森の入口で P -1-
「リチスー、リーチースー!待ってー」
あともう少しで森の入り口というところでリチスは、後ろからかけられた声に顔をしかめた。
ナールの里を出てから何度も同じセリフをかけられているのだ。体感としては十回を超えている。カウント制にするべきだったかと少し後悔していた。
そんなリチスの思惑を知らない少女———スィーファが息を切らせながら追いついてくる。
「はぁ、はぁ・・・リチス歩くの早すぎ……」
「さっさと歩かないと、逢魔が時を過ぎたらモンスターも多く出るでしょ」
文句が一番に出たスィーファにリチスは常識をぶつけた。
「そりゃそうだけど……」
『遅れたのはスィーファが道端のキノコとかに目を取られていたからでしょ』
スィーファと契約している水の精霊のイシュが会話に割って入った。
「ひ、ひどい!普段見ないばかりだったんだもの」
『でも食べるのはないわ』
「く、口に入れられれば大抵大丈夫!!」
『……食いしん坊もここに極まれると馬鹿というか無謀というか』
よくこれで旅に出られると判断されたわねというイシュのあきれ声にスィーファの顔が赤くなる。
「なんですってー!!」
言い合いが始まったのを見て、リチスはため息をついた。このコンビの喧嘩は長いので、ひたすら待つしかないのだ。
きゃんきゃん騒いでいる二人を横目にリチスは今来た道を振り返る。
里を出てから大分歩いたが、遠くにナールの里の象徴である精霊大樹がよく見えた。
リチスとスィーファは精霊使いだ。
この世界において、人は魔法素質というを持っているため、魔法は修行すれば使えるようになるという代物である。
修行を経てある程度魔法を使えるようになった者は魔法使い・魔女と呼ばれる。なお、魔法使いは男性・魔女は女性に対する呼称だ。
しかし、精霊魔法は一般的な魔法体系とは一線を画す。
火、水、地、風、雷そして光、闇。
これがこの世界を形作る要素であり、精霊魔法の基本要素でもある。
精霊を使役するという特性上、精霊使いはどれか1種類の精霊魔法しか使えないが、その代わり使える魔法は精霊魔法ではない魔法と比べると強力である。魔法の強さをランキングとしてピラミッド形式にした場合、その頂点に来るのが精霊魔法である。
魔法を使うことには変わりがないため魔法使い・魔女でも合ってはいるのだが、精霊を使役して魔法を使う特殊性と使う魔法の強力さから、区別して「精霊使い」と呼ぶことが一般的である。
途中までテンポよくかけたのに、最後の方がうまく書けなかったので、後で変えるかもしれません。