痛
親子丼より、カツ丼派です。
連載予定なので、楽しみにしていてください。
「今月分の金早く出せよ!」
「ごめんなさい!」
パリン
頭の中に瓶の破裂音がこだまする。
この痛みに耐えてどのくらいだろう。
騙されたのは、私のほうか。
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傘をさしうずくまっていたその日。
「なほちゃん、だよね?」
誰?
「震えてるじゃん、大丈夫?」
大丈夫?なんて言われたこと無かったから、思わず顔が強ばって、何も言えなかった。
「辛い思いをしてるんだね、わかるよ?」
、、、私の思いが、わかるの?
「、、、助けてください。」
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助けてはくれなかった。
当時受けていたいじめから解放されることはなく、助けてくれるはずだった彼に束縛されていた。
いや、違う。
彼はお金を出せばちゃんと助けてくれる。
私がお金を出さないのが悪いんだ。
でも、たくさんした。
親に言えないことだってした。
お金が足りない。
足りない足りない足りない足りない。
「、、、誰か」
私を殺して。
生きている意味なんかない。助けてくれようとしている人に御礼をささげられない私なんか。
だから、きっと私が悪い。
そうだ、誰もいないところで死んでしまおう。
お母さんだってお父さんだってきっと悲しんじゃうけど。
そんなの、もうとっくに考えてる。
ふらっと、立ち上がる。
スマホを手に持った。
ブーッ
振動する。
「カツ丼屋の、バイトかあ」
通知に表示されていたのは、行きつけのカツ丼屋の公式LINEで、バイト募集中のメッセージだった。
「最期に食べるか」
ふっと苦笑いをして、部屋から出ようとした。
その時。
「おい」
ドアの向こうから聞こえる、どす黒い声。
彼が来た。
また、お金を要求される。
暴力を、振るわれる。
暴力?
違う、私が悪い。
いっそのこと、彼に殺されても構わない。
がちゃり、とドアを開けた。
そこから、私の記憶は途切れている。