第1章 『異世界で最強を目指してみる』 第四話 「絶望な状況」
セラが知っている魔法の知識をまとめるとこうだ。
魔法には下から順に初級、中級、上級、超級、伝説級、と大きく5段階に分けられている。
しかし、この5段階の魔法とは異なる階級がある。
それを階級で表すとしたら零級というらしく、セラが先ほど出した炎の魔法はこの零級らしい。
零級は初級より階級が下で、炎を出してもロウソクの火が倍くらいの威力にしかならないのだとか。
さらに系統という物がある。有名な系統は魔力系、信仰系である。
魔力系統で行使する為に主に重要なのは自身の魔力で、自分の魔力が高ければ高いほど高位の魔法を使える。
信仰系統で重要なのは自分が信仰している神への信仰心で決まり、魔法も消費するが魔力系と比べると消費魔力は少ない。この系統は神官などが使っている。
その他にも色々な系統があるそうだが、セラが知っているのはこの二つだけなのだとか。
では、初級、中級、上級、超級、伝説級はそれぞれ何れ程の物なのか。
初級魔法だと《アロー》などである。
《アロー》は攻撃で使う魔法で無属性の矢を造り出す、炎属性や雷属性など色々な属性や効果をつけて変えたりすることも出来る。
中級魔法だと《火炎》である。
《火炎》は周辺を炎で燃やす事が出来る範囲攻撃である。
上級魔法は《ファイアーボール》などである。
《ファイアーボール》は炎の球を放ち、爆発する範囲攻撃である。
超級魔法は噂でしか聞いた事がなく、伝説級になると物語などでしか聞いた事がないのだと言う。
セラ逹の種族であるエルフは魔法より弓を扱うのが得意なそうなので魔法は人間の方が詳しいらしい。
「ちなみにセラは何れくらいの魔法を使えるの?」
「私は零級と初級までしか使えません。それに私が普段動物を狩るときに使っているのは魔法ではなく、あの弓ですから」
セラがそう言うと、壁にもたれ掛かっている弓に指を指す。
「なるほどね、凄いね!魔法も弓も使えるなんて」
「そんなことないですよ‼」
セラは顔を赤くし手と首を勢い良く横に振る。正直言って可愛い。
「魔法か...」
「悟様も練習をすれば使えると思いますよ?」
「本当!?」
「はい!」
「じゃあ魔法教えてくれない?」
「任せて下さい!」
胸に拳をポンっと叩くセラもやはり可愛い。
「それと様はつけなくていいよ」
「嫌でしたか?」
(そんなに目をウルウルされてもなぁ)
「いやそうじゃないんだ」
「で、ではどうしてです?」
「同年代くらいの子に言われるとさ、むず痒くて」
「な、なるほど..」
「うん、だから様はつけないで欲しいかなって」
「分かりました!悟さん!」
うんうんと悟は首を頷く。
「それで、明日からでも魔法の練習したいんだけど、いいかな?」
「はい!」
それから俺は毎日魔法の練習をした。毎日毎日それはもう練習しまくったのだ、春が過ぎ夏が過ぎ秋が過ぎ冬が過ぎそしてまた春が過ぎた、だが。
「なんで魔法が使えないんだよぉぉぉ!!」
なんでだ!?普通異世界転生物と言ったら速攻でチート級の魔法が覚えられるんじゃなかったのか!?
「あはは、多分悟さんには魔法ではなく他の才があるんですよ!」
膝をついて落ち込んでる俺にセナは頭を撫でてくれた。
「今日はこれくらいにしません?日も落ちてきましたし」
「そうだね...」
まだ落ち込んでる俺の背中をセナが撫でて少しの時間が経ったそのとき、セナの尖った耳がピクりと反応したのが見えた。
「悟さん」
いつものセナの声のトーンじゃないことに気がつき焦る、きっと何かマズイことを察知したのだろう。
「ど、どうしたの?も、もしかして熊とか?」
「いえ、違います」
悟がじゃあどうしたの?と訊こうとしたそのとき、前方の生い茂る木々から人間の声がしたのを耳に拾った。
そしてその声が一つではない事に気がつく。
「おいおい、何でアサール様はこんな森に逃げ込んだエルフの調査を依頼したんだ?」
「本当だよな、たかだか女のエルフ一匹に俺ら冒険者に依頼するとかさ、しかもまだ子供だそうだぞ?」
「マジかよ、アサール様はロリコンなんじゃねぇか?」
「あるわ~、ロリジジィかもな!」
そこにもう一人男の声が入る
「それくらいでやめておけ、いくらアサール様がいないといえ陰口をするものではない、それに誰かに聞かれたらどうする?」
「いやいやないでしょ、ここは広大な森の中だぜ?こんな所に人なんていないだろ」
「リーダーは真面目だからな」
どうやらこいつらは冒険者でアサールという男に雇われエルフの少女を探しているらしい、間違いなくセラの事だろう。
「逃げよう」
そう小声でセラに話し掛けるが反応がない、セラを見てみると顔は青く体が震えていた、怯えているのだろう。
悟がセラの体を擦る、きっと昔のトラウマがフラッシュバックしているのだろう。
さぁ逃げようと言おうとした時セラが倒れてしまった。
倒れた音のせいで笑っていた冒険者二人の声が止まった。
「おい、そこにいるのは誰だ?」
「に、にゃ~」
必死に猫の真似をする。
「何だ猫かよってなるか!」
(ですよね~)
まずい足音がドンドン近づいてくる。
どうするか、セラは倒れちゃってるし。戦うか?いや勝てる訳ないんだのよなぁ。
そんな事を考えているうちに男達が木々から姿を出した。
「大丈夫か?こんな所にどうしているんだ?ん?」
男の視線が悟の後ろに向き、満面の笑顔になるのがわかった。
「みいつけた♪」
マズイ!ここはいちかばちかだ!
「見逃してくれませんかね?」
「ダ~メ♪」
終わった、ここで終わるのか俺の人生(二回目)はこんなところで...
「悪いがそのエルフを渡して貰えないようならここで君には死んで貰うよ」
「はいなんて言える訳ねーだろ!」
悟は冒険者三人目掛けて突進する。
いける!奴らは不意をうたれてまだ身構えてない!これなら短剣を突進と同時に腹に刺せる!いけるぞ!
「バカかこいつ?おりゃ!」
え?悟は有り得ない光景が目に入る、後ろにいるはずのセナの姿が見えるのだ。そう有り得ない、悟は冒険者目掛けて突進してるはずだ、だがこうして後ろにいるはずのセナな見えるのだ、悟の頭でも切ったりしないと無理な光景だ、そう悟の頭は切られたのである。
「いくら不意を取られたからからとはいえ距離もあるしそれにC級冒険者の俺らに単なるガキが勝てるかっつうの」
ここで終わりか。。。