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魔法力0の騎士  作者: 犬威
第1章 ガルディア都市
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それぞれの成長

更新です(^◇^)

 魔力切れを起こしたシェリアをベッドに運ぶとターナーさんは棚から魔力回復薬を持ってきてくれた。



「ありがとう、ターナーさん」


「あまり作っていなかったから数はないけどね、持っていてよかったよ」



 この世界での魔力切れは早めに処置をしないと昏睡状態に陥ってしまうほど危険なものだ。 大半の人は魔力を扱う際自分の許容範囲や限界を十分に習っていて、魔力切れを起こさないように行動する。



「魔力切れになるまで無茶をするなんて……」



 シェリアの顔は青ざめていてとても辛そうだった。 私は魔力自体が無いので魔力切れに(おちい)ったことはない、この辛さを分かってあげることはできないでいた。



「それだけシェリアちゃんは本気だったんです。 はい、アリアさん飲ませてあげてください」


「ああ」



 シェリアの上体を起こし、口元に魔力回復薬を持ってくる。



「シェリア、今は辛いかもしれないがこれを飲めば多少はよくなるはずだ」


「は、はい、ありがとう…… ございます……」



 弱弱しい手つきでシェリアは受け取るとこくこくとゆっくり飲み始めた。



「あとはゆっくり休んでおけば明日には魔力も戻るからな」


「はい……」



 シェリアはぽすんと後ろに倒れ、そのまま静かに眠りについた。

 よほど不安だったのだろうシェリアの手は私の服の(すそ)を掴んで寝ていた。

 顔色もさっきよりもよくなってきていて安堵のため息が出る。



「どうやらちゃんと魔力回復薬が効いてくれたみたいだね」



 市販で売られている魔力回復薬はとても高価でなかなか買えたりはしない、さらにこの魔力回復薬はターナーさんのオリジナルであり、ターナーさん自身の魔力を貯めていた物だ。

 そんな貴重なものを使ってもらい本当に申し訳ない……



「すまない、私がちゃんと気づいて止めていれば魔力切れを起こさずにすんだのに」


「いいんだ気にしないで、シェリアちゃんが頑張っているんだ、僕もその熱意に負けた一人でね、ちょっとしたお手伝いだよ」


「ターナーさんも私と同じだったのですね」


「ああ、シェリアちゃんにも家族がいるんだ、僕も頑張ってシェリアちゃんを故郷に帰すマジックアイテムを完成させないと」



 ターナーさんは優しい目をしてシェリアを見つめていた、まるで妹をみるかのような……

 そうか、ターナーさんには妹がいたんだったな…… そしてあの事件で……

 今のシェリアはターナーさんから見て妹の面影を感じるのだろう……



「そろそろ私は帰るとするよ、また明日も終わったらくるからシェリアをよろしく頼むよ」


「よろしく頼まれました、シェリアちゃんのことは心配しないで、明日も来るとなるとシェリアちゃんも喜ぶと思うから」


「じゃあおやすみ、ターナーさん」


「おやすみなさい、アリアさん」



 寝ているシェリアに目を向けるとさっきまでの苦痛に歪んだ寝顔ではなく今は穏やかに眠っていた。

 外に出ると辺りは街灯の灯しかともっておらず、パラパラと雨が降ってきていた。


 本降りになられる前に帰らないとな、それにしてももうこんな時間か、半日以上模擬戦を繰り返していたのか、私ももう少しシェリアに優しくしないとダメだな。

 つい熱くなってしまうと時間を忘れがちになってしまう。そんなことを反省しながらアリアは帰路につくのであった。



 それから四週間という日数が過ぎ、騎士団の中で任務を毎日こなす中、この間の召喚士の情報とターナーさんの事件の事を調べていたり、毎日シェリアに武器の扱いを教えて過ごしていた。



