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魔法力0の騎士  作者: 犬威
第五章 大陸戦争
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波乱

 

「うちらにとっては故郷なんだが、話してくれるかい?」



 フェニールさんはすっと鋭い視線をマクミランさんへと送る。



「隠し立てするつもりはありませんでした。 フェニール様の言う通り、次の戦いで戦場となるのは間違いなくアルテア大陸となります」



「マクミランさん、それを俺らがはいそうですかと受け止めると思っていたのか?」



 ガイアスさんは腕を組みなおし、不機嫌そうな声音で尋ねる。

 それもそのはずだ、ガイアスさん達には戦う場所の事は詳しく伝えられていなかったのだから。



「いくら同盟という立場をとってくれた恩人とは言えどアルテア大陸には隠れて住んでいる住民達もいる。 そこを火の海にされちまったら俺達はどこに帰ればいいってんだ」


「鳥人風情が調子に乗るなよ。 同盟を頂けたのでは飽き足らずまだ欲をかくか。 目に余る暴挙であるぞ」



 テーブルを強く叩いたのは白髪のメアン族の男性、額には血管が浮き出ておりガイアスへと鋭い視線を送る。



「俺達は正当な意見を述べているまでだ。 アンタが俺達の住む場所を保証してくれるのか?」



 ガイアスさんも負けじと鋭く睨む。



「ヴァリエルム様、ガイアス様落ち着いてください。 今は言い争っている場合ではありません。 その件についてなのですがちゃんと対策も考えております。 まずは現在アルテアに残っている方々には早急にリーゼアへと渡ってもらいます。 そしてリーゼアから現在建設中である人工島へと渡って頂きます」


「人工島とな」



 フェニールさんは訝し気な視線をマクミランさんへと送る。

 人工島という話は私も初耳だ。



「はい、リーゼア大陸の隣に現在人工島の建設が着々と進んでいます。 これについてはゼアル騎士団副団長であるモルファ様が進めております。 モルファ様、説明をお願いしてもよろしいでしょうか?」


「はい、畏まりました。 ゼアル騎士団副団長を務めますモルファと申します。 現在進められている人工島の建設は、移民に対する措置でございます。 増えすぎた人口増加に伴い住居自体が間に合っていない状況、また他種族を否定的な意見を口にする方々から守るため、より過ごしやすい環境へと変えて行く為に導入されました。 人工島へは大きな橋を架け行き来が自由に行われる様にする予定です。 これにより更なる移民の移動が可能となり、ゆくゆくはアルテアに住む者達の全移動を視野にいれております」



 モルファさんは慣れた手つきで資料を配っていく。

 そこには人工島建設の全体像、運用費、どれくらいの住民が居住を構えることが可能かが事細かに書かれていた。



「費用については国家予算の半分を投資し、早急に建設へと向かっています」


「ふむ、なるほどな。 こうも手を打たれていては引くしかあるまいよ。 住民達の安全が保障される場所であれば異論はない」


「フェニール殿…… ですが」


「ガイアス。 言いたいことはわかる。 だが、相応しい戦場も見当たらんのも事実。 海上戦はどちらも分が悪い、狙いが絞られることにより強大な魔法や【能力】で狙い撃ちされれば防ぎようがないからな」


「ええ、フェニール様の言う通り、あちらも海上戦は考えてはいないようで既にアルテアへと軍を配備している状況ですから」


「もう動き出しているというのか?」


「あくまでも備えでしょうが、ハーバー様商人達の情報はどのように現在なっていますか?」


「はい、現在アルテアではガルディア側に巨大な要塞を建設しているとのこと、そのあまりの速さに商人間での金銭の流通はこれ以上ない程潤っています。 なんでもガルディアの三英雄がそれぞれ動いているらしく、軍事力もそこに集結しているとのことです」



 おそらくガルディアも戦場をアルテアへと移したように見受けられる。 おそらく次の戦いは苛烈を極めるだろう。



「三英雄とはなんじゃ?」


「は、はい。 あくまでも商人間の噂でしかありませんが、ガルディアに王から勅命を受けている三人の英雄がいるそうで、それぞれがかなりの強さを誇るとの噂です。 名や特徴までは聞けませんでしたがそれぞれが王から魔道具を授かったらしくガルディアでは民衆からの人気も高いとのことです」



 三英雄か……



「その三英雄は気をつけておいた方がいいでしょうね、いずれ戦う事になるでしょうから、引き続きハーバー様は商人達から情報を集めておいてください」


「は、はい」


「聞いておればこちらは随分と後手に回ってるではないか、夏までにはと言ってはおるが、やみくもに戦いを挑むわけではあるまいな。 相手は要塞を武器に攻城戦となるのだぞ」



 不満げな声を漏らすのは先ほどガイアスさんと口論となったヴァリエルムと名乗る高齢のメアン族男性。



「だからこそヴァリエルム様の力が必要なのです。 魔道具の制作において右に出る者はいないとされるその実力を見せて頂きたいのです」



 フェニールさんは驚いたような声を上げる。



「な!? どこかで聞いたような名だと思ったら、ヴァリエルム=ウォーカーかい。 魔道具の基礎学を造り上げた天才が生きていたなんてねぇ」


「ちっ、昔の事だ。 今じゃ手が震えてまともな物なんてできやしないのだからな」


「天才も歳には勝てないんだねぇ。 やはり過去の栄光を背負っただけのおいぼれでは役には立たないか」


「黙れ、獣人種!  儂が基礎を造り上げただけだと思うておるのなら片腹痛いわ、あらゆる魔物の素材を最大限に生かし、あらゆる魔法に対応させる術を持つのはこの儂だけなのだからな!」


「ほう、そこまでホラを吹くのなら是非見せて頂きたいものですなぁ、ウチにも優秀な魔技士がいるんでね。 きっと要塞を突破できるような素晴らしい魔道具を作ってくれるはずさ、アンタと違ってな」


「言うではないか獣人種! いいだろうその安い挑発に乗ってやろう。 ハーバー! 材料はどこにある」


「は、はい!! 第四資材置き場に木材と金属、第二資材置き場に魔物素材、第七資材置き場に魔核が置いてあります!」 



「フン、精々首を洗ってまっておれ!」



 勢いよく部屋を出ていくヴァリエルム=ウォーカー。 まるで嵐が去ったような静けさが戻っていく。



「堅物を動かすにはこれぐらいがいいのさ、それにあの爺さんが本気になってくれたらきっといいもんが出来上がるに違いないからな」



 フェニールさんはニヤリと笑みを浮かべる。

 相変わらずの破天荒ぶりに思わず冷汗が流れた。 もしあれで激高したヴァリエルムさんがこの事を白紙にしろと揉めたらややこしい事になったに違いないからだ。


 それは周囲の人達も同じだったようで深く息を吐き出し、やれやれと首を振る。



「ま、まぁ気を取り直しましょう。 リーゼア住民疎通にロンベル様、要塞を突破する魔道具はヴァリエルム様、情報流通は今まで通りハーバー様、武器、薬品の調達はモリオステラ様、移民交流建築をゼアル騎士団副団長モルファ様、能力者及び地形対策をトリシア様、食料品及び生産は私が担当しますので、夏に向けて戦力を増強させていきましょう。 私達が手を取り力を合わせればどんな困難にも立ち向かえます」



「本日はこれにてお開きとするのじゃ、詳しくはまた後日話をしようと思う。 時間は無駄にはできんからな」



 それぞれが部屋を後にする姿を眺め、ほっと胸を撫でおろす。 

 ひとまずは同盟会議は終わったのだ。







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