アクシデント
夜中にもう一話書こうと思っています
やけに周囲が騒がしい気がする。
だが…… 何を話しているのか耳を澄ましていてもわからない……
視界はなぜ暗いままなのだろう、そっと目を開けてみる。
いつもと違う景色、ここは村? だろうか…… どうやら私は知らない村に一人立ち尽くしているようだ。
意識ははっきりしているようなぼやけているような曖昧な感覚がある。
時間はどうやら夕方頃、日が傾いてきているのか村に差す日の光はオレンジ色に染まっていた。
周囲を確認する。 昔ながらの村のようで畑を耕すための農具や、水車があり、家畜なども小屋の中にいるのが見受けられる。
すると道行く人がいるのに気づく、思わず私はここがどこなのかを聞くためにその村人に近寄った。
近づくにつれてその村人はそれなりに大きい人なんだと気づく、
『すみません、ここはいったいどこでしょうか?』
すると村人の男は話を無視して歩き出してしまった。
『ちょ!? あの! すみません!』
手を伸ばし声を張り上げるが男には聞こえていないのか振り返ることもない。
その時に自分の違和感に気付いた。 どうやら自分の声がでていないようだ。
「……」
『なんだこれは……』
咽元を触り、なぜ声が出ないのか原因を探す。するとすぐに後ろのほうですごく大きな爆発音が響く。
慌てて私は振り返り、その大きな音のしたほうへ走って向かう。
私がその爆発音の現場に赴くと、そこには武装した人たちが人だかりを作り、なにやら揉めているようだ。
「****、*****!!!!」
「***、*****!?」
話している内容を澄まして聞いているが全く何を喋っているのか理解できなかった。
すると人混みから私を見つけた武装した男が焦った表情で私の元に駆け寄り、腕を取ると強引に人混みから離れるように走れと促される。
「*****!!」
無理矢理腕を引っ張られ私も走らなくてはいけない状態になった。
武装した私の手を引く男はどうやらあの爆発のあった場所に近づけさせないようにというものだったらしい。
後ろを振り返りまだ人混みで揉めている現場を眺めながら走っていると、突然その人混みの中から鮮血が飛び散った。
悲鳴が上がり、人混みの中から一人また一人と倒れるものが後をたたない。
私は男の手を引き、後ろで起きている事を伝えようとしたが、男は目もくれずただ何か言葉を発し悲しみと怒りを含んだ表情をしてそのまま走り続けた。
一体ここはどこで、何が起きているんだ。状況がいまだ呑み込めずにいる私はただ黙って男に手を引かれ走っているのであった。
するといつの間にか周りの家々に火がついてるのが見えた。
「***!!******!!!」
さっきまでは火なんて全然なかったはずなのにどうして……
男も同じことを思ったのだろう言葉はわからなくともその表情は恐怖と焦りに彩られていた。
大きな爆発音が響き、私が走っている横の家が破壊していく。
思わず私も私の手を引く男もよろけてしまう。
「***!!*****!?」
転んだ私を抱きかかえ、男は再び遠くへ行くために走り出す。
抱きかかえる? 私の体は縮んでしまっているのだろうか? どうにもさっきから体の調子もおかしいし目線もずいぶん低い。 そして今私は男に抱えられながら辺りを見渡している。
村はいたるところで炎が上がり、家はどんどん壊されていく、人々もさっきの爆発した場所から逃げるように大勢移動していた。
まさか…… これは……
すると不意に男から地面に降ろされた。
「***!******!*********!!!」
さっきから顔を見てはいるのだが、表情はわかるのに頭の中が霧がかかっているように顔の印象が全く頭に入ってこない。
今もその男の表情は悲しい顔をしている。
「********」
私と同じ高さにしゃがみ頭を撫で、何か言葉を発する。
「***、*******!!」
