プロローグ
プロローグ
「こんにちはー」
その男がドアをノックした。
応答は無い。
「もしもーし、こんにちはー!!」
強めにノックする。
だがやはり応答は無かった。
「・・・」
ポストを覗きこみ、何も入っていないことを確認。更に、電気メーターが動いていることも確認した。
「失礼しまーす」
ドアに力を込めると、徐々に「メリメリ」という嫌な音がし、そして形容しがたい轟音と共に、鍵の部分が破壊された。
「すいません。問題あれば弁償しますんで」
だらしなく開いたドアから、アパートの中が丸見えになった。
「・・・て、テメエ!何なんだぁ!?」
薄汚く黒ずんだTシャツにゴムひもがゆるんだガラパンで、クマの様に毛むくじゃらでハゲ散らかした男が血相を変えて飛び出してきた。
「いるじゃないですか・・・。ノックして、ベルも鳴らしましたよ?」
「はあぁ!?テメエ何してんだ!ドアぶっ壊してんじゃねえかあああ!!」
部屋の中は異臭が漂っていた。
キッチンシンクは生ごみのたまり場となっており、古代遺跡から掘り出されたお皿でももっと綺麗だろうと思われる洗い物が一体いつからなのか積み上がっている。
部屋中に捨てる予定も分からないゴミ袋が散乱し、中身も燃えるごみも燃えないゴミもなにもかもゴチャゴチャになっていた。
どうして捨てないのか理解に苦しむ「食い散らかし」のカップラーメンの、汁が半分残った状態のものが放置され、腐臭を放っている。
部屋中がその調子で、唯一「けものみち」の様に玄関から一番奥の部屋までどうにか人が通れるスペースが開いている様に見えた。
「度重なる児童相談所の訪問にも居留守を使うか、『何も問題無い』といってお出にならないそうですね?」
「あぁ・・・?テメエの知った事か!」
地響きのような怒鳴り声だった。
「・・・まあ、児童相談所の職員さん程度ならビビられるんでしょうが、私には通じません」
「うせろ!」
「部屋を拝見しますよ」
「うるせえええ!!」
殴り掛かってきたTシャツ男の手を払いのけ、腹部に一発お見舞いする。
「う・・・」
たちまちゴミの山に頭から突っ込むTシャツ男。
闖入者は、靴も脱がずに部屋に分け入って行く。
「・・・やあ」
その奥には縄で縛られ、顔を晴らし、掛けられたらしい水浸しになっている小学生くらいの女の子がいた。
「もう安心だ。もうすぐお巡りさんがくるよ」
***
「・・・ということで、警察に近所のコンビニから匿名の通報があり、部屋に押し入ったところ、ドアが力任せに破壊され、中には衰弱しきった少女がいて、無事に保護されたらしい」
盛田出人が言う。
「珍しくまともな事件だな」
巣狩颯太がコーヒーを啜りながら答えた。
「続ける。この家は両親と一人の子供が暮らしていた。恐らく父親による虐待であろう悲鳴が毎晩鳴り響いて近所から通報が毎晩の様にあったらしい」
「・・・毎晩?警察は何をしてる」
盛田のこの定番ギャグも毎回なのですっかり神通力を失っている。元からそんなものは無いが。
「当然、児相(児童相談所)と連携を取って何度も踏み込むが、「民事不介入」だからな。「何も無い」と言われれば引き返すしかない」
「くたばれ」
「児童相談所も、訪問しても顔も出さないんでお手上げだった」
「バカか。実際に虐待してる親が「すいませんでした。反省します」とでも言うと思ったのか」
盛田がページをめくる。
「実際、痩せこけた状態で小学校にやってくる・・・どうやらロクに食べさせてもらっていなかったらしい・・・ことや、着ている服もいつも同じでボロボロなのを不審に思われて通報され、保護されたこともある」
「保護されただと?」
「ああ」
「じゃあ何故返された?」
「父親の執拗な抗議に負けたんだな」
「・・・腐ってやがる」
