シンクロボーダー
珍しく真っ当なやつです。
雨脚は緩慢で、しとしと降っている。
片腕は空いていて、ゆらゆら揺れている。
覚醒の反動で、ぐらぐら軋んでいる。
不可思議な感傷で、ぶらぶら進んでいる。
拍手の快音が、がんがん響いている。
嘲笑の連続が、けらけら聴こえている。
雷鳴の点滅が、ちらちら見えている。
不可侵の境界が、僕らを阻んでいる。
声は聴こえるのに、会いに行けない。
「このままでいいの?」―――そんな訳はない。
I am ready!
勢いつけて踏み込んで、
くだらない心象は一蹴して行こう。
靴底磨り減らして。
逆凪全て受け止めて、
アガらない感情なんて虚言だろう。
汗水たらして、さあ、行け。
大事な人に、逢いに行け!
窓硝子は透明で、間抜けが映っている。
心臓は脆弱で、とくんとくん鳴っている。
天候は快晴で、からから歌っている。
不可視の色彩が、わたしを染めている。
姿は見えるのに、触れに行けない。
「ただ諦めるの?」―――冗談はよして。
I have been ready!
生命を懸けて跳び込んで、
詰まらない幸福は淘汰して行こう。
空き缶蹴り飛ばして。
濁流全て押し込んで、
埋まらない距離なんて関係ない。
涙流して、さあ、言え。
大事な人へ愛を言え!
少年は前方へ、右手を伸ばしている。
少女は正面へ、左手を伸ばしている。
指先数cm、手は届かない。
「このままでいいの?」
「ただ諦めるの?」
「「そんな訳ないよ、冗談はよして!」」
Are you ready?
We are ready!
境界越えて翔んでって、
変わらない色彩を塗り潰せ!
僕達の想いで。
荷物も全部捨ててって、
君のいない世界なんて必要ないよ。
声を嗄らして、さあ、叫べ。
大事な人に、逢いに―――。
大事な人へ愛を―――。
「「I love you!」」
感想など、お待ちしてます。