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魔法力0の騎士  作者: 犬威
第2章 アルテア大陸
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一冊の絵本

アリアの話に戻ってきました!しばらくはアリアの話になります!

 

「君はこの世界が好きかい?」


 耳元でふと優しい声が(ささや)かれた気がした。



 ーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーー

 ーー



 気が付くと雨音はいつの間にか弱くなっていて、窓から見える空は相変わらずの曇天。

 だがどうやら既に朝になっているようだ。



「そうか、あの後寝てしまったんだな」



 扉の前に座るようにして眠っていたので所々節々(ふしぶし)が痛んだが、十分な睡眠はとれたみたいだ。



「寒いな…」



 肌寒さを感じ、よく目を凝らすと暖炉の火が既に消えかかっていた。


 私も魔法が使えていれば暖炉に火をともすこともできたのだが……



 こんなことを思うのは小さい頃から変わらない。

 今や魔法の力無しでは生活ができないように、当たり前のように魔法は生活の一部となっている。

 こういった暖炉や調理器具なんかは全て魔法を前提として作られている。


『魔法が使えない人』用、なんてものはそもそも存在していないのだ。



 無いものは無い。



(魔法が使えない)私にとってこの世界で生きていくためには、どうしても他の人の力を借りなければならない。



 もう慣れすぎてしまっているからな…



 体を起こし、次元収納から着替えを引っ張り出す。



 ほんとにターナーさんが作った物には助けられてばかりだな…



 この次元収納も手荷物を減らしたいと頼んだからできた物だ。

 作り主がいなくなってもこの武器やマジックアイテムは無くなったりしない。

 そうやってターナーさんもお爺さんが作ったマジックアイテムを何個か持っていた。


 形に残る。その人の思い出に残る。それは作り手にはかけがえのないものだとターナーさんが以前教えてくれた。



 ほんとに貰ってばかりだったな…

 あー、一人で考え込むと感傷的になってしまっていけないな。



 引っ張り出した服に着替えながら、昨日の事を思い出す。


 あの後少しシェリアと話をして、ソファーをシェリアに譲り、疲れもあったので早めに休むことになったんだったな…


 昨日の夜はあんなに豪雨だったが、窓を見ると今は雨も落ち着いていて、今日なら色々と歩き回れそうだ。


 ちらりとシェリアの方を見るとまだ寝ているらしく、上にかけてあったであろう布が落ちてしまっていた。



 シェリアが風邪を引いてしまわないように落ちていた布を拾い、再びシェリアにかける。



「ん… むぅ…」



 シェリアは身じろぎし、可愛らしい寝息を漏らす。



 疲れているもんな、まだ寝かせておこう…



 離れようと動くと、くいっと服を引っ張られる。



「…!?!」


「…布と間違って私の服を掴まれると私も動けないんだがなぁ…」



 シェリアが寝ぼけていたのだろう私の服の裾を掴み、離そうとしない。



 起こすのもアレだしな…

 仕方ない…な…



 シェリアが寝ているソファーに、寄りかかる形で私も座りなおす。

 これなら起こしてびっくりさせる心配もないだろう。


 ふと昨日シェリアが読んで懐かしがっていた一冊の絵本が、テーブルの上に置いてあるのが目についた。


 手に取り、表紙を眺めると可愛らしい白いクマのようなケモッテ(獣人)とお姫様のような恰好をしたアンバー(鳥類人)が仲良く花冠を付け合っている。

 絵本のタイトルは可愛らしい文字で『アルテア物語』と書かれていた。


 表紙をめくり、絵本を開いてみる。


 ーーーーーー



『アルテア物語』



 むかし、むかし、とある村に一人の白いクマのじゅうじんが生まれました。

 ちちおやも、ははおやも茶色いかみ色をしているのに、その子だけ真っ白なかみ色でした。


 ちちおやも、ははおやも悲しみ、しゅういの人たちからは、いかりや、きょうふの目でその子を見ていました。



「この子はきっとこの村にわざわいをもたらす」


「なんでこんな子が生まれた」