男は何かを話した後すくっと立ち上がり、人々が逃げる逆方向、つまり爆発があったほうに走っていった。
私は必死に腕を伸ばすが、その手は空をきり男に届くことはなかった。
『待ってくれ!!!』
「……」
すると視界一面に眩い光が包み、思わず目をそらし、目を瞑る。
■ ■ ■ ■
再び目を開けるとそこはさっきまでの知らない村ではなく、よく見慣れた私の住んでいる屋敷の天井が目に入った。
「夢…… か……」
どうやら屋敷に帰ってきた私は睡魔に耐え切れず屋敷の入り口にある来賓用のソファーの上で寝ていたようだ。
どうにもソファーで寝たせいか体が痛い。 身を起こすとはらりと私にかけられていた布が落ちる。
これは多分ソファーで寝ている私を見かねたフリーシアさんが掛けてくれたのだろう。
くっと伸びをひとつして、自分の格好を改めて見る、昨日のままの格好でわずかに体がべたつく。
「さすがに風呂に入るか……」
ソファーから降り、カーテンがかけられている窓を開ける。
時刻はどうやら昼前のようで日がさんさんと照らしている。
「もうこんな時間なのか……」
屋敷の中はがらんと静まり返っていてどうやら大半の人が出かけているようだった。
重い足取りで脱衣所まで歩き始める。
■ ■ ■ ■
脱衣所に入り、服を脱ぎ始める。 昨日の戦いで返り血などが付着した服はすでに乾いていて洗っても落ちそうにない。
「この服は捨てるか……」
着替えはフリーシアさんがあらかじめ用意していたのだろうちゃんと棚に入っている。
私は着ていた服をゴミ箱に捨て、浴槽へと向かう。
「あっ! お待ちしていましたよアリア様」
「なっ!? なんでフリーシアさんが中に!?」
浴槽のドアを開け放つと、バスタオルを巻いただけのあられもない姿のフリーシアさんがすでにシャワーの前に準備万端の待機状態でいた。
ちなみに私は全裸だ。
もう一度言おう、全裸だ。
思わず股間を手で隠し、ドアを勢いよく閉める。
「あ! アリア様、気にしなくても大丈夫ですよ! これもメイドの務めですから」
「私が気にする!!!!」
ドア越しにフリーシアさんが話しかけてくるがそういう問題でもないのだ。 私も健全な男性である以上そういうのはこう…… なんていうか…… わかるだろう!!
「いまさら何を恥ずかしがってるんですか! もうっアリア様は純情ですねー、そんなものアリア様が小さいころから見慣れてますのに、ささ! お早く!! 風邪を引いてしまいますよ私が!!」
そんなものて、そんな…… はっ!? い…… いかん何を考えてるんだ私は、しかし私が入らないとフリーシアさんはあのままで居続けるだろう。 しかしフリーシアさんの頑固さはこういう時ほんとに困るな……
一度言ったら聞かない頑固さを持つそれがフリーシアという女性であった。
「ちょ…… ちょっと待ってくれないか」
「はーい」
慌てて脱衣所に置いてあったタオルを取り急いで腰に巻く。 よし、これで見えない。
いざ戦場となる浴槽へ再びアリアは赴いた。
「まったくもう! 逃げなくたっていいじゃないですか」
「ああ…… すまない……」
……これは私が悪いのか?
ぷぅと頬を膨らまし、すこし怒ったフリーシアさんであったが少しは私の気持ちも考えてほしいものだ。
フリーシアさんは大きめのバスタオルだけを巻いた姿でしゃがみ込んでいてその零れ落ちそうな胸や見えそうな体が完全に目の毒である。
思わずみないようにあさってのほうを向き話してしまう。
「ここ、座ってください」
「ああ」
差し出された浴槽の椅子に座り、フリーシアさんとは反対方向を向く。
「おとなしくしてくださいよー洗いますからね!」
「それにしてもなんでフリーシアさんまで…… その…… バスタオル姿なんですか? いつものメイド服は」
「濡れたら嫌だからに決まってるからじゃないですか! あ! ちなみにバスタオルの中は水着じゃなくて全裸ですよ? 嬉しいですか?」
一気に顔が熱くなる、何を言ってるんだフリーシアさんは!!
