表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百円玉の記憶  作者: 仙道 神明


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/11

第7話「願いの中で揺れる」

あの家族はどうなったのだろう。

父も、母も、長男も、まだ幼い妹も。あの日、あの家から逃げられたのか。


ぼくには知る術がない。瓦礫の下で長い時間を眠っていたぼくは、今は神社の賽銭箱の中にいる。


硬貨たちが落ちるたびに、木の箱が低く響き、周りからは柏手の音や祈りの声が聞こえてくる。


「どうか今年こそ、いいことがありますように」

「家族が健康でありますように」

「受験に受かりますように」


人の願いの数だけ、ぼくたちは積み重なっていく。

けれどぼくは、投げ入れられるたびに胸の奥がざわつく。


ある晩のことだった。


境内が静まり返り、人影もまばらになった頃、賽銭箱の中へ伸びてきた手があった。

ざらついた指先が、ぼくたちをかき集める。息をひそめるような動き、


――それは賽銭泥棒だった。


「すまん、神さま……もうどうにもならんのや」


そう小さく呟いた声が、耳の奥に残った。

その人のポケットの中でごちゃりと揺らされ、やがて深夜のスーパーへ。


割引シールが貼られた弁当を手に取り、レジでぼくは放り出される。


「198円になります」


機械的な声と共に、ぼくはまた別の誰かの手に渡った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