「そんな子供すててしまえ」



 まわりからのことばはどれも喜ばしいものではありませんでした。

 それもそのはずです。

 村には白いかみのひとは一人もいないのです。



 ちちおやは村を出ることをやくそくし、かぞく3人は村から出て、旅をすることになりました。


 ちちおやはひっしにはたらいてその日のお金をかせぎ、ははおやは真っ白なわが子をまもるためにいつもいっしょにいました。


 そんな生活が7年つづきました。

 生活はいっこうに楽になるけはいはなく、まずしいものでした。


 7さいになった白いクマの子は、ある日ははおやにききました。



「なんで毎日いどうしなきゃならないの?」


「あなたが白いからよ」



 ははおやのかおは日に日にやつれていて、そのひょうじょうはつめたいものでした。



「なんで白いといどうしなきゃいけないの?」


「白いとみんなこわいのよ」


「どうして?」


「ふつうじゃないからよ」



 それでも白いクマの子はははおやにききました。



「ふつうじゃないとみんないじめてくるの?」


「そうよ、みんな… こわいから」


「じゃあなんでわたしはふつうにうまれなかったの?」



 そのことばをきいたははおやは、白いクマの子のほほをなんどもはたきました。



「いたい、やめてよ」



 それでもははおやはぶつのをやめません。

 ははおやはもうずいぶんまえから、こころがよわっていたのです。

 げんかいだったのです。


 なきながらははおやからにげたクマの子は、ひとり森のなかでうずくまっていました。



「どうしたの?なんで泣いてるの?」



 そこに一人のアンバーの女の子が泣いているクマの子のそばに歩いてきました。



「こないで、あなたまできらわれちゃう」



 白いクマの子はしっていました。

 ははおやや、ちちおやがいじめられるのはじぶんがいるせいだと。



「きらわれる? どうして?」


「わたしはふつうのかみじゃない!」



 この子はそんなわたしも気にかけてくれるやさしい子なのです。

 そんな子がいじめられてしまうのはなきたくなるくらい、白いクマの子はいやだったのです。



「こんなにきれいな色をしてるのにどうして? わたしはきみのかみ、すきだよ!」



 はじめてでした。

 おそれられ、いやな目をむける人たちもいましたが、そんなことばをかけてくる子はいままでいなかったのです。

 ははおやにも、ちちおやにも、言われたことなどなかったのです。



「きみの名前は?」



 名前、そこで白いクマの子はじぶんに名前がないことに気づきました。

 当たり前のようによばれる名前、この白いクマの子は名前すらつけてもらえなかったのです。



「名前… ない…」


「なら、わたしがつけてあげる!」



 まぶしい笑顔でアンバーの少女は言います。



「キレイな白いかみだから、『シロ』、どうかな?」



 しろいのはみんなきらいます。

 白いクマの子も白がきらいでした。


 でも、そのアンバーの少女は違いました。

 しろいかみがすきだと言ってくれます。


 白いクマの子はすこしだけ、白もすきになれそうでした。



「…うん」


「きまりだね!今日からきみの名前は『シロ』だよ!」



 白いクマの子は、むねにあたたかいものが広がる気がしたのです。

 いままで感じなかった、ぬくもりを白いクマ『シロ』は感じました。



「これはきみの名前のおいわい!」



 アンバーの少女は手に持っていた色とりどりの花をつかったおうかんを、シロにかぶせました。



「あげる!わたしの名前は『フィー』。これからよろしくね!シロ!」



 白いクマのシロはとてもよろこびました。

 なぜなら、はじめて友達ができたからです。



「うん!ありがと… フィー!あ!ちょっと待って」



 シロはしゃがみ込み、さいている花をつんで花かんむりをつくると、フィーの頭にのせてあげました。



「これはフィーのぶん、友達のしるし」



 フィーもよろこび、二人は笑顔で笑いあいました。



「それじゃあシロの家までいっしょにいこうか」


「うん …おかあさんまだおこっていないかな?」


「だいじょうぶ、あたしがそばにいてあげるよ」


「ありがと!」



 二人は手をつないで、シロがいた村までもどることになりました。