フリーシアさんはニヤニヤと笑みを浮かべこちらをのぞき込んでくる。
「だからといって変なことはしないようにしてくださいよ~」
「し…… しないわ!!!」
クスクスと無邪気に笑うフリーシアさん、私はというと顔から火が出そうな勢いだ。
いままではこのような事態を避けるべくフリーシアさんが居ない時間帯に早めに済ませていたというのに今日に限って失念していた。
「それじゃ洗っていきますね! 昔は一緒に入ったのに最近全然なんですもん一生懸命洗わせていただきます!」
そりゃあそうだろう…… 私ももう大人と呼ばれる身、いつまでも子供ではなく、自分の体くらい自分で洗える。 フリーシアさんはその辺は恥じらいというものはないのだろうか……
「セレス達はもう出て行ったのか?」
「はい、玄関先で寝ているアリア様を見て心配そうにしていましたよ、なぜあそこで寝ていらしたのですか?」
「そうか…… 突然眠気が襲ってきて部屋までたどり着けなかったんだ。 よほど疲れが溜まっていたんだと思う」
「あまり無理をなさらないように…… 最近はミラ様も体調がすぐれないらしく部屋から出てこない日が続いています」
「それは心配だな…… 食事とかは取られているのだろうか?」
「それは問題ありません、毎回私が部屋に入り食事を届けているので、食欲はあるんですよね昨日なんかは魚料理が美味しすぎて自分で取りに行きたいと騒いでおりました。 まあいつものごとく鎮圧させましたが」
「そ…… そうか」
セレスの母親であるミラ様はとても好奇心旺盛なお方だ。想像できてしまう。
「ささ! 次は前を向いてください! ちょっと洗いにくいので」
「ま…… 前は自分でやるから!!」
フリーシアさんの手から泡立つスポンジを奪い取る。
「あっ! もう気にしなくていいっていったのに」
「これだけは譲れません」
むぅと拗ねたフリーシアさんはそのまま背中越しに語り掛けてきた。
「……最近ね、都市の中も屋敷でも忙しそうにしてるし、昔に比べてアリア様達と接する機会が少なくて寂しかったんですよ。 あの頃はいつでも一緒でしたし、いまでもこの暮らしが充実してるといえます。ですがもっと私はアリア様やセレス様に関わっていきたいのです。 その成長を見守っていきたいのです。よりその身近にいて世話を焼いていたいんですよ」
「フリーシアさん……」
「なんたって私はあなたたちの教育係ですからね、それはいつまでも変わりませんよ」
振り返るとにこりと朗らかに笑うフリーシアさんにどきりとさせられた。
「さ、早く流して湯船に入ってきてください、私は次の仕事が残ってますからね先に出ていますよ」
すくっと立ち上がったフリーシアさんは脱衣所を目指し歩こうとした。
「ひゃ!?」
「なっ!?」
立ち上がった拍子に巻いていたバスタオルが剥がれ落ち、その見事なプロポーションが露になる。
褐色の艶やかな肌にはち切れそうだった胸は自由を得て目前を彷徨う、細いくびれと無駄のない脚はまるで一種の芸術であるかのようだった。 そうこれは芸術だ!
な、何を思ってるんだ私は!?
フリーシアさんはすぐさまバスタオルを拾い上げ、ぐるぐると巻く、その顔は耳まで真っ赤になっており、人差し指を立てて早口で言い放つ。
「さ、サ、サービス、そ、それじゃ」
足早に脱衣所に走って向かい大きな音を立ててドアが閉められる。
泡を洗い流し、湯船に入る。 悶々とした感情を抑えるため、長く湯船に浸かるのであった。
そんなこといったってしょうがないじゃないか




