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魔法力0の騎士  作者: 犬威
第3章 軍事会談
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オルタナ

 一晩が経ち、私とデニーは身支度を整えるとナウルの出入り口に集まった。


 昨夜フェニールさんの息子であるロズンさんから防具を受け取り、今はその鎧に身を包んでいる。


 アルマタイトより二段階程質は落ちるが、それなりの硬度が期待できる金属、エディタイトを使用したプレートのある鎧。 重量軽減の刻印を刻んでもらい見た目に反して軽いのも魅力の一つだ。

 赤胴色の艶が特徴のこのエディタイトはガルディアでは一般的にも採取できる量は多く、比較的安価なこの金属は手に入りやすい。


 それを覆うように茶色のフード付きのコートを羽織る。

 アルテアへ渡った際も着用したこのコートは水滴を弾く。 雨の多いアルテア大陸ではきっと長く重宝されるだろう。


 足元は金属製の鎧ではなくブーツを着用し、身軽さを重要視した。 このブーツも足元が崩れやすいこの地形を難なく歩くことが出来るだろう。


 防御力は多少前の鎧よりはどうしても劣ってしまうが、そこはやはり金属の質の違いだろう。


 前の鎧で使用されていたアルマタイトは銀色の金属。 金属の質の中では二番目に硬質な金属であるのだから。



「ほう、冒険者らしい出立になったものだな」



 そう声を掛けるデニーの姿は様々な金属を繋ぎ合わせたのだろう、銀製の鋼鉄鎧、魔獣の牙を繋ぎ合わせた鎧だ。 背のコートはウルフベアーの毛皮だろうか? これも雨を弾く素材で有名だ。

 背負っているのは細長い先端がスパイクになっている金槌だ。

 その長身からのその金槌は若干の違和感を感じる。 ギガントであればその重量級を活かした長剣や斧、ナックルなどが多いが、デニーはどうやらそういった一般論とは違うようだ。



「デニーも似合っているよ。 それにしてもデニーは金槌使いなんだな」


「ああ、小技が利きやすく素早く振れる。 水属性魔法と相性もいいんだ。 まぁアルテアの勇者には見切られてしまったが」



 なるほど、あの戦いではマーキスさんと戦ったのはデニーだったのか。



「アリアは…… 武器はどうしたのだ?」



 不思議そうな顔でデニーはこちらを見る。

 きっとテオの戦い方を知っているから私は剣や槍等を携えた重装備で来るのだろうと思ったのだろう。



「ああ、私はこれがあるから」



 右手を次元収納へ突っ込み、剣を取り出す。



「なっ!? 驚いたぞ、そんなマジックアイテムがあるのか……」


「ああ、私もテオと似た多武器使いだ。 この指輪のマジックアイテムは友から頂いたもの。 武器を多く扱う私にとってはなくてはならない存在になってしまった」


「なるほどな、良いマジックアイテムだ。 私が持っていたら鎧を三着ほど入れて、武器のスペアは常に三本程、回復薬は上限いっぱいに入れるようにするな。 備えあれば憂いなしというやつだ」



 なるほど、デニーの真面目な性格ならではだな。


 その時、後ろの方から声が掛けられる。

 まさかこの声は……



「アリア様!!」


「っつ!? シェリア、そしてキルアさんもどうしてここに……」



 振り返るとそこには旅支度を整えたシェリアとキルアさんの姿。



「これを見てください」



 シェリアが目前へと突き出したのは木製の腕輪が二つ。



「まさか……」


「はい。 冒険者に正式になったのですよ!」



 にっこりと笑いかける。 まさか、キルアさんまでとは……



「騎鳥軍の方は兄さんがいますから、微力ながら協力させて頂きます」



 キルアさんの格好は動きやすい軽装、胸元のプレート以外は体を覆うローブ姿。 腰には愛刀である細剣を二本差している。そしてどこから取り出しやのかスッと鬼の形相の仮面をつける。



 ああ、それお気に入りなのね……



 威圧感のある仮面から視線を外し、シェリアを見れば、シェリアも軽装で、鎧は最小限腕と肩のみで、私と似たターナーさんから貰った茶色のフード付きのコートを羽織る。

 足元はブーツで全体的に動き易そうだ。



「ちゃんとこうして許可は貰ってきました。 今日から私達はチームです! 」



 嬉しそうに腕輪をつけるシェリア。 戸惑うデニー。 堂々とした出立のキルアさん。こうして二人だけのチームは数を四人へと増やした。




 森の中を歩きながらふと思い出したかのようにシェリアが口を開く。




「そうだ。 冒険者となるならこのチームの名前を決めないと」


「私は何でも構わないぞ」


「ふぅ…… 同じく」


「私も姫様のおっしゃることなら何でも構いません」


「むぅ……」



 シェリアは難しい顔で考え込む。



「……私達の目的は?」


「船の調達とリーゼアへの足掛かりを作ることだったな……」



 デニーは答える。


「私達は違う種族だけど目的は同じ」



 ヒューマン、ギガント、ケモッテ、アンバーと種族は様々である。



「そうだな。 同じ目的のためにここに集っている」


「アルテアでは昔互いに同盟を組むと必ず誓われた言葉があるのです」



 視線がシェリアへと集まる。



「私は裏切らないことをここに命を懸けて誓う、オルタナ」



 ポツリと呟いた言葉がかなりの重さを伴っている。 一種の魔法であるかのようなプレッシャーだ。

 ガルディアにはない言い伝えだ。 デニーも初めて聞くような顔をしている。



「キルアさんは知っていたのか?」


「いえ、私も初耳だ。 このような事は書物には書いていなかったのでな」


「今は失われた言葉ですから。 これは王族しか伝わっていない言葉なんです。失敗できない戦い、命を懸けて抗う為に集った同盟者、その人達の総称をかつてそう呼んでいたんだそうです」



 すっとその言葉が胸に落ちる気がした。



「オルタナ…… か。 今の状況と酷似しているしいいんじゃないかな?」


「違和感はあまりないな」


「それにしましょう。 たしか冒険者の街に行けば正式に登録できるはずです」



 チーム名 オルタナ。


 この四人の冒険者パーティ、オルタナが今後活躍していくことをまだ当時の私達はこの時は考えもしなかった。









衣装が冒険者風にがらりと変わりました! イメージ絵を入れたいけど画力がが……

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