恋と罪
こちらに訪問していただき誠にありがとうございます。
ストーリーとしては短編の(予期せぬ恋のはじまり)の続きとなっております。
ですが単独でももちろん問題なく読めますのでご安心ください。
そして読者様が不快になる、もしくは苦手な要素が含まれている可能性がありますので何でもOKという場合のみ、読み進まれることを推奨させていただきます。
「サクマさん、これ、いつものあの方からですよ~!」
後輩同僚のチカちゃんはそう言って私の目の前に箱を差し出した。
「もしかして貿易部のオオシロさんから?これはチョコレートだね?」
「そうみたいですね?なんかヨーロッパ出張だったらしいです」
チカちゃんがあの方と称する貿易部に所属しているオオシロさんはこうやってよくお土産を持ってきてくれる。どういうわけか私宛に‥‥‥
「じゃあ給湯室の総務部の棚に置いておくから皆でいただきましょう」
私はとある会社に勤める三年目のOLだ。
配属は総務部で主な仕事内容としては受付やデータ入力である。
今ちょうど受付の交代を済ませ、部署内に戻ってきたところで声を掛けられた。
そして戻ってくる途中で会った営業部の人から予約していた会議室の確認を依頼されていたのですぐさまお土産のチョコレートを持って給湯室へと向かった。
箱を棚に仕舞い、踵を返して今度は会議室へと向かう。
表示プレートを使用中に切り替え中に入るとざっと中を見回しおかしなところがないかを確認する。そしてテーブルや椅子等を定位置に戻し、ごみが落ちていないかなど確認しながら扉の方へと戻って行く。
よし。特に何も問題は無さそうである。私はそのまま外に出て職場へと足を向けると先ほど依頼してきた営業部の人間がその先で私の顔を見てなぜか大げさにほっとしている様子を目にしてしまう。これはきっとアレの依頼に違いないと確信しながらどんどんその彼に近づいていった。
「あ~よかったここにいた!サクマさん、本当に申し訳ないが会議室にお茶をお願いできるかな?先方もすぐお見えになるから五人分、よろしく頼むよ!」
彼はそう言い慌ただしくそのまま私の横を通り過ぎ会議室へと足早に向かっていった。私はやっぱりアレの依頼だったかと内心うんざりしながらだが決してそんな素振りを見せずに給湯室の中へと入っていった。
「あら?サクちゃんも今から休憩タイム?」
中に入ると先輩同僚のアヤさんがキッチンベンチに寄り掛かるようにして立ったままコーヒーを飲んでいた。
「いえ、残念ながらアレの依頼で来たんです」
「うわ~‥‥もしかして営業?」
「当たりです!今回は五人分」
実はわが社では女性にお茶くみをさせるのはいろいろな意味で効率も悪いのでそういう制度というか習慣をなくそうと各部署や給湯室にコーヒーメーカーが設置されたという経緯がある。それでもコーヒーではなく温かいお茶をと望む人も多く、その場合は自販機または各自で用意するということになっているのだが、来客用となるとやはり女性にお願いした方が受けがよいという訳の分からぬ理由で依頼されることが止まないという状況にあるのだ。
「いやでもさ、営業の連中って口では申し訳ないとかって言うんだけど、態度は当たり前って感じでまったく自分たちでなんとかしようって気が見えないんだよね?私実は一度断ったことがあるんだけどさ、その時なんてあからさまにものすごくイヤ~な顔されて舌打ちまでされたよ。でもそれ以来ほとんどお願いされなくなったからまあいいけど」
そうなのだ。私の周りでは仕事やその時の都合を理由に断る人も多い。よって断らない私のような気の弱い人間が狙い撃ちにされている‥‥と、思っている。私も毎回断ろうとは思うのだが、それさえも面倒くさくなってしまうのだ。
「私も一度ビシッと言ってみようかな?なんだか狙い撃ちにされているような気もするし‥‥」
「サクちゃんはやさしいからねえ‥‥でもまああの貿易部の人みたいに感謝の貢ぎ物とかあればまだねえ?」
「なんですかそれ?あれはいつもお世話になっている総務部の皆さんでどうぞって渡されているんです。マジで貢ぎ物とかやめてくださいよ~」
