表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

7話 目一鬼

更新、再開します。

 お父さんが運転する車で『目一鬼まひとつおに』の巣窟と言える場所にやって来た。


 その目的は、霊力を増やすために必要な怪異の霊魂を集めることだ。

 ついでに人を食う怪異である『目一鬼』の駆除も行う。


「パパは晴矢せいやの邪魔にならないように少し離れるけど、危なくなったら助けるから安心して戦いなさい」

「わかった!」


 お父さんに俺はそう返事をして、『目一鬼』がどこにいるのか探すために周りを見渡したが、草木が邪魔をして、遠くまで見ることができなかった。


 こんなに見通しが悪いと、物音が聞こえなければ『目一鬼』に近づかれても気づかないかもしれない……。


 とはいえ、急に『目一鬼』が襲ってきても、百枚以上の護符を持ってきたので、数時間は無防備に攻撃をされ続けても大丈夫だ。


 そんなに心配することはないだろう。


「シル、『目一鬼』がどこにいるのかわかる?」


 草木で視界が悪いので、自分で『目一鬼』を探し出すのを諦め、『思業式神しぎょうしきがみ』の犬であるシルを頼ることにした。


 シルなら地面などに残った僅かな臭いをたどり、『目一鬼』の居場所を探すことができる。


「そっちにいるの?」


『目一鬼』がいる場所まで、シルが先導してくれるようだ。


 シルの後をついていくと、シルは少し遠くに見える木の上を向いて、こちらをちらっと見る。


 あそこに『目一鬼』がいるようだ。


 木の上に目を凝らしてみると、確かに『目一鬼』らしい姿が見えた。


 『目一鬼』がいる場所が少し遠く、見にくい。

 身体強化の応用で視覚を強化し、『目一鬼』を観察する。


 大きな一つ目が特徴的な鬼だった。

 頭には角が生えていて、その上には長い白髪が荒れていた。口には鋭い牙が生えており、刃のような爪も持っているので、戦うのが怖くなりそうだ。


 大量の護符と、お父さんが近くにいることを強く意識することで、その恐怖を拭い去る。


 身軽に動けるようにするため、大量の呪符と護符が入っているバックパックを地面に置いた。

 呪符と護符は腰に巻いたポーチと、衣服のポケットにもあるので問題ない。

 俺はポーチから、『霊力弾』の呪符を取り出して構えた。

 

「シル。あいつの注意を引きつけるために、あそこから回り込んで、後ろから『目一鬼』に目立つように近づいてくれ。『目一鬼』が後ろを向いた瞬間、俺が『霊力弾』を当てる」


 小声で指示を出した俺の言葉に、シルが頷いた。


 シルは足音を立てずに『目一鬼』の後ろに回り込んだ。

 そして、シルはわざと大きく足音を立てながら、吠えた。


 その大きな足音と鳴き声に反応した『目一鬼』が、俺に背中を向けた。


 その瞬間、俺は構えていた『霊力弾』の呪符を放った。


 一気に加速した『霊力弾』の呪符は、『目一鬼』の背に当たった。


 背中に大きなダメージを受けた『目一鬼』は、その勢いのまま地面に倒れた。


 そして、俺が続けて投げていた『霊魂封印』の呪符が『目一鬼』に触れ、『目一鬼』の霊魂を呪符に封じ込めた。


 それを確認したら、思わず安堵の溜息が漏れた。


 普段、戦っている悪霊と比べられないくらい緊張した。

 やっぱり、こういう有利な状況でしか戦いたくない。

 死ぬのが怖いからな。

 

 この調子で、俺はシルと一緒に『目一鬼』の霊魂を集めた。

 お父さんが周囲の警戒をしてくれたので、戦闘に集中できた。


 『目一鬼』の霊魂を十分に集められたが、俺に達成感を味わう余裕はなかった。

 身体強化を使わないと、動けないくらい疲れたので、早く家に帰りたかった。


「早く帰りたい!」

「そうか、疲れたか。晴矢せいやが頑張ってくれたおかげで、あと少し『目一鬼』をお父さんが減らしたら、帰ろうか。それまで休んでいてくれ」


 そう言って、お父さんは走り去っていく。


 お父さんが戦う姿が気になったので、シルの上に乗り、お父さんの後を追ってもらった。




 お父さんの後ろ姿が見えた。


 お父さんは『目一鬼』を見つけ、疾走しながら抜刀し、『目一鬼』を狙っていた。

 静かに周りを見回し、『目一鬼』が他にいないことを確認した。

 そして、お父さんは身体強化を用いて、一気に跳び出し、『目一鬼』に迫った。その足は地面を強く蹴り、力強く加速していた。

 お父さんは『目一鬼』に霊刀を振り下ろす。

 『目一鬼』は身をかわそうとしたが、刀はその動きに追従し、『目一鬼』を両断した。

 お父さんは『目一鬼』を倒した後、霊刀を鞘に收めた。


……刀を持って戦う姿は、格好いいなー。

 正直、そんな戦い方に憧れないかといったら、嘘になる。

 でも、怪異に近づくのは怖いし、危険だからなー。

 身の安全のためには、諦めるしかない。

 実際にやるとしても、護符を大量に身につけ、俺の仲間が見守っていて、俺より弱い怪異が一匹だけいる状況でないと、挑戦する気が起きない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