「そして昨日の事件だ」
「もう一度詳しく」
更にページをめくった。
「母親はパートに出ていて不在。仕事もせずに飲んだくれていた父親が長女を虐待していたと思われる。だが、謎の人物・・・仮名「加害者A」・・・がドアを破壊して侵入」
「目撃者は?」
「平日の昼間ということもあってほぼいない。ドアには指紋もなく、靴のまま上がり込んだらしい靴跡からの特定も困難・・・というかほぼ不可能らしい」
「ふん」
「その後、さっきも言った通り近所のコンビニから匿名の通報があった」
「内容は?」
「住所を言った後、女の声で『父親を拉致させてもらう。永遠に返す予定はない。子供が部屋で震えてるから早く保護しに来い』と言って切れた」
「・・・女の声??」
「ああ。声紋分析だと個人は特定できないが、恐らく成人まもない程度の女性の声で間違いないらしい」
「女の誘拐犯ってことか?父親は?」
「行方不明だ。今のところ見つかっていない」
「子供の方は?」
「今度こそ施設に保護された。残念だが母親には保護・養育能力が無いものとし、定期的な面会はさせるが施設で育てることになった」
「・・・可哀想に・・・」
「とはいえ、あのまま父親に殴られ続ければ物理的に生命の危機だった。精神面で手厚いフォローが必要なことは言うまでもないが、とりあえず何とか救出出来た形だ。今のところ健康状態に問題は無い。同年代の子供に比べて明らかに体重が少なかったりもしたが、今はよほどお腹が空いていたのか食べたいだけ食べてよく寝てるらしい」
「ふん・・・まあ、それは分かったが、問題は行方不明の父親だな。単なる家出とも思えん。女の声で電話があったってことは、若い愛人作っての逃避行か?」
「いやそれが・・・目撃者がいる」
盛田が言い淀んだ。
「何だよ。さっき目撃者はいないって」
「全く別のところからの目撃者なんだ。一応通報電話があったコンビニの店員。時刻もほぼ一致する」
「だったら決まりだろ。犯人は若い女か?そのオヤジはどうした?」
「・・・いいのか言って」
「何だよ。言わなきゃはじまらんだろうが」
「・・・どうしてウチ案件になったかだ。比較的新しい事件なんで本庁の方でも捜査はしているらしいが」
巣狩が静かに言う。
「いいから言ってみろ」
「分かった。・・・実はその・・・公衆電話を『掛けていた』のは、とある人物の『肩に乗せられていた』人物の方だったそうだ」
「肩に乗せられてた?」
「ああ。腹を下向きにして、尻が前を向く感じだな」
「・・・はあ」
「肩に乗せていた方では無くて、乗せられていた人物が、その状態で公衆電話の受話器を取って電話していたそうだ」
「・・・なるほど妙だな」
「一番妙なのはその・・・その人物たちの「服装」だな」
「服装?チンドン屋の格好でもしてたか」
「ある意味それに近い」
不鮮明な写真と、鮮明な写真を出して来る盛田。
「・・・何だこれは」
「目撃者によると、男の方・・・担いでいる方・・・の格好は覚えていないそうだが、担がれてる方は覚えていたらしい。所謂「バレリーナ」のコスチュームを身にまとっていたらしい。こっちの不鮮明な方がその時に撮影されたもの。こっちの鮮明な方は、『参考写真』として「こんなカッコウだった」という資料だ」
「資料」とされた方にはトリガラの様に細い女性がキラキラと輝く白銀の「チュチュ」に身を包んで笑顔でカメラに向かってポーズを決めている。
「・・・この・・・格好した女が、肩の上から公衆電話してたって?」
「ああ。恐らく通報した「大人の女」ってのはこの女のことだろう」
「・・・まあ、状況はシュールだが、物理的に不可能な訳じゃない。バレリーナの格好するのも、肩の上から公衆電話掛けることも・・・何で好き好んでそんなことやってんのかはともかく・・・可能は可能だ。その電話から指紋を取ったりしたか?」
