第3話「新たな旅へ」
街は、ぼくが初めて見たデパートの頃よりずっと明るく、騒がしくなっていた。
アーケードの並びには、新しい遊び場「ゲームセンター」ができ、入口からは甲高い電子音と軽快なBGMがあふれ出している。
その日、ぼくはゲームセンターの両替機にいた。
ある学生は両替機に向かい、お札とぼくを交換し、すぐ隣のテーブル型ゲーム台へと投入した。
ピコッ、ピコピコピコ……
画面には白い光の点が並び、ゆっくりと迫ってくる。「インベーダーゲーム」というらしい。
彼は夢中になってボタンを押し、レバーを動かす。ぼくはゲーム台の中を転がり、翌日には再び両替機へ息をひそめた。
数日後、別の客が両替をし、再びインベーダーへ投入される――。
そうして僕は何度も、両替機 → ゲーム台 → 両替機 → ゲーム台という短い旅を繰り返していった。
ピコピコと鳴る音は、もう日常のBGM。
外の世界ではオイルショックがどうだ、カラーテレビがどうだと騒いでいるらしいが、僕の毎日は、この光るテーブルの上と下だけで完結していた。
そんなある日、ぼくはいつものようにゲーム台の上に積まれていた。
ゲームを終えた少年は、ぼくをポケットに入れ、店を後にした。外はまだ明るく、駅前には学生服や作業着の人々が行き交っている。
少年は改札前の自販機に立ち寄り、瓶入りのジュースを買った。
チャリン、とぼくは内部の金属板を転がり落ち、自販機の腹の中へと収まった。
ああ、また暗いところだ……。
外の景色も、賑やかな音も、もう届かない。
ただ冷たい鉄と硬貨たちの体温だけが、ぼくを包んでいる。
ここで次に呼び出される日まで、じっと待つしかないのか。




