四つの間
推奨人数:1〜5
推奨技能:目星・聞き耳・図書館・基本戦闘技能・ナイフ
想定時間:1時間〜3時間(テストプレイ時はPL1人で2時間でした)
※このシナリオは初心者PLのためのチュートリアルシナリオとして制作しています。
※このシナリオには「吸血鬼」p231(6版)が出てきますが、少し性能が違います。
【導入】
あなたが目を覚ますと知らない天井が目に入る。
体を起こし、周囲を見回すが、同じように今起き上がったであろう数人の知らない人が目に入る。
ここはどこで、なぜここにいて、今までどうしていたのか、そういうことが一切思い出せない。
(探索者&NPC幸運ロール)
「成功」
あなたはポケットを確認しますが、普段から身につけているものはかろうじてあります。
「失敗」
あなたはポケットを確認しますが、普段から身につけているものも一切無いようです。
ひとまずあなたはこの場にいる人間と話をしてみることに決めました。
【最初の部屋】
そこは四角い部屋だ。
全ての壁に扉がついており、それぞれに札がついている。
札にはそれぞれ「書物の間」「測量の間」「戦闘の間」「審判の間」と書かれている。
部屋の中央には丸いテーブルと棚が置いてあり、メモのようなものが見える。
(戦闘の間と審判の間、書物の間には鍵がかかっている)
『メモ』
メモにはこう書かれている。
「ミ=ゴに人体実験をしたいから人を集めてくれと頼まれた。
だが適当な人を持っていっても面白くないだろう?
それで君たちにはこれからある簡単なテストをしてもらう。
無事この場所から脱出できれば君たちは日常に戻れるが…もし失敗すれば…
これは言わなくてもわかるだろう。
では、健闘を祈る」
この文章を読み終えると、メモは元からそこには無かったかのように消え、代わりに銀のナイフが置かれていた。
sc0/1
『棚』
棚には鍵がかかっておらず、簡単に開けることができます。
中にはたくさんの小物が入っています。
「目星」成功
たくさんの小物に混じって鍵が入っていました。(書物の間のもの)
【測量の間】
その扉は鍵がかかっておらず、簡単に開けることができる。
そこは小さな部屋だ。
部屋の中央には大きめのテーブルが置いてあり、大きさのバラバラな4つのビーカーと3つのシリンダーが置かれている。
壁際にはシンクがあり、2つの蛇口が見える。
試しにひねってみると、どちらからも液体が出ます。
『ビーカー』
それぞれ「1」「2」「5」「8」と書かれたビーカーだ。
「1」のビーカーの2倍の大きさのビーカーには「2」と書かれており、ほかも、5倍、8倍程度の大きさがあります。
メモリはついていないようだ。
「1」のビーカーは底が割れていて、使うことができない。
『シリンダー』
3つの並んだシリンダー。
(1=8-(5+2)・3=5-2・6=8-2が答え)
『シンク』
2つの蛇口があるシンクだ、片方は赤色のタグ、もう片方には青色のタグがついている。
(でてくる液体に触れても特に問題はありません。青から出てくる液体が儀式に使うもの。判別するには銀のナイフを液体につけてみるとわかる)
(青いタグの蛇口から出る液体に銀のナイフをつける)
探索者が青のタグがついた蛇口から出た液体に銀のナイフをつけてみると、液体のかかった部分からナイフが変色していきます。
(この状態でも銀のナイフとして問題なく使用可能)
【書物の間】
探索者が鍵を使って扉を開けると、そこは全ての壁一面に本棚が並ぶ部屋だ。
部屋の中央には鍵が落ちているのが見える。(戦闘の間のもの)
「図書館」or「目星÷2」成功
探索者が何気なく本棚を眺めていると、「空想生物図鑑」という図鑑を見つけます。
(ミ=ゴの質問の後に成功させる)
探査者は、本棚から「大罪と美徳」という本を見つけます。
(測量の間に関する本を探す)
探索者は本棚から『貴族の食器』という本を見つけます。
『メモ』
ここは書物の間。あなたが疑問持つる時、知識を得るだろう。
『空想生物図鑑』
たくさんのページがありますが、殆どの文字がかすれていて、読むことができません。
かろうじて読めそうなページは「ミ=ゴ」と「吸血鬼」についてのページです。
「ミ=ゴ」
その姿は、背丈が5mほどはあるピンクがかった色の生き物だ。
甲殻類のような胴体に大きな背びれのような翼を持ち、関節肢が数組付いている。
頭部は非常に短い触手に覆われており、渦巻状の楕円体に見える。