「勿論だ。何しろ今時公衆電話を使う奴なんぞほぼいないからな。前回掃除した後、受話器にふれたのはその女だけだと思われる。指紋は一つしか出なかった」
「犯罪に縁がありそうな雰囲気はせんが、検索は掛けたんだろ?」
日本人は指紋を全員登録する義務はないので、犯罪歴がある人間か現場で犯人と区別するために採取された指紋しか警察には登録されていない。
「うむ」
「ところで、女はともかくその女を担いでた男ってのが虐待父親だったんだな?」
「いや、この虐待父親はチビデブハゲだ。目撃された男とは似ても似つかなかったそうだ。何しろ肩に担いだバレリーナのインパクトが凄すぎて男の方は余り覚えていないそうだが、それこそ男のバレエダンサー、王子様みたいなすらっと背の高いイケメンだったそうだ」
「ふーん、そんな細いのが幾ら女だからって人間一人持ち上げるのは大変そうだな」
「いや、リフトは男のバレエダンサーの基本中の基本だよ。見た目よりずっと筋肉質だと考えていい」
「詳しいな」
「少しね。ともあれ指紋だ」
「誰の指紋だった?記録はあったのか」
「現場で採取されたものと一致した」
「?」
「現在行方不明の虐待父親の指紋だったらしい」
しばし沈黙。
「・・・?そのバレリーナのものじゃないのか?」
「ああ。状況的に電話を掛けたのもバレリーナ、受話器に触れたのもバレリーナのみ。しかし、受話器から出た指紋は虐待父親のものだけだった」
「・・・だったら何かの間違いだ」
「普通はそう考える」
「普通って・・・それ以外に考えられるか?」
盛田がコーヒーを煽った。
「ここからがオレの推理だ。いいか?」
「・・・またそれかよ・・・」
いつも突飛な推理を聞かされてウンザリ気味の巣狩である。
「どれほど不可思議に見えても、証拠及び状況証拠を繋ぎ合わせて行けば残るのは真実のみだ」
「いいから言ってみろ」
軽く「こほん」と咳払いする盛田。
「まず、一切の証拠を残していない謎の「加害者A」だが、コンビニで女をかついでいた男バレエダンサーだと思われる」
「・・・」
「虐待父親の家のドアは後ろめたいことがあるのか、常に施錠されていたらしいが、これを力任せに破壊している。普通は考えられないが、猛烈な怪力を持つものと推定される。ここまでいいか?」
「・・・まあ、侵入してるのは間違いないから、手段はともかく入ったところまではそれでいい。それで?続きは」
「「加害者A」には不思議な力がある。それは、男を女にし、しかも『バレリーナ』に変えてしまう驚異の能力なのだ!」
「・・・」
「虐待父親を成敗し、しかも警察に引き渡したところで大した罪にならず、すぐに娑婆に出て来ちまう・・・というか頼りにならん警察なんぞ有罪にすら持ち込めないどころか起訴するつもりもないだろう・・・ことから、「根本的な対処」をすることを考えた」
「虐待父親にバレリーナコスプレさせれば解決か?」
「単なるコスプレじゃない。身体まで完全に女にした上だ。目撃証言だと肩に担がれてたバレリーナは「トリガラみたいに細い」女だったらしい。実際、この不鮮明な写真でも・・・スカートに阻まれて下半身が全く映ってないが・・・男が女装したなんてことはありえない。100歩譲って女装だとしても、あの虐待父親では絶対にありえない」
「分かったよ。そして?」
「「根本的な解決」としては、このロクでもない虐待父親を永遠に被害者の女の子の前から消すことだ。だったら別人にした上、連れ去ってしまえばいい・・・」
「ただ単に連れ去る・・・それこそ殺せばいいんじゃないのか?その目的なら」
「いたいけな少女の目の前でそれは無いだろう」
「・・・そこは分かった。しかし、「別人」に変えるだ?」