「え~だってうちらはサクちゃんに渡してくださいって伝言されるよ?毎回言葉尻にハートマーク付きで」
「‥‥‥‥‥」
ダメだ。これは完全にいじられている。
私は準備ができたお茶をトレーの上に乗せ、アヤさんに行ってきますと告げ給湯室を後にした。
その後職場に戻ってデータ入力を行い一段落した後、チョコレートの存在を思い出した私は給湯室へ。マイカップにコーヒーを注ぎ、棚から箱を取り出すとテーブルの上にそっと置いた。そのパッケージを見て思わずニヤケてしまったその顔のまま、貝の形をした美しくもおいしいチョコレートを一つ手に取り口の中へ‥‥
このチョコレートはとても有名でヨーロッパからのお土産として誰かから頂くことも多いものだ。私はチョコレートラバーであり、本当に毎日口にしているが、さすがに外国のチョコレートはなかなか口にできるものではない。よって私は今、大変至福な時を過ごしているということになるのであるが、これが会社などではなく、自宅であったならもっと最高であったのにとその無機質すぎる空間を流し見た。
そしてあともう一つ、どれにしようか悩んでいた時、携帯にメールの通知が入った。なんだろう?とひとまずチョコレートの箱に蓋をしてそのメールの確認をすることにした。
「⁉‥‥!!!!!」
ついにきた。待ち望んでいたメールである。
テンション爆上がりの私はその勢いのまま職場へと戻っていき、先輩同僚のアヤさんに「姉さん、事件です!」と耳元で告げると今度は目でちょっと来てくださいと訴え入ってきたばかりの職場を出て備品倉庫へと足を向けた。
私の後を追ってきたアヤさんが中に入るのを確認すると私は先ほどのメールを差し出して見せた。
「ん⁉メール?‥‥てか、サクちゃん?姉さん事件ですってマサノブじゃないんだからね?」
アヤさんはそう突っ込みを入れながらも器用にメールを読んでいる。
「お~ついにきたね?サクちゃんの王子からのメール。でもこれだと私たちやあちらの他メンも含めて総勢十名くらいの合コンの誘いみたくなってるけどいいのかな?まさかいざとなったら怖気づいて作戦変更してきたとか?」
「だから違いますって!彼は最初から皆でって言ってましたよ。私だってもちろんそのつもりでいましたからアヤさんも絶対行きましょうね?」
この私が待っていたメールの相手というのが今から二週間ほど前にスキー場で出会って連絡先の交換をした男性で、偶然同じ駅を挟んであっちとこっちの位置関係にある会社勤めだったことから皆で飲みに行こうという誘いがあったのだ。
スキー場で出会ったと聞けば誰もが思い浮かべるであろうスキー場あるある。たとえば転倒していたのを偶然通りかかって助け起こされたとか、山小屋で偶然相席になって仲良くなったとか、偶然リフトで隣になって話しかけられたとか、そんなある意味ロマンティックな出会いではまったくなかったのであるが、のっぴきならない理由で場違いな上級者コースを滑る羽目になった私が上級者らの邪魔をした挙句にその彼と衝突して転倒してしまったことに端を発している。
紳士な彼はもちろん私を素早く助け起こし、最後まで気遣いやさしく接してくれた。それだけでも十分に女性を惹きつけてしまう魅力あふれる男性であることが察せられると思うが、なんと彼は容姿までもが私好みど真ん中のイケメンだったのである。
とまあいろいろあって彼からのお誘いをゲットし、それが社交辞令ではないことを祈りながらこの二週間を過ごしていた。実はアヤさんには最初からバレていたようなのだが、私は彼に対する興味をずっと隠していた。だが私自身、その興味が恋であることもわかっていたし、恐らく隠したところでわかる人にはわかってしまうこの厄介な感情こそが恋なのだろうと思っている。
その後一緒にスキーに行った同僚男性たちに事情を話し、飲みの誘いの件を伝えた。だが彼らはまさにその飲み会予定の日の夜からスキーに行く予定があるということで、残念ながらパスということになってしまった。まあ彼らは冬の期間はほぼ毎週このようなルーティーンとなっているので仕方がない。
