プロローグ?
私は紗倉伶、華のJKであった。
…そう、そうであったのだ。
なぜ過去形なのか?それは今…
「え、教室行ったはずなんだけど」
紗倉伶(17歳)、いつのまにか森にいましたーー…
ジリリリリリッ ガチャンッ
7時30分、いつもより遅い起床時間。
顔を軽く洗ったらお肌をととのえて、軽く化粧をする。
お母さんが作ってくれた朝ごはんを食べてから、
制服を着て鏡の前で全身を確認する。起床時間以外いつものルーティン。
「制服、身だしなみOK、荷物の用意もOK!」
ーー伶ちゃん、ママもう出るわよ〜
「あ、待って一緒に出るよ!」
伶の母親は所謂バリキャリというやつで出張も多く、今日から長期の出張だそうだ。
なので家を出るには少し早いけど、途中まで一緒に向かうのだ。
「また出張でごめんね伶ちゃん、せっかくの夏休みなのに…」
何かあったらおばあちゃんに連絡するのよ?と不安そうな母に対し、
「大丈夫だよ、どっちにしろ学園祭の準備で忙しくなっちゃうからね〜」
お昼は学食があるし、今日はお母さんのお弁当があるから!と嬉しそうに伶は返した。
ーーーーーーー
「じゃあ気をつけてね、お母さん。時間がある時は連絡してよ?」
と、学校が近付き名残惜しそうな怜に対し
ー…勿論よ、伶ちゃんもね?と優しく笑う母。
そして学校前の分かれ道で2人は別れた。
「ちょっと早めに着いちゃったな」
とりあえず用意しようかな、と部室に着いてポツリと零す。
なぜ夏休みにも関わらず登校しているのか、それは所属している部活である。
伶は演劇部に所属しており、演劇部の劇は学園祭でメインと言えるほどの人気があるのだ。
今回する予定の物語はオリジナルのもので、RPGゲームの要素を入れたものらしい。
確かにそれっぽい衣装だな、と自分の衣装を手に取りながらその出来に感心する。
伶の所属する演劇部は、そこまでの人数がいるわけではない。なので必然的に何役かやる事となっているのだが、一つは王子様のようなものともう一つは…
「村人の服にしては作り込みが凄いなぁ…」
ゲームで言うところの村人Aの様な格好、脇役であるにもかかわらずとても作り込まれている衣装に、それに合わせてウィッグを被り化粧をした怜が驚く。
ー…15分くらいに集合して、それから衣装の最終チェックするから2着ある人は先に着ておいてね!
と、昨日の部活で言われた言葉を思い出しながら持ってきた荷物ともう1つの衣装を持って先に教室に向かった。
コツ…コツ…
ブーツの音が誰もいない廊下に響く。
今日のお弁当なにかな?お母さんのご飯美味しいしなぁ
と、重たい荷物の気を紛らわせるためお昼ご飯を考えながら教室の扉を開けた、
はずだった。
ブワァッ!!
扉を開けた瞬間、風が吹き付ける。
「っ…!!」
ー…誰か窓開けっ放しにしてたな!
目に砂が入りながらも教室に入ろうと1歩踏み出した瞬間、
ガクンッ
なんで…?!
教室の床が抜けたのだろうか、踏み出した先に床はなく落下していく。
そして
ボスッ
何か柔らかいものの上に落ちた。
まさか床が抜けるなんて…運良くマットの上にでも落ちたのかな、と思いながら目に入った砂をとる。
そして伶はようやく目を開いた
「え、教室行ったはずなんだけど」
伶は困惑していた。
なぜなら、いつもの教室の扉を開け入ったはずが…
……森にいたのだから。
「…????」
え、セットにしては凄くない…??
いやセットなわけなくない??
教室からの落下に加え、急な出来事に困惑しながらも立ち上がろうとした、
「いたっ」
落下した時に怪我をしたのだろうか、足首が腫れてしまい立つことすらままならない。
どうしよう…
何が何だかわからない、どうしたらいいかわからない。
そんなとき、
パキッ
何かが折れる音が聞こえる。
グルル…
そして、何か獣の様な声が、怜の後ろから、
「ヒッ…」
音がした方向を振り返った伶は恐怖で固まった。
ひと目でわかる、犬なんかではない、これは、
ー…っオオカミ…?!
果たしてオオカミなのか、伶 にはわからない。
ただ襲われたら一溜りもないくらい大きく、牙は尖り、さながらゲームに出てくる敵の様な…、
ッ困惑している場合じゃない、どうにか…、でも動けないのにどうやって…?
グルルルッ…ヴヴヴ…
獣が怜を狙っている。
怜に飛びかかろうと、力を入れ、そのままー…
「…ッ」 パァンッ
何かが弾ける音がした。