足を全部使って歩くこともあれば、後ろの2本のみで歩くこともある。
ミ=ゴは人間よりも遥かに秀でた知性を持つ地球外生命体であり、意志の疎通には頭部の色を変えて行うが、虫のような声ながら人間の言葉を話すこともできる。
その知性は驚異的な外科手術の能力を実現しており、生きた人間の脳を金属の筒に入れて生きたまま持ち運ぶこともできるようだ。
この状態でもいくつかの装置を介することで近くのものとコミュニケーションを取ることも可能のようだ。
「吸血鬼」
吸血鬼に関する逸話は数多く、今ではどの逸話が本当でどの逸話が物語のものなのか、わからないことも多い。
吸血鬼の多くは人と変わりない姿で生活するが、時には霧やコウモリに変身することもできる。
日光が苦手のようで、夜以外では基本的に活動しないようだ。
吸血鬼は鏡に映ることは無い、吸血鬼に血を吸い取られて死亡した人間は、吸血鬼になってしまうという話も有名であり、これは多くの吸血鬼に共通しているようだ…
吸血鬼は銀の弾丸やナイフに特に弱く、心臓を貫かれると死亡する。
『大罪と美徳』
大罪と美徳で有名なのは七大罪と七美徳だろう。
七大罪は「傲慢」「憤怒」「嫉妬」「怠惰」「強欲」「暴食」「色欲」が有名だが、大罪の歴史には他にも「虚飾」「憂鬱」などが存在した。
他にも、第八の大罪と呼ばれるものもある。
対して七美徳には「知恵」「勇気」「節制」「正義」「信仰」「希望」「愛」がある。
そして、「正義」の対義語は「不義」であるが、「正義」の対義語は「正義」と呼ばれる場合もこの世には存在し、正義と対立するのはいつももう一方の正義だからだという説から来ている。
その点から、「正義」は本当に美徳なのだろうか?
『貴族の食器』
中世の時代、貴族の食器とは大抵銀製であったとされる。
その理由は銀は毒に反応して色を変質させるという特徴があり、その特徴を使って毒味をしていたのだ。
【戦闘の間】
探索者が鍵を使って扉を開くと、そこにはいくつかの柱が並び、玉座の間のような場所だった。
明かりは全く無いはずだが、何故か薄暗く光っていて、視界の確保にはなんの支障もありません。
部屋の奥には生物の死骸であろうものがいくつか倒れている。sc0/1
種類も豊富で「犬」「猫」「熊」「馬」「蛇」があるようだ。
探索者がその部屋を探索するため、中に足を踏み入れたその時でした。
柱の裏や暗闇からたくさんのコウモリが飛び出し、探索者から見て正面、部屋の奥に集まります。
やがて、そのたくさんのコウモリ達は1つの人へと姿を変えていきます。
そのコウモリ達は完全に一人の人の姿になると、探索者へ話かけてきます。
「誰だお前たちは……我の根城になんのようだ?
だが……丁度いい…人間の眷属が欲しいと思っていたところだ。
お前たちを我の眷属にしてやろう!」
そう言うと、探索者へと襲いかかって来ました!
どうやらこの人は吸血鬼のようです。
sc1/1d3
『吸血鬼』
str20
con13
siz10
int13
pow13
dex10
app18
最大耐久12
db +1d4
攻撃「噛みつき」(30)
ダメージは1d4+db。
また、この攻撃を成功させるとsc1/1d5。
この吸血鬼は物理攻撃のダメージを半減させますが、銀製のナイフや弾丸だと通常通りのダメージが出ます。
(吸血鬼を倒す)
探索者が吸血鬼を倒すと、彼の近くでチャリンという金属音と共に、鍵が落ちているのが見つかります。
【審判の間】
探索者が鍵を使って扉を開くと、そこに広がっていたのは大きな柱が規則的に並ぶ大部屋です。
そしてそこには背丈が5m程はあり、ピンクがかった甲殻類にも似た胴体と翼を持った生物が部屋の中央に立っていました。
その姿は、間違いなく図鑑で見たあのミ=ゴという生物でした。
それを認識すると同時、部屋に明かりが灯ります。
その部屋が照らされると、一気に景色が変わります。
探索者が柱だと思っていたものは、SFでよく見る、液体の入った大きな筒で有ることに気づきます。
その中には脳が入っていました。
そしてそれは探索者が柱だと思っていたものの数だけ、脳缶が規則的に並んでいるのです。
そして、探索者の耳に突然声が響く。
「また人が来た」
「これで何人目?」
「数えるのも面倒だ、知るわけが無い」
「でもまたいつもと変わらない」
「どうせわからない」
「そして実験される」
「脳を取り出される」
