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魔法力0の騎士  作者: 犬威
第2章 アルテア大陸
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キルアVSセスティ

 戦場はさらに入り乱れ、周囲では剣戟の音が飛び交う。

 金属同士のぶつかり合う甲高い音、血しぶきは戦場に色を与え、染め上げていく。

 獣の吠える声、戦士の怒号、断末魔の叫び、それらが入り乱れさらに戦いは熱を帯びていく。


 キルア=エンドレアは騎鳥軍の中でもその戦い方は繊細で正確だ。

 構えたまま、じりじりと距離を詰めセスティの様子を伺う。

 対するセスティも構えたままピクリとも動こうとしない。だが、動きとは反対にその目に宿る憎悪と憤怒は今にも切りかかりそうな雰囲気を醸し出している。


 周囲の音が置き去りになるほど、まるで時間が止まってしまったかのように感じられるその一瞬に二人は呼吸をするのさえ忘れ、初撃を狙う。


 ザリッという靴擦れの音を合図に両者は目を見開き武器を打ち鳴らし交差する。


 キルアが放った初撃の突きはセスティが下段に構えた剣を上へ切り上げる形で弾かれる。

 エルフの細腕から繰り出されるとは思えない豪椀にキルアも戦慄を覚える。


 方向転換したセスティはそのままキルアに切りかかる。

 重くて速い攻撃はキルアの腕を持ってしなければ逸らし流すことはとても困難であった。



「殺す、殺す、殺す……!!」


「獣人や鳥人に恨みを持っているのだな……」



 怨嗟と憎悪の声がセスティの口から洩れ聞こえる。キルアは先ほどまでとは打って変わってしまったセスティの豹変ぶりに狂気を感じざるをえなかった。



「バーサーク!!」


「ハイディフェンダー!!」



 咄嗟にキルアは防御力を上げ、様子を伺う。

 狂戦士化の魔法バーサーク、本来であれば意識は取り払われただ本能のままに狂人化する魔法であり、ましてや敵にかけるのではなく自分自身にかけることなど普通はありえない。

 だがセスティは躊躇わず自分自身に狂戦士化の魔法を放つ。



「意思が残ってると言うのか……」


「当たり前だ。貴様らとは違う」



 赤く充血した瞳がバーサークが正常にかかった証拠、対話ができるなど普通はあり得ない。

 だが、セスティは息を深く吐き、コントロールできているようだ。



「あぁあああ!!!」


「くっ……」



 攻撃力、スピード共に恐ろしく強化されたセスティはキルアの居た場所に飛び掛かる。

 慌てて翼をはためかせ、キルアは一時その場から宙へ離脱する。


 セスティはギロリと避けたキルアを睨みつけ、腰にぶら下げた円月輪を飛び上がったキルアに向け放つ。


 円月輪は弧を描くように飛び、キルアは宙で身を翻し甲高い音を立て飛来する凶器を避ける。


 そのままキルアは滑空し、セスティに向け魔法を放つ。



「アイスニードル!!」



 宙から放たれた氷の槍はセスティを貫かんと迫る。



「こんなもの!!」


「なっ!? 砕いただと……」



 セスティは避けることもせず正面から氷の槍を手に持った剣で一刀両断のもと砕く。

 辺りには砕け散った細やかな氷が舞う。



「驚いている暇があるの!?」



 セスティは飛来し戻ってきた円月輪を再び掴み、放つ。さらにもう一枚追加というおまけ付きで。


 バラバラに飛び交う円月輪を宙で躱しながらキルアは再び距離を詰める。

 地面へ急降下し、低空でセスティへ一撃入れようと迫る。


 セスティも同じように地面を駆け、二人は激しくぶつかり合う。



「なんて力だ…… うっ……」


「あぁあああ!!」



 セスティに押される形で武器を交差しながらキルアは後退し始める。



「くっ、アイスニードル!!」


「スチールニードル!!」



 至近距離でキルアが放った魔法は相半属性の魔法で相殺される。

 狂戦士化しても魔法が使えると言うのか……


 再び戻ってくる円月輪をキルアは跳躍することで躱し、一旦距離を取ることにした。


 セスティは今度はこちらの番だと言わんばかりに地を蹴り、距離を取ったキルアに物の数秒で追いつき、剣を振り下ろす。

 地面が割れるばかりに爆ぜ、避けたキルアにすかさず切りかかる。

 それを流すようにキルアは剣先を当て受け流していく。 受け流されてもセスティの体勢は崩れることなどなく、次の攻撃に流れるように進んでいく。

 対してキルアも反撃の為、交差する形で突きを放っていくがセスティは恐怖を感じないのか、目を見開き迫る攻撃を皮一枚で避け続ける。


 汗が流れ、激しい攻防に息が切れる。

 セスティは強い、だが、疲労はあちらにもちゃんとあるようで、セスティを見れば多少の息切れを起こしているようだ。



「はぁ、はぁ…… 」



 そもそも体に負担のかかる狂戦士化を発動させているのだ。もとより短期決戦をセスティも望んでいたのだろう。


 息を整え、再び両者攻撃に移ろうとした時、戦場に震撼が起こる。


 大型の魔物がこちらまで吹き飛び、仲間の騎鳥軍の悲鳴が響き渡る。



「なっ!? 魔物が一瞬で!? ぐぁああああ!!」


「こいつはまさか…… テオだぁああああ!! 逃げ…… 」


「速っ!? ギャアアアアア!!」



 恐れられていたガルディアンナイト団長、雷撃のテオが一人、こちらの味方をなぎ倒し、吠える。



「オォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」



 戦場に響き渡る声に誰もが振り返り、その鬼のような形相を見て、ある者は逃げまどい、腰を抜かしていく。


 ギガント史上最強と呼ばれる存在が戦況を覆すために動き始めた。


うわぁああああ!! テ、テオだぁああ!! 逃げるんだァアアア!!Σ(゜Д゜)

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