File2 朝日に飛ぶトンボ
後目を引きずりながら、玄関の扉を開けると。
朝日に輝く真珠塗りの高級感のある車が、自分がゆく道を閉ざすように止まっていた。自分は、その光景を軽く眺めてから、ヤドカリが貝殻に戻る感じに扉を閉じ、振り返って四季を見ると、今までに見たことがない程の感情が読めない、影付いた顔をしていた。
「外に見たことない違法駐車しているやつがいるが、なにか知っているか?」
何か関係ありそうな感じがして、わざとデレカシーに欠けることを四季に尋ねると「何でもない」と暗さが入った無愛想な声で答えるだけで、そのまま背後をを向けて部屋の中に消えていった。
確かに四季のことも気になるが、真珠塗りの車が気になり、再び扉を開けると今度は、車の窓を開けて友達みたく、手を開き細かく揺らしながら、ビジネススマイルを見せる男がそこにいた。
正直、不気味さが丸出しだったが仕方なく、車に近寄っていった。
「あのさ~ひとん家の前で何やってるの違法駐車さん」
「あ~ごめんね。君を迎えに来たんだよ。はじめまして、御門レイアです~」
無愛想な言葉遣いで、問いただすとエリート経営者みたいな返事をしてきた。多少(誰なんだ?)と思ったがさっき四季が何か言っていたことを思い出し、「ああ~あ」と声を漏らしつつ、お迎えを断った。
「なんでさ~こんな高級車乗る機会なんってないんだからさ~ね」
少し驚いた、普通ならば断った時点でどっか行くはずなのだが、トンボがおでこに当たるがごとく噛み付いてきたから、羽音がうるさいトンボを追い払うがみたく理由を答えた。
「お言葉は嬉しいのですが。いくらそちらの手違いだからと、誠意を見せるのに不合格者がこのような車に乗るのは、逆に惨めなので不合格は不合格者らしく歩いて行かせてもらいます」
「あ~でもさ・・」
「話を折りますが、お時間が」
「そうか・・。じゃまたお会いしましょう」
簡単に言えば(うるさいからどけ)という話なんだが、そのことを理解したおもむきでレイアは、また乗せようとせがんでこようとしたが、秘書のような男に話しの腰を折られあきらめて、車を飛ばし道を開いた。
一応にも違法駐車の問題は解決したものの、根本的な何かが解決していない。
「四季のあの表情、トンボが飛んでくるような話し方をする御門レイア・・うん~」
ただこれだけはわかった、全部を解決をする鍵は、なぜか自分にあることしか考えられなかった。