File1-3余計な理想
劣等の水が満たす底で水面が揺らめき輝く中、自分は目覚めた。
実際には、ただカーテンの隙間から差す普段見えないホコリを照らす光が舞っているだけなのだが、自分にはそう感じた。
「ニーニーご飯できたよ」
いつもの家族に対する独特な妹の声が、熱湯を差すように耳をかすねてゆく。 その声に反応して、ゆらゆらと蝶が飛ぶようにまっすぐ、食事をするテーブルに向かって歩いて、ものすごい鈍い発酵と腐りが迷うような匂いがした。
目的地についてみれば、その匂いの正体が乗ったお皿が軽く音を立てながら、姿を現した。
(ごめん・・。この廃棄処分物は、なんだ?)
朝寝ぼけ、寝癖がついた表情でパチクリ数回した後、四季の顔を窺おうと、顔を彼女に移すと姿勢を低くして、悪戯な満面の妹面があり、さすがの自分も引き気味になるが、そんなことよりもこの料理の存在が気になり問いただした。
「あのさ・・。このバイオテロでも起きた惨事の料理は、なんだ」
「昨日の夜一緒に食べたフレンチトーストだよ。もう一度作ってみた」
複雑な笑みを浮かべなから、偉そう混じりにそう答え(食べるのだ!)諭してくる、いつもと違う四季を眺めつつ(答えがこの料理にあるのじゃないか)と思い口に含んだ。
もちろん不味いが、味覚が食べた記憶から連れてきて、なぜか四季に拳を口に突っ込まれたときのことを思い出した。呼び起された記憶に顔を歪めた姿になぜか四季は、暗黒微笑を浮かべて心配もする気もない声が出る。
「どうかしたの?顔色が悪いよ」
「いや、本当に不味いよ歴っとしたフレンチトーストだよ」
「良かった、ニーニーが元気だしてくれて」
「ん?なんか言ったか?」
「なんでもない~」
四季には、言葉を振り払うように軽く半回転して視界を外されたが、間違いなく自分が元気になってくれたことに、彼女なりの素直に喜ぶ姿に自分も、目を閉じて、鼻で笑って感謝を伝えた。
そして、何を思ったのか肩の荷が下りたように普段言わない、お母さんの口調で話し始めた。
「あ!そう言えば昨日、御門レイアて人が電話かけてきて、ニーニー会いたいって連絡あったから、絶対に学園に行くこといいね」
「そうなんだ。わかった・・」
このときは、様子がおかしい四季の対応が気になりすぎて、内容は入ってきたが本来気にするべき、なぜそんな夜遅く連絡してきたのかについて気にもとめなかった。
食事を終えて玄関で、軽く四季は自分の匂いを嗅ぐ謎の身振りを見せ、親が子供を見送るように「気おつけてね」と言い残すさまは、あと何かに取り憑かすような、気持ち悪さがのこる感じであった。




