<5>神
「勇者って凄いですね!」
「そーだなー」
「らいとのほうがすごいもん!」
「お、良いこと言ってくれるじゃないか」
「えへへ〜」
勇者の挨拶が終わり、ちょうどお昼時だったので俺達は宿屋の食堂にいた。
「勇者達って異世界から来たのに、よく緊張もせずに皆の前で話せますよね〜」
「だな。俺だってあんな数を前に喋るのは無理だわ」
「リーラも〜」
「私もです!」
「勇者っていう職業がメンタル面とかを強くしてるんじゃないか?知らんけど」
「それはあるかもしれませんね。勇者は人族の代表でもありますから...あ、そういえば強さと言えば力の方もやっぱり強かったですね!」
「Lv1でステータスが400近くあるんだもんなぁ。ビックリだわ」
「え?そうなんですか?」
...しまった。勇者以外で鑑定使えるの俺だけだった。
「......えーっと言ってなかったか?」
この場凌ぎに嘘をついてみる。
「言ってませんよ?私ずっと聞いてましたから」
結構話長かったし少しは聞き逃しをしてるかなーと思ったが、どうやら違ったようだ。
「じゃあ俺の聞き間違いだな」
「そうですね!」
そんな元気良く言わなくても......
「...で、力が強いというと?」
「え?ライトさん見てなかったんですか?勇者達が魔法とか剣技を披露してたじゃないですか〜」
派手でしたよ〜と付け加えるリーラ。
んな事やってたか?もしかしてリーラといちゃいちゃ(俺がそう思ってるだけかもしれないが)してた時にやってたのかな?......って仮にそうだとしても気付くだろ俺......
「....あ、あーやってたなー」
「....何か白々しいですねぇ。別に知らないなら知らないって言ってくれてもいいんですよ?」
反射的に白を切ってしまったが、もう言ってしまった手前言い直すと面倒な事になりそうだしこのまま通すか。
「そんな事ないぞ」
「本当ですか〜?」
「ほ、本当だ」
「本当に?」
白を切れば切るほど、ミリカの目つきが鋭くなっていってるんだが...
「ミリカ」
と、ここで救世主が現れた。
「お父さんなにー?」
「昼食の用意が出来た」
「分かったー」
「ふぅ...何とか助かったようだ」
ま、悪い事したわけじゃないんだけどな。
ミリカが昼食を運びにきて、それを食べてる間にさっきと同じ事を聞かれたがおっちゃんが「仕事をしろ」と言ったので、それ以降聞かれる事はなかった。
***
「さて、寝るか」
「うん!」
時刻は10時頃。
リーラを寝かせようと布団に入るとリーラもあとに続いて入ってくる。
暫く撫でているとスゥスゥとリーラの寝息が聞こえたので、リーラを起こさないようにそっとベッドから出る。
やりたい事や用事があるから....とかそんな理由でベッドを出たのではない。
理由は至ってシンプル。
眠くない。
4脚の木製の椅子に座り、ただ何もする事無いままボーッとする事数分。
やはり、ボーッとしていると次第に眠くなってくる。
......寝るか。
そーっとベッドの中へ入る。
リーラは...よし起きてないな。
確認した後目を暫く閉じているとだんだんと意識が薄れていった。
「ここは...夢か?」
気付くと俺は辺り一面真っ白な世界にいた。
「あったり〜!」
と何処からか、俺と同年代位の少女のよく通る声がこの真っ白な世界に響いた。
「ん?誰だ?」
「私は神だよ〜」
目の前に現れた銀髪少女はどうやら神様らしい。
てか可愛いなっ!
「夢なのが非常に残念だなぁ」
「んー、夢は夢なんだけどね〜君の夢に干渉しているから私は実体としてここにいるよ」
「っていう夢なのか」
なんだこの設定。
「設定じゃないよ!」
「あぁ、俺の夢だからな。そりゃ俺の考えてる事が分かるか...ってことは俺は設定じゃないよ!ってお前に言わせた事になるのか」
「むー!違うってば!」
「分かった。分かった」
「信じてないよね?」
「信じてるよー」
棒読みで言うと神様はプンプンと怒ってしまった。
「信じてよー!信じてくれなきゃやだやだ!」
ガキかこいつは。
「信じてるって。で?お前が本物の神様だったら何で俺の夢に?」
「まだ信じてないみたいだけど...まぁいいや」
と、急に真剣な顔つきになった神様。
「君は創造神を知ってるかい?幾多の神を作りし最初の神。全ては創造神から始まったと言ってもいいよ」
「へぇ」
「で、その創造神が君なわけ」
やっぱ夢か。一瞬でも信じてあげようと思った俺の善良な心を返せ。
「本当なんだってば!私がステータスを見れるようにしたのに君のだけ見れないっていうのはおかしいんだよ!」
「えーあれって事故じゃないのかー?」
「事故じゃないよ。ステータスが見れないなんて創造神以外見た事ないよ!その創造神は18年前に死んじゃったから創造神は別の者に引き継がれるわけだけど、私達神じゃなくて何故か君がなっちゃったんだよ!」
「......」
俺ってこんな痛い奴だったのか。
夢なのに超恥ずかしい。
「本当だってば!じゃあ目が覚めたら何かを想像しながら『創造』って唱えてみれば分かるよ!これは創造神しか使えない魔法だからね」
「はいはい。分かった分かった」
「そろそろ君は夢が覚める。今日の夜もまた来るからね!」
と、神様はそう言い残して消えてしまった。
神様が消えて暫くすると目の前が急に暗くなった。
「痛い夢だったなぁ」
「んぅ...らいろぉ?」
「おはよ」
「おはよー」
ベッドから出て時間を確認すると7時過ぎだったので久しぶりの早起きにちょびっと嬉しくなる。
あの痛い夢のおかげだな....ん?そういえば何か神様が唱えろって言ってたな。
何かを想像してから創造って言うんだっけ...
「『創造』」
と言うと目の前に光の粒子が出てきて、それが集束して人の形となり1人の少女になった。
呆然としている俺とリーラにその少女はこう言った。
「よろしくお願いします!マスター!」
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