 村につくとあいかわらずまわりの人たちからはいやな目をむけられます。



「いやだねぇ またもどってきたよ」


「あの子もかわいそうに」



 そんなひどいことばもあちらこちらから聞こえてきます。


 そのたびに白いクマのシロは悲しいきもちになっていきます。

 シロはつないでいた手をふりほどき、かなしい顔でフィーに話しかけます。



「フィーもわるく言われちゃうから、わたしが一人でいくよ」



 白いクマの子はなれていました。

 それでもわたしよりフィーがわるく言われるのだけはつらかったのです。


 するとフィーはシロの手をふたたびつよいちからでにぎります。



「シロはなにもわるくないじゃない!!」



 フィーはおこった顔であたりをみわたします。



「この子がいったい何をしたって言うのよ!!!」



 フィーはしゅういの人たちに向かってさけびました。



「あなたたちがきらうこの子は、いったいあなたたちに何をしたというのよ!!!」



 フィーはどうどうとしていて、しゅういの人たちにむかっておこりました。

 しゅういの人たちはさらにいやな顔をフィーにむけると、それぞれの家に帰っていきました。



「どうしてこんな人たちばっかり…」



 フィーはため息をつき、ふたたび力強い足取りで、歩き出しました。


 最初は驚いていたシロでしたが、つないでいたうでをひっぱられ、またフィーといっしょに歩き出します。


 しばらく歩くとシロの住んでいる家につきました。


 きんちょうした顔で入るのをためらっていると横からフィーが笑いかけます。



「だいじょうぶ、わたしがついてるよ」



 それは何よりも心強いことばでした。



「ありがとう」



 扉に手をかけ、中に入るとシロはことばをうしないました。


 そこには住んでいた荷物も、ははおやもいなかったのです。

 シロをのこしてははおやも、ちちおやもどこかへ行ってしまったのです。


 シロは泣きました。


 声を上げて泣きました。


 それでもははおやとちちおやは、かえってくることはありません。


 となりにいたフィーはいかりをあらわにして言います。



「あなたは何もわるくない!!!わるいのはこの世界だよ!!」



 にぎった手をはなさないようにシロの顔をしっかり見て話します。



「わたしの家に行こう、シロ」


「でも、きっとめいわくになるよ」


「そんなことない!!シロはめいわくなんかじゃないよ!!」



 いつのまにかフィーも泣いていました。



「どうして、フィーが泣いているの?」



 シロはふしぎでした。

 なぜ、フィーはこんなにもわたしのことでおこったり、泣いたりしてくれるのだろうと。



「友達だから、悲しいのよ、なんとかしてあげたいのよ!」



 友達。


 そのことばがシロの冷え切っていた心をあたためてくれました。



「きめたわ!わたしがこの世界を変えてあげる!」


「むりだよ… フィーがそんなことできないよ…」



 フィーはなみだを手でふくと、どうどうとした声で言いました。



「できるわ!わたしはこの国の王女なんだから!!」



 フィーはシロの手をとり、王城へと……


 ーーーーーーーーーー



「その本、あまり人気がないんですよ」



 突然後ろから声をかけられ、めくっていた手が止まる。



「すまない、シェリア、起こしてしまったか?」


「いえ、そろそろ起きなきゃいけなかったので、それにしても驚きましたよ、アリア様が起きたら横にいるなんて…」


「あー… それはシェリアがかけてある布と間違えて、私の服を掴んでいて動けなかったんだよ」


「な!? す、すみません!!」



 ペコっと勢いよく頭を下げるシェリアに思わず笑みが漏れる。



「大丈夫だよ、この絵本そんなに人気がないのかい?」



 シェリアは急いで髪を整えて答える。



「絵本には似合わない話が多いですからね、私はすごく好きなんですけど、なんでも実話を絵本にした話らしく、このアルテア大陸と呼ばれるようになった話らしいので」



 差別や親が子を捨てる話とかたしかに絵本向きにしては売れないのもわかる気がするな。


 差別か…


 昔はセレスにも似たような事があったな…




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