舞台想像
そして、どれだけの時間と思いの灯火が、過去に消えただろうか。カーテンの隙間から差し込んだ、月明かりがカビついた私の瞳に光を入れ、蛇口から落ちる水滴が時を刻む音で、目覚めた。軽くブルッと体を震わせ、今座っている食卓の椅子から、周りの様子を反射的に見渡した。
次第に意識がはっきりした時、とっさに「皿洗いしなくてわ!」っと思い慌てながら立ち上がりよろけつつも、台所に足と目を走らせた。
けれど、キレイに食器は洗われており水滴も残ってない状態で、乾燥棚に並べられていた。
そんな状況におかしいと思い、一度使ったが気に入らなかった洗剤と洗剤代わりとして使っている重曹の減り具合をみて、いつも食器を拭くのに使う、柑橘類の皮と重曹、アルコールを混ぜた殺菌剤で、きっちり処理された乾いたふきんが、柑橘とアルコールの香りが醸し出されていて、キレイにたたまれていた。その光景に張り詰めていた不安感が呆れと驚きに分解され、安心感に収束した。
なぜなら、私自身しかできないやり方で処理をされていて、かつ無意識にこの皿洗いをやっていたのかと考えると、多様な感情が心をめぐるが原因がわかったことで安心できた。
それから蛇口から落ちた水滴が数回、時を刻む中次第に心から全身へと炎に似た温かさが唇のシワを伸ばし笑顔をこぼさせた。最初はなんで笑っているのかわからなかったが、軽く目をつむるといつものだらしない、兄の姿が映り、その場にいないはずなのに鮮明に声が聞こえた。
「四季、お前は自分を見失うな。見失ったら触れることもできなくなるからな」
そんな言葉が、体中を撫で擦れて生まれた熱がやがて、月明かりに輝いていた、心の篝火に再び光が灯りあたりを照らし、月光の灯火を消した。
人によって捉え方が違うと思うが、私にはこう感じた。
私の見えてる現実と理想に目をそらすなっといっているように思えた
そのためにも兄を見捨てないで、はっきりとレイアを捉え、私の代わりに兄が言葉でぶん殴ってもらうために、現実に向き合うことを決め、すぐの起きて朝ごはんを作るために、部屋のソファーにきぐるみを着て眠ることにしたのであった。