 情報のほうは、なかなか真相にたどり着くことができず難航していた。


 特にターナーさんの事件のほうはすでに一年前の事件のこともあってか残っている情報も極めて少なく、あったとしても私が知っている情報しか無かった。

 どこかで情報が握りつぶされている可能性が高い。 不自然に抜け落ちている箇所があり、この騎士団で管理しているデータベースもすでに操作された後だった。

 いったい誰が黒幕なんだ…… 私が頭を悩ませ考えていると不意にデータを管理している部屋のドアが開けられた。



「呆れた、昼も食べないでこんなとこで調べものかしら?」



 そう声をかけてきたのはいつもの黒いドレスに身を包んだピンクの髪のツインテールのエルフ、カナリア=ファンネル だった。



「なんだ、カナリアか……」



 カナリアはドアを閉めると私のほうにツカツカと歩いてくる。



「アリア、昨日もそうやって昼を抜いたでしょ、ちゃんと食べないとほら、これ」



 カナリアは持っていたバックの中からサンドイッチを出して手渡してきた。



「あ、ああ、ありがとなカナリア」


「焦る気持ちはわからなくないけど、目立ちすぎるのもよくないわよ」


「目立っているのか? 私が」


「そんなにしょっちゅうここに出入りしてたら怪しく見えるわ」


「そうか…… あまり見られていないと思ったんだが」



 貰ったサンドイッチを一口食べる。 これはツナサンドだな、しっかりとしたツナの旨みが口の中に広がる。



「騎士団内も今は安全とは言えないのだから慎重すぎるくらいのほうがいいのよ」


「そうか…… そういえばカナリアは昼食べなくていいのか?」


「私はさっき食べたからもういいのよ、それよりやはりデータベースにもトロンは見つからない?」


「ああ、ダメだなどこにもそれらしき情報は見ていない、オクムラもあの後は見ていないと言っていたからな」


「オクムラ…… ね、アリアこれは忠告なんだけどあまりあの勇者を信用しちゃダメよ」


「そうか」


「ええ、うまくはいえないけどあの勇者心に闇を抱えているわ」


「カナリアは魔力の流れが見えるんだったな、そういう感じには彼は見えなかった」



 カナリアは魔法を扱う上ではセレスと並ぶほどの天才に近い、なんでも薄っすらとその人の持つ魔力の色と流れが見えるらしい。そんなカナリアだからこそその人の心の感情を読み取ることに長けている。



「とりあえず今はなんともないけど注意はしておいたほうがいいわ、最後にトロンを含む第四部隊を見たのもあの勇者だけというのも引っかかる、私の予想だとトロンは勇者に殺された可能性が高いわ」


「パトラが最近隠そうとはしているみたいだが、どうやら五属性を使えそうな感じを出していた。任務で魔法を放つ途中で元々自分が使っていた魔法に変えたが、あの魔法を構築する際の兆候はトロンと同じような感じだった。 トロンも自分の能力は遺伝だと前に言っていたからおそらくトロンが死んでパトラに引き継がれたのだろう」


「……よく見てるわね」


「ああ、私は魔法がまったく使えないからな、その対策のためにそういった魔法の知識や兆候などはよく見るようにしてるんだよ」



 カナリアが驚いた顔でこちらを見る。 私は魔法が使えない、だが誰よりも魔法の知識を頭に叩き込み、それを想定した修業を行ってきた。 ハンデは大きかったが戦えないわけじゃない魔法がなくてもこの覚えた知識と経験は私の(かて)となっている。



「あなたの強さの理由の一つが知れたわ、でも過信しすぎるのもよくないわ」


「ああ、それもわかってる」



 この間戦った黒いフルプレートの男はいい例だろう、まだまだ自分の腕が足りないことを痛感させられた。 魔法がない分他よりも努力しないといけないのに…… いまでは教える立場にもなった。 だがこのままではいけないのはわかっている。

