前回のあらすじ
交易国家シンドリーの貴族の家に生まれたヨシュアは、ちょっとワケありの少年だ。
幼い頃に八歳離れた兄を狙っていた女の子達に夜這いをかけられ、思春期に入ると大人の事情でハニートラップ込みの様々な身の危険に晒される日常を送っていた。
それ以来、声を大にして女嫌いだと宣言するような頑なに育ってしまっていた。
そんな十七歳になった現在のヨシュアが苦手意識の強い父親と兄から突きつけられたのは、ウェイデルンセン王国という辺境の地のお姫様であるティアラとの婚約だった。
嫌な思い出の多い家を出たかったヨシュアは嫌々ながら婚約話に乗っかり、何もかもをやり直すつもりで異国の新生活を始める。
ティアラと出会い、大変な目に遭いながらも狭い視野の自分を省みたヨシュアは、自らの意思で改めて異国の地で頑張る決意をするまでに変わることができた。
ところが、ティアラの兄であり、国王であるファウストに精一杯の気持ちを真面目に伝えたところ、鼻で笑われ小馬鹿にされてしまう。
原因は、強引に顔合わせをさせられた大きな狼にあった。
国家機密である守護神の実体を知ってしまったヨシュアには、もはや選択する権利はないのだと突きつけられたのだった。
結局、どこにいようと不幸に見舞われる体質のヨシュアは、今日も見えない光を探して必死にもがいている。