一旦、その旨を連絡し、この間のスキーメンバーでいうと今のところは私とアヤさんしかいけないことを伝えた。するとすぐに他に誘いたい人がいれば何人か増えてもかまわないが、二人だけでも問題はないと返信があった。そしてその後、あちらもスキーメンバー全員の予定が合わなかったため、女性一人と彼を含む男性三人の四人での参加になることが伝えられた。
「アヤさん、ちょうど女性三人、男性三人の六人で席も確保しやすいと思うので、うちの会社からは私とアヤさんだけになりますけどそれでもよいですか?」
「もちろんいいわよ。ちなみに例のその会社にいる私の同級生に事前にちょっと探りを入れてみたんだけど、彼らのことは知っていたわ。でも部署が違うから話したことはないみたいだったけどね」
これもすごい偶然なのだが、彼の会社にアヤさんの高校時代の同級生(男)もいて、以前から駅でよく会いたまに飲みに行っていたそうである。
彼とのメールのやり取りで決まった来週金曜の仕事終わりの飲み会。
私は決めていたお気に入りの洋服を着ていくつもりであったが、そうするとどうしても気になってしまうことがあった。だから悩んだ末にパンツスタイルに変更し、週末休みでそのための新しいパンツを購入した。
そんな話をアヤさんとしていた月曜の朝。
バタバタと駆けてくる足音が響いてきたかと思うと勢いよく扉が開かれチカちゃんが入ってきた。
「アヤさん!サクマさん!私殺されてしまうかも⁉」
気持ちの良い朝からそんな物騒なセリフを吐きながら入室してきた後輩同僚は冗談という感じでもなさそうで、割とマジな顔をしているのが気になった。
「ちょっとチカちゃん?顔がマジだけどそれを聞くのも怖いから冗談ということでいいわよね?」
「わたし見ちゃったんです!不倫現場をこの目で見てしまいました!」
「‥‥‥‥‥」
私とアヤさんは顔を見合わせこの子は一体何を言い出すのだと心の会話を成立させていた。
「えっとチカちゃん?その不倫現場って一体誰の?それにどうして不倫だと断言できるのかしら?」
「え、営業のオカモトさんとミシマさんがホテルに入っていくのを目撃したんです!ミシマさんは独身だと思いますけどオカモトさんは既婚者です!だから不倫になりますよね?」
確かに営業部のオカモトさんの奥さんは寿退社をされているが彼の同期だったのでそのことを知っている人は多い。そしてミシマさんは確か私の一つ上で、なかなか綺麗な人であるがとても大人しいイメージがある。
「でもホテルって言っても中にあるレストランとかカフェで食事くらいはするんじゃない?」
「そっちのホテルじゃなくて!ラブの方のホテルです!腕を絡めてものすごく親密そうにして慣れた感じで入っていったんですからね?」
「‥‥‥でもさ、それでどうして殺される!ってなるわけ?もう何にも見なかったことにして忘れちゃえばいいじゃない?まさか脅迫とかしようなんて考えてるわけじゃないでしょ?」
「当然です!脅迫なんてするわけないじゃないですか?そうじゃなくて、そのホテルに入る前に一度ばったり会ってしまっているんです!先週金曜に都内で友人との待ち合わせの場所に立っていたら、こちらに向かってその二人が歩いてきたんです。最初あちらは私にまったく気が付かなくて二人の世界。もうベッタリイチャイチャしていました。そして段々近づいてきてようやく私に気が付いたみたいで、二人とも漫画みたいにすごくわかりやすく驚いた顔になってそれからすぐに今度はお手本のような演技が始まったんです。引きつり気味なニッコニコ顔で「いや~こんなところで会うなんてすごい偶然だね?俺たちは今日都内まわりで直帰予定なんだけど、腹減ったからなんか食ってから帰ろうってちょうど店を探していたところなんだ」ってオカモトさんが。ミシマさんもそれに同調してものすごく頷いていました」