 カナリアは手元にある資料を眺めながら考え込んでいる。



「カナリア、このあと少し時間があるか?」


「え? まあ一時間くらいしか空けられる時間はないけども…… アリアは午後からの任務はないの?」


「私の隊は今日は午後は非番になっている、では一時間だけ少し付き合ってくれないか?」


「何をするつもりなの?」


「ちょっと魔法を避ける訓練をしたい」


「なるほどね、手伝うわ、トロンのような犠牲はもう出したくないから」


「助かるよ」



 カナリアと私はそのまま闘技場まで歩いて行った。



 ちょうどお昼頃ということもあり闘技場には数人しか残ってはいなかった、これなら安全に他の人を巻き込まずに済む。



「とりあえずルールは一時間アリアは攻撃はせず常に避けることだけ、終了条件は私の魔力がギリギリになって私が降参するか私に触れるかアリアが気絶するかでいいかしら?」


「ああ、それで頼む」


「わかったわ、でもちょっとこれは飲ませてちょうだい」


「ああ」



 カナリアはポケットから青い瓶を取り出し中の液体を飲んだ。おそらく魔力を底上げする薬であろう。

 カナリアに魔力が満ちるのがわかる……

 私の格好はいつもの騎士鎧姿だ、これは実践を想定しているのでカナリアにも本気になってもらう必要がある。

 カナリアはいつもの黒いドレス姿のままだ、だがあの姿でもカナリアは機敏に動けるのを知っている。



「準備は整ったわ、そろそろ始めましょうか」



 カナリアの目が本気になる。 あたりの空気の流れが変わっていくのを感じる。 このコインが地面に落ちたら開始の合図だ。私とカナリアの距離はざっと百m。 そこからでもコインがちゃんと見えるんだからカナリアの視力は恐ろしいな。

 私はコインを取り出し上に向かってコインをピンと弾く。



 コインが地面に付くと同時にその場から飛びのいた。



「クエイク」



 さっきまでいた位置に無数の土属性の鋭利な槍が地面から飛び出す。 動き出すのが一歩でも遅れたら体を貫かれていただろう。

 転がると同時に素早く身を起こし、駆けようと踏み出そうとするがすでに目前まで魔法が迫っていた。



「サンガー」



 無数の雷が音速で飛び交う。



「くっ!!」



 なんとか体をひねることで攻撃を(かわ)すが、わずかに腕に(かす)った。 焼けるような痛みが走るがそんなことを考える暇などない、すぐさま飛びのき回避に移る。



「クエイク」



 足を止めたらその速いクエイクに捕まる、なんとか回避に成功するとすぐに身を低くしながら前へ走る。



「アイスニードル」



 行く手を(さえぎ)るかのように無数の氷の氷柱が私の進行方向に降り注ぐ、さすがブレインガーディアンきっての魔法の腕だ、近づけないようにするのはお手の物か。

 進行方向を防がれ、回り込むしかなくなった。



「グランドウォール」



 私の周囲五mを囲むように地面から鋼鉄の(おり)が私をとらえようと上に伸びていく。 あれに捕まってはまずい、地面を蹴り唯一空いている上に向かって跳躍(ちょうやく)する。 まだ閉じるまでには時間がある。



