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6話 怪異の数

 怪異の霊魂を吸収して、霊力を増やしたい。


 そのために、小学校にいる悪霊の霊魂を呪符に封印し、怪異の霊魂を溜めている。


 そうして溜めた霊魂を毎日一つずつ吸収しているので、少し俺の霊力が増えた。


 霊魂を吸収すると、食事をして満腹になるような感覚がするので、それを基準にして一日に吸収する霊魂の量を決めている。


 限界以上に霊魂を吸収すると、吸収した霊魂を吐き出して無駄にしそうだ。


 しかし、毎日小学校にいる悪霊の霊魂を呪符に封じようとしても、小学校に悪霊がいない日もある。


 そんな日が続くと、溜めている霊魂がなくなり、霊魂を吸収できない日がやって来てしまう。


 それを避けるため、小学校にいる悪霊を封印すること以外の手段で、霊魂を集めないといけない。


 何か良い方法はないだろうか……。






 お父さんが退魔官の仕事から帰ってきたので、俺は考えていたことを夕食のときに話した。


「パパ、怪異の霊魂を取りに行きたい!」

「いきなり、どうしたんだ?」

「最近、晴矢せいやは霊力を増やすために怪異の霊魂を集めているみたいよ」


 お父さんの質問にお母さんが答えた。


「だから、怪異の霊魂を取りに行きたいのか」

「うん」

「そうだな……。今週の日曜日なら仕事が休みだし、その日に行こう」

「わかった! シルも連れて行っていい?」


思業式神しぎょうしきがみ』のシルに、霊力を定期的にあげていたら、体の大きさを変えられるようになった。


 シルに小さくなってもらい、ぬいぐるみのようにして抱き締めると、モフモフで温かいので病みつきになる。

 自動車くらいまでシルは大きくなれるので、弱い怪異なら倒せると思う。


「いいよ。晴矢のおかげで、強くなってきたからね」


 さすがに、俺がシルに霊力を渡していたことは、両親もわかっている。






 それから数日が過ぎ、お父さんと怪異の霊魂を取りに行ける日曜日になった。


 そういえば、まだどこに行くのかお父さんに聞いてなかった……。


「怪異の霊魂を取りに行くのはどこ?」


「危険度レベル二の『目一鬼まひとつおに』がいる場所だ。その近くに住んでいる人はいないが、霊魂を取りに行くついでに、駆除できるならしておいた方がいい。人を食う怪異だからな」


 お父さんの話に出てきた危険度レベルは怪異の強さを表したものだ。

 人の強さを表すのは対応レベルという。

 対応レベルが危険度レベル以上であれば、その怪異を討伐できるように作られた制度だ。


 例えば、危険度レベルニの怪異なら対応レベルニ以上の人が倒せる強さだ。


 一般的な陰陽師や退魔官の強さは対応レベルニなので、レベル三なら精鋭、レベル四なら最精鋭、レベル五なら切り札的な存在と言えるだろう。


 ちなみに、危険度レベル一の怪異は弱すぎて、せいぜい悪戯されるくらいしか人間に害はない。



「パパだけでも『目一鬼』を倒せるけど、晴矢のために霊魂を取りに行くんだ。霊魂が必要な分だけ、晴矢が『目一鬼』を倒しなさい。それが終わったら、疲れている晴矢の代わりにパパが『目一鬼』を倒すから」


 お父さんはそう言って、忘れている荷物がないかを確認する。


「あれ? これって呪符じゃなくて護符だよね? こんなに持っていくのか?」


 お父さんが聞いてくるのも無理はない。

 俺の荷物の中には呪符もあるが、護符は百枚以上入っているからだ。

 これだけの数の護符を買うなら、百万円以上の費用がかかるのではないだろうか。

……自分でも理解している――この量は過剰だと。


「うん! 護符なら呪符と違って不意打ちされても、勝手に攻撃を防いでくれるから、毎日少しずつ作って、いつも持ち歩いているの」


「……パパは呪符も護符も作れないから、そんなに護符を持ち歩いたことはないなぁ……。それに、霊刀があれば何とかなる」


 お父さんは苦笑いしながら、俺に霊刀を見せてくれた。


 霊刀に霊力を込めれば、物理的な攻撃が効かない怪異を斬れるし、霊刀の切れ味と耐久力が増す。

 陰陽師が陰陽術を武器にしているように、退魔官は霊術と霊刀で戦っている。


 怪異は霊力視ができないと姿が見えず、霊力を用いた攻撃でないと攻撃が効かない。

 霊力視ができない一般人は、怪異の姿を見ることもできずに、食べられてしまうことも珍しくない。


 怪異は日本全国に次から次へと現れ、時間が経つほど繁殖し、際限なく数を増やしていく。


 それに対処する陰陽師や退魔官は、当然ながら常に人手不足だ。それでも、なんとか対処しているので、人々が暮らせる程度に怪異の被害は抑えられている。


 だから、怪異は一匹でも多く減らしておいた方がいい。

 怪異の数を減らすほど、怪異の被害をなくせる。

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