「そしたら仲間」
「僕達と同じ」
「私達と同じ」
「君たちも同じ」
「どうせここから」
「「「「「逃げられない!」」」」」
そんなたくさんの声が木霊し、探索者の鼓膜を震わせている。
その後も声は「逃げられない」「君も仲間」などと、ブツブツと聞こえ続けます。
どうやら、ここにある脳達が話しかけてきているようだ。sc1d3/1d6+2d3
そして、また1つの声が探索者の耳に響く。
「どうやら、吸血鬼を倒してきたようだな」
その声は、どうやら目の前の生物、ミ=ゴのもののようです。
「本来ならお前達に今すぐにでも実験をしたいところだが、それは面白くないとニャルラトホテプ様に言われてしまった。
それでテストをすることにした。
これがここから出る儀式だ」
ミ=ゴはそう言うと、一枚のメモを探索者の目の前、その空間に出現させます。
「無事儀式に成功すればお前達は日常に戻る。
しかし、失敗すればお前達は実験対象だ。
せいぜい頑張ってみるといい」
そういうと、ミ=ゴはなにやら作業をはじめたようです。
『メモ』
まずは贄、光を反射する板、しかし贄はその影響を受けない。
そして薬、触れるだけなら問題無し、しかし飲めば死ぬ。
そういう毒素の強い薬。
そして材、足を千切って八本用意。
用意ができたら儀式の始まり。
まずは贄と材4本、一緒に薬をひとすくい。
次に材4本、薬をさんすくい。
薬のかかった材と贄、一緒に薬をろくすくい。
最後に血をひとしずく。
これであなたは自由の身。
※贄は「吸血鬼」。
薬は測量の間にあった青いタグの蛇口からでる液体。
材は戦闘の間にあった動物の足(腐ってるので簡単に引きちぎれます)。
ちなみに探索者のものでも可。
工程としては吸血鬼を持ってきて足4本と一緒に薬(1)をかける→残りの足に薬(3)をかける→全部まとめて薬(6)をかける→最後にナイフで指先などを薄く切って血を垂らせば儀式は成功する)
※探索者が血をかけようとする手前で次へ
探索者が儀式を完成させようとしたとき、ずっと作業をしていたミ=ゴが話かけてきます。
「どうやら、君たちは日常に戻れそうだな。
残念だが、少しはデータが取れた。
それで、日常に戻る前に君たちに最後の質問をしたい。
儀式を終わらせる前に答えてくれないか?」
ミ=ゴはそう言うと、一拍置いてこう続ける。
「それは大罪だ、しかし、七大罪ではない。
そしてその大罪は、七美徳でもある。
さて、それは一体なんだろうか?」
君たちはこのミ=ゴの言葉を無視し、儀式を完成させて脱出してもいいし、真面目に答えてもいい。
(答えは「正義」、七美徳である「正義」はまた同時に第八の大罪とも言われています)
【ED】
儀式の工程を間違える→ED1
吸血鬼に殺される→ED2
毒を飲む→ED3
儀式を成功させる。ミ=ゴの質問を無視or不正解→ED4
儀式を成功させる。ミ=ゴの質問を正解する→ED5
【ED1「ミ=ゴの実験体」】
探索者が儀式をしていると、突然声が響く。
「間違えた!間違えた!」
「君たちは失敗した!」
「これで仲間」
「君たちも仲間」
「僕たちの仲間」
「私たちの仲間」
「脳を取り出される」
「脳缶になる」
「やっぱりここから」
「誰もここから」
「「「「「逃げられない!」」」」」
あなたの耳をたくさんの声が木霊する。
それを認識すると同時、あなたの意識は朦朧としていきます。
そして、たくさんの声とはまた別の声が耳に響く。
「君たちは儀式に失敗した。
よって、君たちは実験体として使わせてもらう」
朦朧とする意識の中、あなたの体は浮遊感に包まれる。
たくさんの声が響き、あなたの意識は暗闇へと落ちていく。
もうあなたは、自由にはなれない。
BAD END キャラロスト
【ED2「吸血鬼の仲間入り」】
吸血鬼の牙が首筋に食い込む。
あなたは抵抗するが、吸血鬼のほうが力が強く、血と一緒にどんどん力も抜けていく。
最後の一滴まで吸いつくされたあと、吸血鬼の牙が抜ける。
しかし、あなたに力は残っておらず、少しも動くことができない。
そしてゆっくりとあなたの意識は暗闇へと落ちていく。
気がつけば、あなたの前にはあの吸血鬼がおり、玉座に腰掛けていた。
体も自由に動くことに、あなたは気づくでしょう。
しかし、吸血鬼に戦闘の意思はなく、あなたも、もう吸血鬼を倒そうとは考えません。
「ようやく起きたか」
その声は、目の前の吸血鬼のものです。
「どうだ?