どうも彼らはチカちゃんに見られたことを理解しているように思えたが、それでもわずかな希望にかけ、勘違いだと思わせてただの同僚同士の仕事帰りの食事ということにしたかったようである。その後チカちゃんたちと別れ、そのまま進行方向の道をずっと歩いていったらしいのだが、チカちゃんたちの飲み会の場所もそこから少し離れた場所にあるビルの最上階の窓際という夜景と下の道を行き交う人々がよく見える席だったそうだ。そして道を挟んで向こう側にある脇道のすぐのところにあるホテルに仲良く入っていく二人の姿をまたしても偶然見てしまったということだった。
「そういうことなら大丈夫じゃない?だってそのホテルのことはバレてないと思ってるはずだし、イチャイチャしていたのも勘違いってことにしてあげればいいだけでしょ?」
「そうでしょうか?まあそうですよね?でもどんな顔で彼らに接すればよいのか‥‥何も知らない顔してしれ~っとしているだけでいいのはわかってますけど、私割と顔に出るタイプで演技はメチャ苦手です‥‥」
わかる‥‥私もどちらかというとそう言う場合に限っては隠せなさそうだ。なんというか居た堪れない感じが出てしまう気がする。でもアヤさんはそれでも何も知らないフリを通せとアドバイスしていた。
「ていうか、今落ち着いてよく考えてみれば私興奮しすぎですよね?不倫ってどこかドラマとか小説の中だけの話で自分とは無縁な気がしていたので、現実に身近な人たちのソレを目にしてしまってパニック状態になったんだと思います‥‥」
「まあそうなるよね?私だって今のところは身近にそういう人はいないし、たとえいたとしてもまあ目撃することなんてないでしょうしね?」
確かに私の周囲でも不倫をしている人はいないと思う。多分‥‥
もし誰かいたとしてもわざわざ吹聴する人なんていないと思うし、大体はコソコソとしていて周囲にはバレないようにしているはずだ。
その後チカちゃんは特に彼らからなんのアクションもなく、至って平穏に業務をこなせているという。私も金曜の飲み会が楽しみ過ぎてすっかりそのことを忘れかけていた。そしてアヤさんに誘われ、海沿いに新しくオープンしたという噂のレストランにご飯を食べに行くことになった。
「アヤさんの運転、なんか久しぶりな気がします」
「そうだね~。スキーの時は男性陣たちが交代で運転してくれるからおまかせだし、普段は電車通勤だからね~」
会社は大体電車とバスを利用して通勤するように定められているが、事前予約により会社専用駐車場の利用も認められている。したがってアヤさんのようにたまに車通勤をする人たちもいるのだ。私は電車とバスの方が便利なのでまだ車通勤の経験はない。今日は終業後に行く目当ての場所が場所だけに、アヤさんはしっかり前もって計画しており車で通勤していた。
「サクちゃん、今日は急に誘ったのに来てくれて本当にありがとう!もう馬鹿同期が風邪なんてひいてこじらせるもんだからキャンセルしようかとも思ったんだけど、今度いつ予約とれるかわかんないしさ、せっかく駐車場の予約入れたのにもったいないでしょ?だからサクちゃんが一緒に行ってくれるってなってマジで神だ~って本気で感謝したわ」
「そんな大げさですよ?私はアヤさんに誘っていただけてすごくラッキーだって思ってます。私の同期の間でも噂されているんですよ、あのレストラン。だからメッチャ楽しみで明日は絶対同期のみんなに自慢します!」
しばらく走ると海沿いの道路につながる手前の信号で停車した。すでに潮の香りが鼻をくすぐる。アヤさんもそれと真っ暗な海を目の前にテンションがあがると呟いた。
「ここみたいだね?」
それから五分ほど、あっという間にレストランに到着した。
駐車スペースに車を停め、私たちはウキウキと弾む足取りでエントランスへと向かった。中に入ると想像よりもシックな感じでシンプルなインテリアでコーディネートされていた。そしてスタッフ全員がホワイトとブルー、グリーンやブラウンを基調にした様々なデザインのアロハシャツを着ていて南国のイメージを印象づけていた。
私たちに気づいたスタッフがすぐに対応に当たり、予約されているテーブル席へと案内された。
