表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

第4話 戦いの後

 俺はサヤが拐われた後もその場に立ち尽くしていた。


「リウトちゃん⋯⋯」


 コト姉が落ち込んだ表情で語りかけてくる。


「サヤちゃん大丈夫かな」


 拐った奴らがどんな奴らかもわからないので俺は答えることができない。

 これがただの不良だったらサヤは逆に返り討ちにして逃げてくるだろうと言えるが――。


「おそらく大丈夫だと思います」


 俺とコト姉の間に青色のガルガッドに乗るヘルメットを被った女性が割って入ってきた。


「何で大丈夫だと言えるだ?」


 突然拐われたサヤが大丈夫だと? 俺は安易に言葉を発する女性に怒りを覚えつつもここで感情をあらわにしても仕方がないので話を聞くことにする。


「それはあなた方が異世界から転移してきたからです」

「異世界⋯⋯だと⋯⋯」


 正直な話ここに来るまでの俺だったら信じなかっただろう。

 だが荒野の景色に見慣れぬロボット⋯⋯少なくとも日本ではないと思っていたけどまさか異世界だったとはな。

 それに何で俺達が異世界から来たことをこの女性は知っているんだ。


「ええ⋯⋯突然のことで信じられないとは思いますがこの世界⋯⋯エルドラドへあなた達は転移してきたのです。そして異世界転移が発生する際の時空の歪みを探知する機械で4つの反応が見られたので私達アカルディアはあなた方を保護するため軍を派遣しました」

「4つ? それって俺とコト姉とサラとシュウヤのことか?」

「おそらく」


 ということは光に包まれる前に声を聞いたユズは異世界転移に巻き込まれていないということか⋯⋯良かった。

 俺はユズがこの世界に来ていないことに安堵する。


「詳しいことは後でお話するので今はこの場を離れましょう」

「えっ? なんでですか?」

「ここは3つの国の国境で先程襲撃してきたザイード国とは別のダルフォン国の者がまだ現れていませんから」


 ザイード国? ダルフォン国? どうやらこの女性が所属するアカルディアはその2つの国と仲が悪そうだ。


「さっき連れ去られたサラを助けるために力を貸してくれるんですか?」


 本当は自分自身の手で助けたいけどこの世界で俺は無力だ。先程ここで行われていた戦い⋯⋯あのようなロボットが相手だとさすがに厳しい。


「もちろんご協力いたします」


 俺はコト姉とシュウヤに視線を向けると2人は頷いた。


「わかりました。あなたに着いていきます」


 俺はヘルメットをした女性に肯定の意を伝えると女性はヘルメットを取り綺麗な薄いブルーの髪がフワッと舞った。


「挨拶が送れて申し訳ありません。私はアカルディア軍第1隊隊長のフローラと申します」


 俺は驚いて見とれてしまった。美しい薄いブルーの髪、まるで彫刻のような整った顔、スタイル⋯⋯まさか軍の隊長さんがこんなに若くて綺麗な人だったなんて。異世界だから地球人とは違う容姿をしているかと思ったけどそんなことはないようだ。


「ちょ、ちょっとリウトちゃん!」


 しかし俺がフローラさんを見つめていたのがよくなかったのかコト姉に左の耳を引っ張られる。


「痛いよ! コト姉!」

「ちょっと綺麗な子がいるとすぐデレデレしちゃって⋯⋯もう少しお姉ちゃんのこと見てくれてもいいんじゃない」

「コト姉の顔は毎日見ているじゃないか」

「そういう意味じゃないよ~」


 コト姉は顔を膨らませているが何のことかさっぱりわからないので俺はフローラさんが操るガルガッドの手に乗ることにした。


 そして誰もいなくなった戦場後の荒野にて


 両軍の攻撃で荒れ果てた大地に1人の少女が地面に倒れていた。その少女の服装はコトネやサヤと同じ羽ヶ鷺学園の制服を着ており、明らかにこの世界の住民ではないことがわかる。この戦いの中少女にとって幸運だったのはリウト達とは少し距離が離れていたことと大きな岩の陰にいることでアカルディアとザイードの戦いには巻き込まれなかったことだが、逆にそのせいでリウト達や両軍からも発見されることがなかった。


「うぅ⋯⋯」


 荒野に吹く冷たい風のせいか気絶していた少女は呻き声を上げながらゆっくりと意識を取り戻し目を開ける。どうやら意識を失っていただけで身体には目立った外傷はないようだ。


「ここは⋯⋯」


 そして少女はゆっくりと立ち上がり辺りを見渡すが焦っている様子はまるでない。普通の人間ならリウト達と同じ様に夢だと思うか、誰かに拐われて無理矢理この場所に連れてこられたと取り乱すが少女は至って冷静である。


 少女は拙い足で荒野を歩き、この戦いで荒れ果てた景色を見ながらポツリと呟く。


「私は⋯⋯誰なの⋯⋯ここは⋯⋯どこ⋯⋯」


 この声に応える者は誰もいない⋯⋯そう思われていたその時。

 荒野の南側から何かが近づいてくる音がするのであった。

ここまで読んで頂きありがとうございます。明日も更新致しますので読んで頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