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魔法力0の騎士  作者: 犬威
第2章 アルテア大陸
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side トリシア=カスタール ~過去~

トリシアの過去の話になります。

 


「これはあの人が私に(たく)してくれた力なんだ」



 そういって悲しそうに笑う姉の姿は今でも覚えている。



【~8年前~】




 私の姉は戦うことが嫌いだった。


 姉は騎士にはならず、いつも忙しく働く私の事を心配して、家でよく料理を作って待っていてくれたものだ。



 そして姉には婚約者がいた。



 その婚約者は先月病気で亡くなってしまった。

 私も数回しか会ったことはなかったが、姉の話を聞いたところによると異世界人の孫にあたる人物だというのがわかった。




「彼の力は譲渡することができるの、私にこの力を有効に使って欲しいってね、最後の彼の頼み… だった… から」


「姉さん…」



 もう一か月前の事だが姉の心の傷は大きく、立ち直る事ができないでいた。


 姉の婚約者は土木関係の仕事についていて、これからこの都市を発展させるために重要な役割に付いていた。


 最後の工程に入る前に病気が発覚して、そのまま…



「だから… 最後の工程は私が引き継ぐ事にしたの… あの人の意思を後世に残すために…」



 今、最後の工程に移るため、私と姉は二人夜中にキルクの森まで来ていた。

 肌寒い風が吹き抜け、もうすぐ冬の(おとず)れを感じる。

 落ち葉を踏みしめ、目的のポイントまで歩いて行く。


 その工事は姉の婚約者が倒れたことにより中止されていて、完成まじかで終わっている。



「姉さん、どうして明るい日中にやらないんだ?」


「この力は(おおやけ)にはできない力なのよ、あの人が前に言っていたわ『強すぎる力は狙われる』と」



 そう、いつだって出る杭は打たれる。

 優秀すぎれば(うと)まれ、それを脅威に感じる者が後を絶たない。


 そうやって闇に(ほうむ)り去られたものは数知れない。


 そんな現場を見ることもよくあったのは事実だった。



「そうか…」


「着いたわ、トリシア、明かりをつけて」


「わかった、ファイア」



 指先から弱い火炎が出て、持ってきたランプに火が灯る。

 カバンから地図を取り出し、姉は目的のポイントを探す。


 森の中腹まで来て、いったい何をするのだろうか…


 都市は順調に建てられていて、外観的にはもう手を(ほどこ)しようがないと思うんだけど…


 そしてこんな都市から離れた魔物も出るキルクの森まで来るなんて…



「あった、【土木制御】」



 そこにあったのは小さな池。


 姉はその能力で地面に大きなトンネルを池の側に作り出した。



「すごい、なんだこの能力…」



 これは今までの常識を遥かに(くつがえ)す光景、本来ならトンネルを掘る作業は複数人がかりで何日もかけて行われる。


 それが一瞬のうちに…



「よし、じゃあ、トリシアは私の後に着いてきて、あっ、地図とランプも持ってね」


「あ、ああ」



 見入ってしまって対応の声が遅れてしまったが、この光景を見れば誰だって開いた口が塞がらないだろう。


 姉はトンネルの内部に入り、私もその後を追う。



「【土木制御】!」



 中は人が1人通れるくらいの小さなものだ、姉はそのトンネルを掘り進めながら、崩れないように補強していく。


 これを一人でやっているのだ、そりゃあ知られたら不味いことになるのは誰にだってわかる。



「ト、トリシア、魔力回復薬を…」


「あ、ああ」



 さっきから渡しているこの魔力回復薬で12本目だ…

 さすがにこれ以上は命に係わる。



「姉さん!今日はもうこの辺にしないか?」


「もう少しで、繋がるはずなの… あの人が作ってくれた場所に… 」


「何も今日じゃなくたっていいじゃないか、明日またここに来れば…」


「ダメなのよ、それじゃあ… 明日には完成のお披露目が行われる、あの人の夢が失敗だったなんてことにはさせない…」


「姉さん…」



 魔力切れを何回も起こし、フラフラになりながらも青い顔で笑う。



 強いな…姉さんは… 私なんかよりもずっと…



 せめて手助けになればと思い、姉さんの体を支える。



「…ありがとう、トリシア」


「気にしないで姉さん、私にはこれくらいしかできないけど」


「そんなことないわ、もう足の感覚もよくわからなくなってるから立っているのもちょっと辛かったの」