「ハワイアンって聞いていたからもっと赤とか花柄とか派手な感じをイメージしていたのだけれど、明るさはちゃんとあるものの、落ち着いた感じでなかなかいいと思うけどサクちゃんはどう思う?」
「はい。私も同じです。この上にあるパイナップルの形のペンダントライトなんてとっても可愛らしくて欲しいと思っちゃいました」
スタッフの感じも良く、まだ何も口にしていないのにも関わらず、私たちはもうまた来たいねという話をしていた。そしてオーダーを済ませ、ノンアルコールカクテルで乾杯した。
「あれ?ねえ、サクちゃん?あっちのテーブル席に案内されている人たちって同じ会社の人じゃない?」
すると私の後方を見ていたアヤさんが突然そんなことを言い出した。
私は体を傾けその彼女の視線の先を追って見た。
「え⁉‥‥多分本社の人とうちの厚生課の人だと思いますけど‥‥‥」
私もアヤさんも急にとても気まずい雰囲気になってしまった。
別に私たちが何かやらかしたわけでもなく、先ほどまでは確かに浮かれ気分でとても盛り上がっていた。それなのに、どうしてそんな状況に陥ってしまったのかといえば、チカちゃん案件が発生したからである。
「ねえサクちゃん?今ってなんか不倫が流行ってるとかそういうことなの?」
「アヤさん、不倫に流行りとかはないような気がするんですが、この前のチカちゃんの目撃談といい、うちの会社内で何かが起こっている気はしちゃいますよね?」
あちらにいる二人は本社勤務の既婚男性とうちの所内にいる既婚女性でどう見てもちょっと仕事帰りに寄ってご飯という感じには見えない。しかもここはオープンしたばかりの人気店で、現在予約がなければ夜の時間帯には入れない。
「あの二人、どっちが予約したんだろう?まあ本社から車で来るってことはないだろうから、彼女が車で来て彼を乗せてきたんだろうね‥‥」
「そういえば私、今日、彼の入館受付けをしました。確か会議があるとかだったような‥‥だからまあ確かに仕事で来たのは間違いないとは思いますけど、それにしても車でこんなところまで二人っきりで同僚同士の会食という言い訳はさすがに苦しいですよね‥‥」
「だね?で、どうする?このままもうあっちを絶対見ないようにしてさっさと食べて何も見なかったことにしてしれ~っと帰る?」
「もちろんもうあっちは見ないようにはしますけど、さっさと食べるのは嫌です!いいじゃないですか、せっかく来たんですから私たちは私たちで楽しみましょうよ!あちらのことは無視ですよ、無視!」
アヤさんは笑いながら不幸中の幸いとでも言おうか、あの二人とは話す機会もなく、ほぼ面識がないといってもよい関係なので私さえ振り向かなければセーフの可能性大だと言った。確かに受付で顔を合わせているのも私の方が多いような気もするし、彼女に至っては私が担当している仕事上、顔を合わせて話す機会も多い。
「も~アヤさんが変なフラグを立てるからですよ?チカちゃんの話の時、今のところはとか言ってましたよね?」
「え~?私のせいなの?でも事実は小説よりも奇なりっていうけどホントそんな感じよね?だってドラマとか小説では絶対にコソコソして見つからないようにしているのが定番だけど、現実ではこうやって割と堂々として見つかるわけがないっていうものすごく安易な思考でいるっぽくない?」
言われてみれば確かにそのような気もしてしまう。
そして私はその時ふと、彼のことを思い浮かべていた。
なぜだろう‥‥‥今更のように彼の素性など一切何も知らず、一目ぼれ的に恋をした自分に不安を抱き始めてしまった。
恋をするということに善悪や正しい間違いなどということはないはずだ。
だが果たして罪になるということはあり得るのだろうか‥‥‥
私は答えを見つけ出せないまま、窓の外に広がる真っ黒な海を見つめた。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
続きの話を別の短編として執筆中です。
またお付き合いいただけますと幸いです。




