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魔法力0の騎士  作者: 犬威
第2章 アルテア大陸
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side トリシア=カスタール ~作戦~

トリシア回は初ですね、しばらくこの話は同時進行で進んでいきます。

 


「この仕事が落ち着いたらさ、僕と結婚してくれないか?」




 いつもとは違う、真剣な顔でストライフは私の手を取り、私を見つめる。

 魅力的な話… だとは思う。


 だけど私は…




「ごめんなさい、ストライフ、あなたの気持ちは嬉しいわ、だけど私も騎士団長になったばかりだし、すぐにどうこうというわけにはいかないの」



 私、トリシア=カスタールはこの話を断った。



「私はあなたのことも大事だけど、それ以上に今はやらなきゃならないことが多いの、本当にごめんなさい」


「そうか、それでも僕は君が好きだ、君に振り向いてもらえるぐらいいい男になってみせるよ」



 そう言い残し部屋から彼は出て行った。


 その言葉とその寂しそうな表情が引っ掛かり、ふとした時に彼のことを考えてしまう。


 彼は本気だった。


 私は今まで仲間の一人だということしか認識していなかった。


 あの時、断りさえしなければ、という事も考え、気持ちが揺らいだ。



 こんな調子ではダメだとわかっているのに。

 この気持ちは幻想だ、まやかしだ。



 ーーーー

 ーー

 ー




【ガルド大陸東方、キルクの森中部】




「団長、これからどーするんですかぃ?」



 カルマンは切り株の上にガルディア都市内の地図を広げ、顎に手を当てて考えている。


 無事にガルディア都市から脱出した私たちは、その足で付近にあるキルクの森に一旦隠れることにした。

 キルクの森はガルディア都市のすぐ近くにある海辺のほうまで続く大きな森だ。


 今は日も落ち、松明を点けて今後の作戦を話している最中だったな。




「まずは、私達はこれから騎士団ではなく、レジスタンスとして活動する」



 大きく変わってしまった騎士団にもはや戻る意味もない。

 事の首謀者はアルバラン=シュタイン。


 奴がガルディアの権力を完全に握ったとみていいだろう。


 守るはずの私達、ブレインガーディアンは今日をもって解散だ。

 これからは奴が騎士団を取りまとめ、手足のように行動してくるはずだ。



「まず最初のレジスタンスとしての任務は、捕らえられた第1部隊の救出だ!」



 地図の上に地下牢の場所を書き込む。


 これはカナリアが苦しく辛い思いをして、託された地下牢の鍵だ。


 カナリアは先ほど合流し、詳細を話してくれた。

 カナリアの目元は赤く腫れており、今は疲労の為か眠りについている。


 アルフレア、君のことは絶対に忘れないよ、君の思いは、たしかに受け取った。



 カナリアは木に寄りかかるように寝ている、カナリアが冷えないようにカルマンは布を取り出しかけてあげていた。


 カルマンも強面の顔なのに随分と優しいじゃないか。


 思わず笑みが漏れる。



「なんだ?」


「いや、なんでもない」



 じろりと睨まれてしまったよ、まったく照れ屋なんだからな。



「それでだ、都市の中は奴の支配下にあるといってもいい、私達は目立つからな、見つかったらすぐに捕らえられてしまうだろう」



 そう、都市内は騎士が巡回している、場所がわかればたちまちアルバランの能力で瞬間移動してくるだろう。


 そうなれば今度こそ全滅だ。



 カルマンは頭を掻き、おおよその位置に配置されるであろう騎士の場所に小さな石を置いていく。



「普段の巡回で配置されるとしたらここだ」


「いや、アルバランのことだ人数ももっと増えているはずだ」



 さらに石を複数地図の上に置いていく。



「団長、これは無理じゃねぇか? 地下牢までの道はほとんど騎士がいる、これじゃあ近づけやしない」



 その配置から完全に見られないようにしていく道などなかった。


 だが私は知っている。



「そうだ、地上で辿り着くのは不可能だ」


「じゃあどうするんだ?」


「簡単なことだ、地下から行けばいい」



 カルマンは驚きの顔をしている、それもそのはずだ、これは私とその道を作った者しかわからないのだから。



「いつの間にそんな地下通路が」


「ふふ、知らなかったろう、なんせ、下水道だからな」



 ガルディア都市には地下に下水道が流れている、これはこの都市ができる前に私の姉が、異世界人の力を持った姉が、作った下水道なのだから。



「それの入り口はここから入れる」



 地図をたどり、城壁の横、東門のすぐ上のあたりに一つ、そして、このキヌアの森の深部に一つ。



「そんなとこから繋がってたのか」


「ええ、生活用水なんかはここを通り、キヌアの森まで運ばれ、ここで分解され森のエネルギーに変わる」


「すごい仕組みだな」



 カルマンは感嘆の声を漏らした。


 姉は都市の機能を作ったと言っても過言じゃない、それだけ天才的な人だった。


 技術は革命を起こし、発展していき、やがて姉はいつの間にか死んだ。



「昔の話だ、この下水道を使えば見つからず地下牢の付近の場所に出られる、そうだな、このあたりにたしか出られるはずだ」



 地図上の地下牢のすぐ脇の路地、そこは普段の巡回のルートには入っていない。



「なるほど… だがギガントの俺が通るにしてはサイズが無理そうだな、俺は何をしたらいい?」



「カルマンは別行動で、この森を抜けた先の村にキールが配属されている、彼をこちらに引き入れてもらえないか? まだ情報がそっちには伝わっていないはずだ」



 違う地図、ガルド大陸の地図をカバンから取り出し、広げる。


 カルマンに見せ、ここだと指を指す。


 レジスタンスを結成したのはいいが、まだここにいる3人しか人数はいない。



 圧倒的に人手が足りない、規模を拡大させるため人も増やしていかなければ…


 キールならば戦力も申し分なく、正義感のある男だ、きっと力になってくれるに違いない。



「わかった、じゃあ明日にでも向かってみるわ」


「頼む、救出には私とカナリアで向かう」


「わかった… わ」



 ふと聞こえたもう一つの声に振り向く。


「カナリア、まだ寝ていなくて大丈夫なのか?」


「ええ、 だいぶ回復はしたわ、それに…ただ寝ているわけにはいかないもの」



 そこには確固たる決意と意思があるような表情だ。


 だいぶお姉さんに似てきたんじゃないか…



「そうか、さっきも話した通り、救出はこのルートで行く、カルマンは別行動でこの村に」


「おう」


「わかったわ」


「決行は明日、日が昇り次第開始だ、それまでゆっくり休むことにしよう」



 カナリアも含め、疲労が溜まりに溜まっている。

 傷も回復魔法があるからといっても完全に治っているわけではない。


 カルマンなんかは大怪我であったほどだ、今は十分に体を休めないと。




次もトリシアの話になります。

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