吸血鬼になった感想は」
そう言われ、あなたの犬歯が人間のものよりもより鋭く、尖ったものになってることに気づきます。
それを認識すると同時、強烈な喉の乾きを感じ、血を飲みたいと思います。
血が、飲みたい…
その感情は一呼吸するたびに強くなり、だんだんと理性が溶けていくような気さえします。
「血が飲みたいと言う顔をしているな。
いいぞ?
お前達はすでに我の眷属であり、吸血鬼だ。
夜に街へ行き、思う存分血を飲めばいい。
そして、我の眷属を増やすのだ」
わかりました、ご主人様。
その言葉を聞き、あなたは扉を開け、街へ行こうとします。
その扉の先はあの目覚めた四角い部屋ではなく、屋敷の通路のような場所だった。
屋敷を進み、外に出る。
あなたは血を求め、ご主人様の眷属を増やすため、夜の街へと歩き出した…
BAD END キャラロスト
【ED3「毒がまわって」】
あなたは青いタグのついた蛇口から出る液体を飲んだ。
するとあなたの体は突然動かなくなり、倒れてしまいます。
荒くなる呼吸、溢れるように出る汗。
口からは息と一緒に血も溢れ出す。
苦しい、苦しい、苦しい、苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい!!!
おそらく、あの液体は毒だったのでしょう。
毒が全身にまわっていく。
ゴボゴボと吐き出る血の海に溺れ、あなたの意識は途切れた。
BAD END キャラロスト
【ED4「あなたの知らない、よく知る日常」】
あなたが儀式の工程を終わらせる。
最後のミ=ゴの質問の意味は結局わからなかった。
しかし、これで日常に戻れる。
そう確信するあなたの耳に声が響く。
「気が変わった」
その声は脳缶たちのものでも、ミ=ゴのものでもなかった。
しかし、その声が誰のものか、あなたが知ることはできないだろう。
あなたの意識は暗闇へと落ちていき、次に気がついた時にはいつもの自分の部屋にいた。
よく知る天井、よく知る景色。
あなたは日常へと戻って来たのだ。
最後に聞こえた声が気になり体を確認するが、どこにも異常はなかった。
異常のないことに安堵し、あなたは日常へと戻って行った。
そのとき、あなたの目は、怪しく光っていた。
Normal END 報酬
吸血鬼を倒した1d3
儀式を成功させた1d3
無事に脱出した1d5
後遺症:創造された体(ホムンクルス「人造人間」)
この後遺症を得た探索者は、HPもしくはSAN値が0になってロストした場合、塵のようになって崩壊する。
【ED5「正義」】
あなた達はミ=ゴの質問に対し、「正義」と答えた。
「見事、正解だ」
あなた達の答えにミ=ゴはそう返した。
結局、なんのための質問だったのだろうか?
それはわからないが、ミ=ゴはそれ以上の興味は無くなったのか、また作業へと戻った。
あなたは儀式の仕上げに取り掛かる。
あなたの血が贄の体に触れると同時、まばゆい光を発しはじめます。
光は次第に大きくなり、やがて目を開けていられなくなります。
「おめでとう、君たちが初めての脱出者だ」
光の向こうからそんな声も聞こえてくる。
その声を最後にあなた達の意識は途切れます。
気がつけば、いつもの自分の部屋にいた。
よく知る天井、よく知る景色。
あなたは日常へと戻って来たのだ。
あの生物はなんだったのか、あの場所はなんだったのか。
嘘のような出来事ばかりでしたが、たしかにあったことなのだろう。
そんな感慨にふけりつつも、探索者は無事日常へと戻っていった…
True END 報酬
吸血鬼を倒した1d3
儀式を成功させた1d3
無事に脱出した1d5
ミ=ゴの質問に答えた1d5
いつもの日常1d5
【裏設定やあとがき】
今回のシナリオは上記のとおりミ=ゴが実験体を欲しがったがニャル様が普通に誘拐しても面白くないと言うのでテストという名目で探索者を呼び出し、脱出できなかった者を実験体にすることにしたという概要であり、探索者視点だと突然呼び出された挙げ句命の危機に瀕する羽目になるというシナリオです。
測量の間や書物の間はニャル様が作った空間ですが、唯一戦闘の間である吸血鬼の館は現実の何処かにある吸血鬼の屋敷であり、吸血鬼視点だと誰にも知られていないはずの場所に突然探索者が現れ殺されるという一番の被害者()
たくさん動物が死んでいたのはなんとか眷属を増やしたかったがためにいろんな動物の血を吸ったが、死にはしても吸血鬼にならなかったものを放置したため。
この吸血鬼はまだなりたてなのでそこまで強くないという設定です。
脳缶達は探索者と同じように呼び出され儀式に失敗した方々です。
また誤字脱字などあれば感想欄にてご指摘ください。
気付いたものから直して行きます。