「ああ。後腐れが無い」
「一億歩くらい譲って、「別人」ってのはいいことにしてやろう。女にするのも・・・まあ、いいことにしてやる。しかし何でバレリーナなんだよ。そんな格好でうろついてるから恐ろしく悪目立ちして目撃されまくってるじゃねえか」
「それは簡単だ」
「言えよ」
「それはこの「加害者A」の能力は「相手を女にする」能力なんじゃなくて、あくまでも「バレリーナにする」能力であると考えられる。だから「単に女になる」んではなくて「バレリーナ」になっちまうんだ」
大きくため息をつく巣狩。
「指紋の問題はどうなる」
「何もおかしくない。そのバレリーナは虐待父親本人なんだから、同一人物だ。指紋が一致するのは当たり前だ」
「・・・ならなんで『助けてくれ』という内容にならんのだ」
「恐らく「加害者A」に精神をコントロールされたんだろう。それに「加害者A」本人の声で通報すれば録音されて身元が特定されかねない。その点、「声も女」にされたばかりの男なら「この世のどこにもない」声なんでまず特定はされない」
頭を抱える巣狩。
「一応訊くが、なら名探偵さんは「加害者A」が何故そんなことをしたと思う?」
「恐らく自分のところのダンサーが人手不足だったんだろう」
「ほう、それで募集を掛けるでもなくオーディションをする訳でも無く、『能力』を駆使して「そこいらの男をバレリーナにし」て強引に『勧誘』したと・・・こうおっしゃるわけですな?」
キレ気味なのか丁寧語になる巣狩。
「「そこいらの男」じゃない」
「ほう?」
「この頃児童虐待が問題になっているが、どこも権限が無い上に強制力も無い。ちとやかましいクレーマー気味の虐待親がいればたちまち負けてしまう」
「・・・」
「実は警察及び児童相談所のデータをハッキングして、「間違いなく虐待をやっている客観的な証拠が100%確実だけど、法律の不備で罰されておらず、現在進行形で虐待している奴」のリストが出回ってるんだ」
「・・・本当か?」
「ああ。当然警察でも目を光らせてるんだが、すぐにデータを消して逃亡することを繰り返してる。そもそもサーバが外国にあったりすればそれもお手上げだ」
「・・・まさかそれを参考にターゲットを物色してたってのか?」
「そういうこと。悪を成敗した上、不足気味のバレリーナも補充できる。一石二鳥だ」
考え込む巣狩。
「最後のが無ければ本気でお前を病院にぶち込むところだった」
「しかし、論理的な帰結だ」
「父親が行方不明になってるのはバレリーナに・・・要は全く別人にされてしまったから・・・と言いたいんだな?」
「ああ」
「良く分からんが、仮にそうだったとして大人しく踊ってるもんなのかね。普通は逃亡して警察に駆け込むなり自宅に帰って来たりするだろ。バレエ団員として勧誘したところで普段の生活だってある。常に監禁してる訳でもない」
「電話を掛けさせたことからも、ある程度精神を操れるんじゃないかな」
「・・・大人しくバレリーナやってろって?」
「バレリーナってのはあくまでも職業名だよ。「若い娘」、女としてこれから先の人生を過ごすことまで含めて洗脳というか精神コントロールも同時にやったんだよ」
「住むところやら仕事はどうする・・・ってバレリーナが仕事か」
「いや、駆け出しの内は舞台のみじゃ食えまい。バイトなんかもしてるはずだ。いずれにせよ「普通の市民としての生活」は間違いなく存在する。仮にオレがこの能力持ってたら近所の適当なアパートあたりに住ませるね。全寮制の寄宿舎なんかがあるのが理想的だけど」
「ふっ!そこにはバレリーナにされた、元・犯罪者の男の若い女の集団がいるってか!」
「そういうことになる」
「バカバカしい。マンガの中の話だ」
「寄宿舎云々はともかく、顛末はそういうことだ」