「…っつ どうしてそこまで…」


「あなたも人を好きになればわかるわ、さぁ、あと少しだけ【土木制御】!!」



 トンネルをその能力で堀進んでいくと急に広い空間に出た。



「ようやくここまで来れた、ようやく…繋がった…」


「ここはいったい…」



 その光景は圧巻だった、広い空間に全ての配管と思われる管が無数に伸び、これがいわゆる下水道の役割をなしているのか。



「まだ、これだけじゃ、機能しないの」


「繋がったのに機能しないのか!?」


「そう、これが… 必要なの」



 姉のカバンから出てきたものは小さな機械のような物だ。



「これは?」


「これは、『浄化装置』と『自動循環器』を合わせた物よ」


「まさか、これを作る為に一か月部屋に(こも)っていたのか!」



 姉さんは婚約者が亡くなってから一か月の間一歩も外に出ず、家で生活していた。

 それを私は婚約者を失ったことから立ち直れてないからと思っていた。



「一か月もかかってしまったけど、お披露目の日までには間に合ってよかった…」


「…姉さん」



 その小さな機械を無数の管の前に置いて【土木制御】で大きな箱を作り管を繋げていく。



「うっ…」


「姉さん!!!」



 意識が朦朧(もうろう)としているのだろう。息も荒く、体の力も抜けている。



 早く、早く回復を…



 最後の魔力回復薬の瓶を開け、姉さんの口に持ってくる。


 口は半開きで、視線も定まっていない。


 どうやら意識も混濁しているみたいだ、自力では飲めそうにない!!


 魔力回復薬を自分の口に含み、こぼさない様に口移しで飲ませる。



「んっ…」



 魔力回復薬が喉を通っていく、ひとまずはこれで安静にさせておかないと。


 姉さんを横にさせ、私も座る。



「ぅう…」


「姉さん!?まだ休んでいてください!!」


「そういうわけには…いかない… 」



 これ以上はダメだ!!



「もう魔力も尽きているのに!!私が、私が引き継ぎますから」



 姉さんは一瞬悲しそうな顔をしたが、いつものように微笑んだ。



「…そう…ね お願い… してもいいかしら…」



 姉は弱い力で私の手を取る。



「【能力譲渡】」



 淡い光が私の中に流れ込んでくる、すると姉さんは弱弱しい声で話す。



「…入口の… 池に… ここを繋いで… この機械は… 水で作動… するの」


「わかった」



 姉さんを背負い、入り口まで駆ける。



 制御できるか不安だが、必ずして見せる。


 魔法とは違う力、二人の思いのために必ず成功させる!



 入口にたどり着き、トンネルから出て、能力を使う。



 イメージするんだ、姉さんと同じようにトンネルを…


 しっかり舗装するのも忘れないように…



「【土木操作】!!」



 魔力が一気に削られる感じがする。



 これほどまで…



 能力は暴発することもなく、池とトンネルを繋ぐように開通し、勢いよく水がトンネル内に流れていく。




「やった… できた…」


「…トリシア、ありがとう…これで… 私たちの夢は叶った…」


「そんな…大半は姉さんが… 姉さん?」




 背負っていた姉さんからの返事がない。


 急に力が抜けたみたいに重く…




 嘘…



 嫌…



 姉さんを背から降ろし、習っていた蘇生方法を実践する。




 お願い!!…



 戻って!…



 姉さん!…



 なんで戻らない!?



 なんで!?



 どうして!!



 お願いよ!!



 お願いだがら…



 戻っで…




 しばらく何度も蘇生方法を試したが、姉さんが息をふきかえすことはなかった。



 翌日、都市のお披露目は順調に問題なく進み、無事に成功したことが(うかが)えた。


 だが、二人が命をかけて作り出した下水道の技術は誰に知られることもなく今日までに(いた)る。


 その後私は、下水道の隠蔽工作と下水道から地上の都市に繋がる道を秘密裏に作った。



 ーーーーー



 まさかそれが今になって役に立つ日が来るとは夢にも思わなかったよ…



「カナリア、手順はわかっているか?」


「はい、必ず第1部隊を救出します、アルフレアに誓いましたから!」



 頼もしいな…



「それでは、今からこのトンネルを通って侵入する、遅れをとるなよ」


「はい!!」




奪還作戦開始!!( `ー´)ノ

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