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第6話「家族の宝物」
1995年、元日。
こたつの上に広げられた小銭。家族は小さな銀色の円を取り出しては、指で年号をなぞっていた。
「お、見つけたぞ。昭和四十三年、俺の生まれた年だ」
父が誇らしげに掲げると、母も負けじとぼくを探し出す。
「私は昭和四十五年。ちゃんとあるわ」
やがて長男が声をあげた。
「平成ニ年!ぼくの年だ!」
笑顔の輪が広がるなか、赤ん坊を抱いた母がぽつりと言った。
「この子は平成六年、ちゃんと見つけてね」
長男は真剣な表情で、
「見つけた!皆んなの揃ったから大事にしよう」
彼は机の引き出しを開け、父、母、自分、そして妹の年号を並べた小銭たちを、ひとつの封筒にそっと収めた。
そのわずか半月後、1月17日、未明。
大地がうなりをあげて揺れ、家がきしみ、崩れ落ちた。叫び声、瓦礫の音、割れるガラス。
ぼくは机ごと床に叩きつけられ、やがて押し寄せた瓦礫の重みに飲み込まれていった。
暗闇の中で、息をひそめるように横たわりながら、最後に見たのは、長男の「大事にしよう」という声の残響だけだった。




