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第4話 初めての町へ

 初めての夜は、手に入れた布団セットのおかげで熟睡することができた。

 第一の人生では会社への泊まり込み、第二の人生では訓練や出陣での野宿とけっこうアレな生活を続けていたせいか、眠るのは比較的得意な方だ。


「今日はいよいよ町へ向かうぞ」


 外に出ようとすると、靴箱の上に昨日まではなかった小さな布袋が置いてあった。

 布袋は紐を引っ張ると口が絞れる形状で、簡易的なリュックサックになっているようだ。これを使えということだろうか?

 

 ――にしても昨日のパソコンといい、これどう考えてもあの女神――かは分からないけど神様からの援助だよな?

 人間の世界に直接手は出せないんじゃなかったのか?

 この【ポータブルハウス】内は特別なんだろうか……。

 助かるからいいけど。


 俺は身支度を整え、靴を履いて外に出た。今日もいい天気だ。

 ちなみに【ポータブルハウス】は、物理的にその場に設置されるわけではなく。

 出入りする際にドアだけが現れて異空間へ繋がるような、そういう感じだ。

 外に出てドアを閉めると、そのドアさえも跡形もなく消えた。

 坂を下り、道なりに進んでいると、途中で中年の女性と出くわす。


「こんにちは。見かけない顔だねえ」

「こんにちは。ええと……実は旅の途中なんです」

「旅? そんな小さな袋一つでかい?」


 この世界で、魔法や【アイテムボックス】はどういう位置づけなんだろう?

 この人の反応から察するに、少なくとも【アイテムボックス】はみんなが持ってるわけではなさそうだよな……。


「あまり物を持たない主義なんですよ。身軽な方が動きやすいですからね」

「あっはっは。若いねえ。町まではここから30分ほど歩けば着くはずだよ。そうそう、町にレスタって食堂があるんだけどね、安くておいしいからよかったら行ってみておくれ」

「ありがとうございます」


 その後も女性と少し話をして、俺は再び町を目指して歩いていく。

 町の周辺は農場になっており、人々が農作業をしていた。


「――つ、着いた!」


 門の先には、第二の人生で見た田舎町のような場所、つまり西洋風の小さな町が広がっていた。派手さはないが手入れが行き届いていて、立ち並ぶ石造りの家のあちこちに美しい花や植物が植えられている。


 ぐうううううううううう。


「――見て回る前に、まずは腹ごしらえだな。そういえば、さっきのおばさんがおいしい店があるって言ってたな。まずはそこに行ってみよう」


 ありがたいことに、文字の類は読めるようでほっとした。

 町は活気にあふれていて、家屋の一階が店になっているところも多い。

 店では、串焼きやパンなどさまざまなものが売られていた。


「――お、あったぞ。ここがレスタか」


 レスタは町の中心に近い、比較的目立つ位置にあった。

 まだ営業時間前なのか、店の前では店員だと思われる一人の少女が開店準備をしている。

 ふわふわの茶色い髪をうしろにまとめたその子は、くりっとした目が愛らしい可愛い系の顔をしていた。

 そしてなんと、犬っぽいふわふわの獣耳と尻尾が生えていた。

 犬には詳しくないため犬種は分からないが、特に尻尾はとにかくふわふわだ。


 ――獣人か。前の世界にはいなかったから、なんか新鮮だな。

 すげえ、本当にもふもふしてる……。


「こんにちは。ここの料理がおいしいって聞いて来たんですが、何時からですか?」

「いらっしゃいませ! すみません、うちは11時オープンなんです。でももうすぐなので入っちゃってください。どうぞ」


 獣人の少女はそう笑顔で扉を開け、中へ案内してくれた。優しい。

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