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魔法力0の騎士  作者: 犬威
第2章 アルテア大陸
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ゴートンVSアルダール

 剣戟の音が響き、魔力が込められた矢が飛び交う戦場に、にらみ合う二人の武人。


 金髪の髪をリーゼントにし、特攻服のような派手な服装の、人よりも大きな鉄球を扱うガルディアンナイト特攻隊長であるギガント、アルダール。


 かたや、漆黒と金に縁どられた鎧を纏い、二つの銀斧を携えし獣人族の中の最高の戦士であり王である、ゴートン=バーン=アルテア。



「おいおいおい、国王が戦場の最前列にいるってどういうことだよ、血迷ったのか」



 アルテアの王の顔は、騎士隊長であるアルダールも知らないわけがなかった。



「なに、力あるものが後ろにいるべきではない、皆の活路を開くことが王であり、強者としての役割だからな」


「そうかい、嫌いじゃねぇぜ、その考えはよ、わかりやすくて実にいい」



 にかりとアルダールが笑い、腰に差していた木刀を抜く。


 ただ、それは木刀と呼ぶにはいささかでか過ぎる代物であった。

 ギガントであるアルダールが本当に扱うのは大きな鉄球ではなく、その大木とも劣らぬ大きさの木刀である。



「ほう、てっきりこれがお主の主力武器かと思ったんだがな」



 ゴートンの足元には、先ほど叩き落した鉄球が地面にめり込んでいる。



「残念だったな、テオさんの指導の元複数の武器の扱いは慣れてるんでな」


「「おぉおおお!!」」



 話している隙を狙い、ガルディアンナイトのギガントの二人が左右からゴートンに迫る。



「大将首もらったぁああ!!」


「終わりだぁああ!!」



 大きな斧による一撃と大きな剣による一撃は、そのギガントから繰り出されるパワーは計り知れない。



「ディスペル!!」



 ゴートンは無駄のない動きで降りかかる一撃を躱すと、左右に持った手斧を翻し、強化魔法を打ち消す浄化魔法を唱え、切り捨てていく。



「ごぉおお!!」


「ぐぅああああ!!」



 鎧を纏ったギガントの戦士であっても、強化魔法を打ち消され、元々軽装な装備の多いギガントは鮮血を派手にまき散らし倒れる。



「さすが噂に名高い国王だ。 俺もやる気がでるってもんだ」



 崩れ落ちる味方を見て、アルダールはさらにやる気を募らせる。


 アルダールは戦い自体が好きであった。

 だが、強すぎる自分の体躯と小さい人類達の戦いはいつも相手にならない者が多い、同じギガント同士の戦いであるならばいざ知れず、こういった強者とのめぐりあわせはなかなかなかったのだから。



「戦いはこうじゃなきゃなぁあ!!」



 アルダールが木刀を構え、一歩大きく踏み出す。


 ギガントの一歩はヒューマンやエルフなんかとは比べ物にならないほど距離を詰めることができる。


 蹴り飛ばした土砂が舞い、離れていたゴートンへ一気に迫る。



「オォオオオ!!」


「オラァアアア!」



 大木と銀の双斧が激しくぶつかる。

 衝撃により、少しゴートンが押されるが、それ以上は進まずぴたりと攻撃を食い止めている。



「驚いたぜ、俺の攻撃で吹き飛ばねぇなんてなぁ!」


「鍛え方が違う」



 アルダールは自分の攻撃が当たったのにも関わらず、少ししか動かせなったことに驚きを隠せない様子だった。

 かたやゴートンの方は汗の一つも流さず、涼しい顔でいとも簡単に受け止めてしまった。



「フン!!」



 お互いの武器を弾き、さらにゴートンは肉薄するようにアルダールの足元に入り込もうとする。



「させるかよ、アースインパクトォオ!!」



 アルダールが地面を思い切り踏みしめると、アルダールの周囲の地面が勢いよく隆起する。


 ゴートンはその土魔法が発動されると後ろに飛びのくことにより直撃を避けることができた。



「対策はやはりしているか」



 ギガントの弱点は足元の超至近距離である。

 足元故にギガントの大ぶりな攻撃は当たらず、死角にもなりやすい為、ギガント相手の戦いにおいてはまず最初にここを狙うとされている。


 だが、それは多くのギガントが知っていることであり、こうして対策もとられている。

 土魔法の一つであるアースインパクトは特にこのギガントの欠点を大きく改善してくれる。

 自身の周囲を囲む様に地面が隆起し、敵を打ち上げるこの魔法は多くのギガントが会得し鍛え上げている。


 この魔法はギガントの防御魔法でもあるのだ。


 着地し、体制を整え、再び距離を詰める。



「オオオオオオ!!」



 今度はうって変わってアルダールが果敢にゴートンへ攻撃を浴びせる。


 この万能にも思えるアースインパクトの欠点として、連発ができないというものがあるからだ。

 どの魔法にも長所と短所があり、それをうまく補うことによって戦っていく。


 例えば、強化魔法のどれも術者の体力を減らす作用があり、回復魔法は大きく魔力を消費する。


 こういった攻撃魔法も連発できない等、欠点は必ず魔法に存在するのだ。



 激しい大木の木刀と双斧の剣戟が繰り広げられる。



 大木の風圧だけで土砂が激しく舞い、一つの攻撃は防御に徹しているゴートンの足を軽く地面にめり込ませる程の威力を持つ。


 だが、かたや反撃に転じ、ゴートンがアルダールの木刀に斧をぶつけ振り払えば、ギガントであるアルダールが軽くよろける程の威力を持つ。


 強化魔法を施されているアルダールが力負けしているのだ。



「恐れ入ったぜ、俺よりも力が強いなんてなぁ! 」


「お主こそ、なかなかしぶといではないか」



 お互いニヤリと凶悪な顔をゆがめ笑う。

 似た者同士なのかもしれんなとゴートンは心の中で思った。


 その時、地面が地鳴りを起こすほどの衝撃がこの戦場に迫っていることをまだ二人は知らなかった。






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