女は、戦況が悪化すると同時に お触れを出したのでは?

命が欲しければ 即座に国を出るよう」

「まさか………巻き込まれないように?

確かに 城に残っているのも、老い先短い連中ばかりで………若い連中は、残っていないようだが。

まさか 王女が、事前に逃がしていただなんてな。

あの(・・)侵略王の娘の割には、相手を思いやる気持ちがあるというわけか」

エミリオは、呆気にとられていた。

リリアンは、プルトン王の言葉に そっぽ向いてしまう。

けれど カイウスは、どこか 厳しい顔をしていた。

「それが、ギオーレの王族でありながら 民に慕われていた所以(ゆえん)ということか。

だが そういう気持ちがあったのならば ギオーレに苦しめられていた 民を助けるべきだったのではないのか?」

カイウスの嫌味に リリアンは、肩を震わせている。

その姿は、まるで 先ほどまで見せていた エミリオとのやり取りが嘘のようだった。

まるで 何かに怯えているように見える。

「あなた方 ギオーレの王族は、自分達の利益になることならば 民を傷つけることなど 気にも留めなかった。

だから 重税を簡単に強い………貴重な働き手を兵役に取り上げていった。

彼らの生活のことなど 何とも思っていなかったからでしょう?

民が苦しめられている間 あなた達 ギオーレの王国は、贅沢三昧していた」

「カイの奴………そんなにまで キレてんだ?」

女騎士は、呆れた顔をしている。

「仕方がないんじゃないんスか?

カイウスさんが、俺達の中じゃ………一番 ギオーレを憎んでいるわけだし。

ご両親を殺され 妹さんは、殺されなかったものの 酷い暴行を受けて 精神的ショックから 未だに立ち直っていないそうなんスから。

それに 最愛の恋人をギオーレの王子に 酷い目に遭わされた上 殺されたんスもんね」

若い棋士は、目を細めて 遠くを見つめている。

「カイウス………お前の怒りも最もだ。

だが 城に入る前にも 言っただろう?

自分を見失うな って。

今のお前をルシンダが見れば 呆れられてしまうぞ?」エミリオは、溜息をつきながら言う。

その言葉を受けて カイウスは、目を伏せる。

「お前に諭されるなんて 屈辱的だ」

「ああ………だろうな?

俺に説教することはあっても されることなんか ほとんどありえないんだし」エミリオは、自嘲気味に言う。

2人のやり取りを見て リリアンは、思わず 苦笑してしまった。

なぜ 自然に 笑ってしまったのか わからない。

「驚きました………そのように 王に対して 強気でいられるだなんて。

確かに あたくしは、あなた方からしてみれば 弱い人間だった。

父に意見することもできず 苦しんでいる人々がいたのに 何もできませんでした。

何か反抗することで 自分の立場や母の存在が、脅かされるんじゃないかと………本当に 卑怯者だと思います」

リリアンは、悲しげにベッドに視線を向けた。

「この方は、ギオーレのミリアム妃ですね?聞いた話によれば 数年前から お体を壊しているようですが」カイウスは、静かに言う。

「母は、心を病んでいるのです………あたくしが 物心ついた頃から。

いつも 悲しみに囚われていて。

誰も瞳に映していないのです。

父のことも、弟達のことも………あたくしのことも、見ようとはして下さらなかった。

お母様のお心を自分に向けたい一心で 父は、侵略を続け 領地を広げるようになったのです」リリアンは、大粒の涙を流しながら言う。

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