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魔法力0の騎士  作者: 犬威
第3章 軍事会談
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要求案

 一同は向かい合う形で座り、軍事会談は始まった。

 ゴートンさんが険しい顔で話し出す。



「それじゃあまずは、現時点でのお互いの状況の把握から話していこう。 ホーソン」


「はっ、アルテア大陸のナウルに現時点で集まっている獣人及び鳥人の数は六百七十二人。 此度の戦争で亡くなった王族軍騎士、騎鳥軍騎士はおよそ六十人弱。 現在は食料の負担が大きく、アルタからの住民の為の住居が足りていない状況です」



 ホーソンさんは手元の資料を見ながら話を進めていく。

 ちらりと前を見れば真剣な表情でデニーとレオーネはメモを取っているようだ。



「なるほど、要求案の一つは食料問題ですか」


「いかにも、一つ目はその住人達を十分な食料が取れるまでの期間、食料の援助をしてもらいたい」


「ガルド大陸は食料大国でもありますからその点は問題ないかと思います。 レオーネ」


「は、はい。 今の話からお伺いしますと住人凡そ六百八十人程、定期的な運搬により半年程は期待できるかと…… お、思います」



 レオーネは本をパラパラとめくる。 おそらくだが、そこには予算などが記されているのだろう。

 商業国家としてもガルディアは栄えており、様々な地域から冒険者や商人を通して物資のやり取りが盛んだ。

 都市に居た際は食料を売っている場所は至る所で見られたほどだ。


 ガルディアの他にも大きな都市はおそらくリーゼアのゼアルだろう。

 そこは鎖国をしていても身分証のある冒険者や商人なら入れる国で流通は盛んだ。 特にマジックアイテムの生産は図一である。


 ガルディアでも流れてくるマジックアイテムはほぼこのリーゼアからのものだ。



「それは助かるな。 してもう一つの要求案だが、住人が集まりすぎて住居が間に合っていないのだ。 王都であるアルタの返却を要求したい」


「元よりあの都市は貴方方の領土。 戦争で負けた我々が返却し、その要求を呑むのは当たり前の事ですよ。 そこは事前にこちらも話し合っていました」



 丁寧に落ち着いた声音で話すデニーは手元の資料と照らし合わせながら答えていく。



「これで二つの要求案は通ったか……」


「それでは最後の要求だ。 ここにいるアリアをそちらの国であるガルド大陸に送り届ける為に船を一隻要求したい。 ちと事情があってな、これで今回の三つ目の要求案とする」


「……た、隊長」


「うぅむ、わかっている」



 レオーネが心配そうにデニーを眺め、デニーも複雑そうな表情を見せる。



「どうした? お前達が乗ってきた船を一隻だけ同行させるだけでも構わぬ」


「すまないが、その要求には答えられそうにない」



 その言葉に一瞬唖然とした声が漏れる。



「なんだと?」


「昨晩、ガルディアンナイトの参謀でもあるガージェフ殿から通信で、首都アルタ付近の湾岸に停めていたはずの我らが乗ってきた船は全て何者かに破壊されていたと。 そのあと通信はいきなり途切れ、連絡を取ろうにも通信は繋がらず。 要求案自体は前もってガージェフ殿が食料と領土の話が出たら可能であると本国に伝わっているはずだが……」


「なるほど…… これは、嫌な予感がするねぇ……」



 顎に手を当て考え込むフェニールさんは何か心当たりがあるのだろうか。



「あのっ、そのガージェフさんは船が壊された以外には何も言ってなかったのですか?」



 この場では珍しくシェリアが手を挙げて発言する。



「……この大陸から出ろと告げていました。 きっと何かあったに違いない…… だが、ここからではあまりにも遠すぎる」



 遠い、ああ、なるほど……



「そうか、橋が落ちているから、どうしても飛べない種族は迂回路を通らねばたどり着けないのか」



 今度は逆に橋を落としたのが裏目に出ているのか。



「騎鳥軍が様子を見に行くのが一番効率がいい。 ホーソン、探索部隊をガイアスに命じて集めておきな」


「はっ」


「い、良いのですか!? 我々は敵である国なのに……」


「今はそんなこと気にしている場合ではなかろう。 最悪の事態かもしれん。 ガルディアは敗戦したお前達もろとも消し去る恐れがあるぞ」


「やはり……」


「ひっ、帰る手段がないのもこの為だとしたらっ…… そんなっ、私達は何の為に……」



 レオーネは怯えているのかデニーの服の袖を強く掴んでいる。

 それもそうだ。国の為に戦争の最前線へ出され、負ければそれをなかったことにするために消される。

 そんな理不尽な話あってたまるか!


 父さん…… いや、アルバランはいったい何を考えているんだ……


 セレス…… どうか無事で居てくれよ……



「まだ決まったわけではない、船を探すのが先決よ。 そうだな…… あそこならあるかもしれんな……」


「なるほどフェニール。 冒険者の街だな」


「ああ、ここより北西の山を越えた先に冒険者が起こした街がある。 そこはアルテアの国とは結び付きのない冒険者組合管轄の街だ。 冒険者や商人が多く住んでいるこの街は戦争の範囲からは外れておる。 おそらく船を持つ冒険者も多くいるだろうよ」




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