やはり考え込む巣狩。
「妄想でしかないバレリーナ云々はどうでもいいが、気になるのはリストだ。まだあるのか?」
「Web上にってこと?当然ない」
「無いのか」
「どこにも無い。当局に目を付けられることを恐れてるんだろうね。大抵出現してすぐに消える」
「リストの人間が被害に遭ってないか調べることは?」
「そうだな。やってみよう」
「一応、そっちの荒唐無稽な『推理』に対抗して言わせてもらえば、その「リスト」に掲載された鬼畜野郎に対し、一念発起して立ち上がった自称・自警団の犯行・・・ってところか」
「目撃者や指紋なんかの状況証拠は?」
「ふん・・・現場にバレリーナのお化粧でも落ちてたのか?」
失笑気味に巣狩が言う。
「ああ。落ちてた」
「・・・」
「写真を見る限り、確かにそう見える。といってもこんな事件を本気で科学捜査はされないんで、科学的にも断定された訳じゃない。そういう意味じゃ真相は闇の中だがね」
「問題はリストだ」
「そうか?」
「一応信憑性はあるらしいし、今回に関して言えば確かに少女は救われた形で結果オーライだ。だが、人違いや私怨で人を刺す道具に使われ始めたら・・・大変なことになる」
「そうとも言えるな」
「・・・普通に考えればこれは全警察組織挙げての話になるが・・・まあ、相手にされんだろうな」
「結局オレたちの仕事ってことか・・・あ、そういえばリスト関しては少しいい知らせがある」
「ほう、今度は相手をベリーダンサーにでもする男でも現れたか?」
「虐待者リストを上げてるハッカーは身元を特定されない様に擬装を施してるんだが、最後に踏み台にしたサーバはアメリカにあるというところまでは突き止めた」
「アメリカ・・・」
コンコンとテーブルを叩く巣狩。
「待て。やっぱりリストが気になる。あの内容は警察内部からのリークもあるよな?」
「そうとは限らない。純粋にハッカーの仕事かも」
「警察はこれ調べてるのか?」
「どうかな。ついこの間まで、「IPアドレス」の意味すら分からず、手当たり次第に適当に捕まえたパソコンマニアに昭和の取り調べよろしく「お前が犯人だろ!吐け!」と怒鳴り散らしてまんまと吐かせて、捏造調書作ってた老害が未だに跳梁跋扈してる田舎警察だからな。警視庁ってところは」
「・・・ったく・・・」
「ハッカー相手に接続した「野良Wi-Fi」まで突きとめた京都府警のサイバー部隊と比較するとメジャーリーガーと小学生の草野球チームみたいなもんだ」
「同じ警察でもどうしてここまで違うんだ」
「さあね。ともかく、俺ら公安と情報共有してくれるとは思えんな」
「お前はどう思うんだ?」
「何を?」
「リストの犯人だよ」
「・・・義憤にかられた義賊ってところかな。やってることは犯罪には違いないが、結果として社会のダニが一匹駆逐されたに等しい」
「警察官が言っていいことじゃない」
「そうだな。ダニに失礼だ」
「・・・聞かなかったことにしてやる。・・・アメリカが関わってると言ったな」
「一応そうとは言えるが・・・」
巣狩が気が進まなそうに言う。
「お前には黙っておきたかったが、実はFBIにも俺らと似たようなチームがあるらしい」
「FBI?アメリカの?」
「ああ。FBIと警視庁は人事面でも交流がある。どうせ緊急の案件は何も期待されて無い部署だ。ちとアメリカ観光としゃれ込むか」
「行く気か?」
「お前、英語はいけるか?」
「まあ・・・日常会話程度なら」
「嫌味なエリートだな。お前らが「日常会話」って言えばそれはペラペラって意味だろうが」
「そっちこそ」
「まあな」
時計を見る巣狩。
盛田が言った。
「分かったよ・・・アメリカ観光に付き合う。で、その部署の名前は?」
「『パターン・チーム』というらしい」