2
あなたは耳が聞こえないのだと人から聞きました。
あなたは生まれつき耳が聞こえないのではなく、高校生の頃、病気に罹って聴力を失ったのだと聞きました。
詳しいところについては、さすがに聞いたことがありませんでした。
普段、あなたは筆談をしているようでした。
それは紙とペンを持っている日もあれば、最近ではデジタル化したようでタブレットを使って筆談を行っている場合もありました。
わたしは文字が読めませんでした。
あなたは耳が聞こえませんでした。
わたしとあなたとでの会話は、まるで異なる言語を違っているかのように、仲介役がいなければできませんでした。
それはとてももどかしいことです。
あなたにかけられる言葉を、わたしは持っていないのです。
それはわたしにかける言葉をだれも持っていないように……。
平仮名も片仮名もアルファベットも数字も、何も読めないわたしに対して、人は優しく声をかけてくれるはずなどありませんでした。
だってわたしは、人から見て”馬鹿”だったのですから。
大抵の人は、わたしを見ると逃げ出します。
それはもう、それはもう、悲しいほどに、そうなのです。
理由はわからないでもありませんでした。
それだって、まだ諦めきれませんでした。
文字さえ読めたなら、わたしは普通の人になれるのです。
文字さえ読めたなら、わたしはあなたと会話ができるのです。
一度は諦めた読み書きですが、あなたと出会ってしまったせいで、その気持ちが蘇ってしまったようでした。
幼稚園生が学ぶような平仮名の勉強書を、食い入るように見つめているのですから、怪しいと思われたって仕方はないでしょう。
諦めながらもやはり見ていたあの頃とは違って、あなたと出会った今は更に熱心に見ているのですから、怪しまれたって当然でしょう。
けれどあなたは応援してくれました。
初めてそれを見たときから、差別などせずに、わたしを応援してくれました。
それが嬉しかったから、わたしはもっと頑張らないといけないのです。
頑張れるところまで頑張ろうって思える、希望になってくれているのですよ。




