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魔法力0の騎士  作者: 犬威
第2章 アルテア大陸
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side ガイアス=エンドレア ~鋼の意志~

「随分律儀じゃないか。 さぁ、選手交代だ」



 ガイアスは槍を握りしめテオを見据える。 あまりにもその憮然とした姿に敵ながら敬意を払わずにはいられない。 これが味方であったらどんなに心強かったことだろうか。



「俺は誇りあるガルディアの騎士だ。 動けぬ者を甚振る趣味などない」



 テオは体に纏う付加魔法の電撃を解除したようで背から長剣を引き抜き構える。

 ガイアスの額から汗が流れ落ちる。


 ポタリと汗が地面に落ちたのを合図に二人は踏み込む。



「オォオオオオオ!!」


「ヌゥウウウウ!!」



 剣と槍が激しくぶつかり合う。

 その衝撃は大地を揺らがすほど、大気が震えるほどの衝撃。

 力と力のぶつかり合いは波のように戦場へと伝わっていく。足元の土砂は激しく舞い、降り注いでいく。



「グラウンドウォール!!」



 ガイアスが剣を弾き、テオの足元から鋼鉄の檻を作り出す魔法を唱える。

 鋼鉄魔法の中でも拘束に特化したこの魔法は瞬時にテオの周囲を包み込む様に閉じられていく。


 だが、瞬時に鋼鉄の檻にヒビが入り、瞬く間に崩れ去っていく。


 強度と硬度に特化したこの魔法でもやはり厳しいか……


 いつの間にか弓に持ち替えたテオは、口に加えた矢を飛び上がっていたガイアスへと放つ。



「おおっと、抜かりないな」


「……」



 躱し、旋回するように飛ぶガイアスを見上げながらテオは再び弓から鎖鎌へと持ち替える。

 鎖を振り回し放つとガイアスの飛んでいる方へまるで蛇のようにうねりながら進んでいく。


 振り切れないか……


「チィ……」


「サイクロン」



 反転し迎撃しようと槍を構えたガイアスだったが、突如あらぬ方向から放たれた暴風魔法により鎖は弾かれるように地に落ちていく。



「なっ!? 姫様!!」


「加勢します。 駄目だとは言わせません」



 ガイアスは一瞬驚いたがすぐに呆れた笑い声をあげる。



「……随分父親に似て頑固になったものだな……」


「親子ですから。 それにこの戦いアルテアにとって負けるわけにはいきませんので」



 こうなってしまえば何を言っても聞きはしないだろう。ならば俺がやれることはただ一つだ。


 次元収納から剣と盾を取り出したシェリアはテオを真っすぐ見つめる。



「覚悟はあるのか、敵国の姫よ」


「覚悟なんて最初からできています。 あの時母を失った時からずっと」



 そう答えるシェリアの澄んだ翡翠色の瞳には一点の曇りもなく、堂々としたものであった。



「お守り致します。 姫様」


「後ろは頼みます」



 シェリアは駆ける。 その速さはテオに負けずとも劣らないものだ。

 低い体勢からトップスピードに至るまで物の数秒もかからない程である。


 一気に距離を詰め、テオへと迫る。



「……いいだろう、サンガー」


「「!?」」



 無数の電撃がシェリアへと迫る。これまで付加魔法しか使ってこなかったテオがここにきて魔法を使い始めたことに二人は驚く。

 目前へと迫る電撃の刃はシェリアが身を無理やり捻ることによって回避、ガイアスもシェリアの後ろにびたりと飛行しながらテオへと迫る。



「フン!」



 上段から振り下ろされる長剣は轟音を伴いシェリアの頭上へと砕かんとしていた。



「オォオオ!!」



 ガイアスは突き出した槍を長剣に当てることで攻撃を逸らしていく。

 激しい金属同士の衝突に火花が散る。



「ハァアアア!!」



 弾かれたことによって生じた隙にシェリアは臆せずにテオの腹部へと斬撃を叩き込む。


 感触は良好。 シェリアの攻撃は確実にテオへと当たる。

 だが……



「オォオオ!!」


「キャウ……」



 テオが次に放った回し蹴りによりシェリアは吹き飛ばされる。

 シェリアの放った攻撃は確かに当たりはした。だが威力があまりにも違っていたせいでまともにダメージを与えられていなかったようだ。


 地を転々と転がりその攻撃はかなりの威力を持っていたことを物語る。



「姫様!!」


「お主はまだこの場に立つべきではない」



 吐き捨てるようにテオはシェリアへと言い放つ。

 あまりにも力の差がある。それははたから見ても歴然の差であった。



「かはっ…… げほっ、げほっ、まだ…… まだです」


 剣を支えにしてシェリアは立ち上がる。


 たとえ実力差がどれほど離れていようと姫様の闘士の籠った瞳は曇ってなどいない。


 シェリアは血を口から吐き出し、口元を拭う。



「私の心はまだ折れていないッ!!」


「姫様……」



 しっかりと立ち上がりテオを睨みつける。

 その姿を見たガイアスはその姿にシェリアの父ゴートンの姿が被って見えるような気がした。


 本当にそっくりになられて……



「そうだ。 まだ終わってなんかないんだからよ」



 背後からかかるその声に二人は振り向く。



「マーキス…… 無事だったか」


「おう、あっちの鎧のギガントは終わらせてきたからよ、さぁ第二試合といこうじゃないか」



 アルテアの勇者であるロマナ・マーキスがシェリアの肩を軽くポンと叩いた。



「さぁ見せてやろうぜ、俺達の戦いを」


「はいッ!!」




ゴ、ゴートンはまだ死んでいないよガイアス…… (; ・`д・´)

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