「グラビティ」



「ぐぅううう!」



 全身に物凄い重力が掛かる、届きそうだった檻は閉められ、重力に逆らえない私は下に落ちるしかなくなった。



「クエイク」



 地面から無数の槍が私を貫こうと飛び出してくる。本当は武器を使いたくなかったがそんなこと言える相手じゃないな。

 次元収納からシルバーの色をしている大きめのハンマーを取り出し、貫かんとしている槍に振りかぶり、思い切り叩きつける。

 激しい火花が飛び散り、手に伝わる衝撃がその威力を物語る 。カナリアが出したクエイクは私のハンマーによって粉々に砕け散った。


 すぐに次元収納に終い、剣を次元収納から取り出すと覆われている鋼鉄を切り裂いて脱出した。



「さすがね、でもようやく武器を取り出したわね」


「さすがに武器なしは無理だったよ」


「まあ実践なのだから武器は使っても問題はないわ」


「ありがとう」


「むしろ武器も無しにあれだけ避けられたのはちょっと私のプライドが傷ついたけど」


「はは、カナリアだって結構致命傷になるような攻撃ばかりでギリギリだったんだぞ」


「あら、それは嬉しいわ、これでも少し(おさ)えていたのよ」


「なん…… だと……」



 額から冷汗が流れる、今のが全力じゃなかったのか……



「そろそろ再開しましょうか……グラビティ、クエイク」



「ぐっ!?」



 威力がさっきまでの比じゃない、そして二重魔法だこれは避けれない。

 大急ぎで次元収納から大楯を下に展開する。 直後物凄い衝撃が下から襲い掛かってきた。

 なんとか直撃は(まぬが)れたが、空中に突き上げられ、これでは的もいいところだ。



「サンガー」



 無数の雷が飛来する、次元収納からチェーンアームを取り出し付近にある氷柱に向けて発射する。 発射された鎖は氷柱に突き刺さると巻き取り式でアリアを氷柱のほうへ移動させた。



「ぐぁあああ!!」



 だがそれでも全ての雷から避けることはできず、肩や足を雷で貫かれた。



「便利な武器ね、初めて見たわ」



 このチェーンアームはターナーさんのオリジナルで考えた武器だ、鎖を発射し、巻取り式で移動したり、引き寄せたりできる。



「でももういいんじゃない? アリア結構ボロボロよ」


「まだ動ける続けてくれ」


「っつ!? 私もあまり加減は得意じゃないのだけど、それ以上は危ないわよ」


「これぐらい、慣れている」


「呆れた、とんだ戦闘狂ね、私もあまり多く魔力は残っていないし、次あたりで本気で決めるわよ」


「……ああ」


「アイスニードル、フレア」



 行く手をさえぎるかのように氷柱が突き刺さり、火柱がその間を()うように(せま)る。 普通は相性の悪い技同士は使わないのが鉄則だがカナリアは魔法のコントロールに優れているためこのような無茶苦茶な攻め方ができる。

 次元収納から槍を取り出し狙いを定める。 狙いは一つあの氷柱だ。



「うらぁあああああああああ!!!」



 全力で投擲(とうてき)した槍は氷柱を貫通し大きく穴を開けた。 そのまま槍は奥の壁に突き刺さる。

 道ができたそこを地を全力で踏みしめ駆け抜ける、地面は()ぜ、さっきまでの距離を一気に詰める。



「ひくっ!? サンガー!!」



 目前に迫ったアリアに驚き、びくりとしたカナリアだったが、迎撃の雷を放っていた。

 アリアは自分に突き刺さる雷を気にした風もなく突き進む。



「なっ!? ひゃう!?」



 驚いたカナリアは下がろうとして体制を崩してしまう。



「っと、大丈夫か、カナリア」



 アリアが倒れそうになったカナリアをお姫様抱っこの要領で抱いていた。



「だ、大丈夫かじゃ、ない、アリアのほうがボロボロな癖に、あんな戦い方無茶苦茶よ」


「それでも勝たなきゃならないときはあるんだよ」


「わ、私一人にそんな感じだと、戦場で連戦のときとかやられかねないわよ」


「その時はカナリアが助けてくれるだろ? 私は一人じゃないからな」


「ふ、ふん、あ、あまり無茶をしないでって言ってるの」



 カナリアはぷいっと顔をそらし私の腕から降りた。



「回復してあげるからそれが終わったら私は仕事に戻るわ」


「ありがとう、助かるよ」


「ヒール」



 全身の傷が癒えていくのがわかる、さすが医療部隊である第六部隊の隊長だな。



「終わったわ、それじゃ」


「ああ、付き合ってくれてありがとなカナリア」


「ええ」



 てくてくと歩いていくカナリアを見送り、私は大の字に寝転ぶ。



「ふぅーさすがに疲れたなぁ」



 今後の課題と問題点を考えながらアリアは少し眠るのであった。



そろそろ仕事にいかないと!

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