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・リリィの病院

 魔法のある世界、ヨツンヘイム。その中にあるこの世界で一番の広さを持ち、一番力を持つ国、ミッドガルド。そこの首都のミッドガルド中央区の中心部から少し外れたところ。通称ユグドラシル区域と呼ばれるところに私の病院はある。その名も「ミッドガルド外科病院ミッドガルドがいかびょういん」。え、読み方が違う? いいのっ! そういう特徴があったほうが目立つからっ!

 私、リリィはここの医院長で天才魔法外科医でもある。まあ天才っていうのは周りが言ってるだけなんだけどさ。

 と、魔法外科医について語っておくと、まず医者は大きく2つに分類される。魔法医と一般医だ。これは、治療には魔法を使えるかで分けられる。詳しいことは後で。ここから魔法医はさらに魔法外科医と魔法内科医、それに魔法治療医に分けられる。どうやって分かれてるかっていうと、それぞれの担当する科、それに保有魔力量と治癒魔法への適性度で決まる。魔法内科医は魔法を使って内科的に治療する医者のこと。例えば、喘息とかインフルエンザなんかを治癒魔法を使って治療するんだ。魔法外科医はそれの外科版って認識してもらえれば分かりやすいかな?

 魔法治療医っていうのは、さっきの2つとは違って、総合的に治療する人。比較的軽度な病気や怪我は全部この人たちが治療しちゃう。それで、一般医っていうのは治癒魔法への適性がないけど、ちゃんとした医者としてやっている人たちのこと。多分、この中では一番努力してるんじゃないかな? 私も負けるつもりはないけど。

 んで、さっき出た魔法への適性っていうのを簡単にまとめると、人によって得意な魔法や不得意な魔法がある。そのどれだけ得意かって値のこと。魔法が発現した頃から研究をして、今や他の国を大きく引き離し魔法分野の最先端を行くミッドガルドでは、そんな数値までわかっちゃうんだ。結構すごいよね。

 この適性ごとにさっきの4つをまとめると、「魔法外科医=魔法内科医>魔法治療医>一般医」になる。当然適性が高い人ほど人数は少なくなるから、魔法外科医や魔法内科医はそれだけ難しい治療をする患者を診て、軽度な患者は魔法治療医が治療しちゃう。ちなみに、一般医でも難しい患者を診る人はいるんだ。まあ、それだけの勉強と経験を積まないと回してはもらえないんだけどね。

 さて、解説はこれくらいにして、今私がどこにいるかっていうと、仮眠室のベッドの中でお休み中。だって長い時間手術してたんだし、結構疲れるんだし、いいじゃないっ! それにちょうど夜になったしっ。

 というわけで、どれだけ疲れるかってのを伝えるためにさっきの鉄筋おじさんの手術を軽く説明すると、まず開胸。んでどんなふうに刺さってるかを確認。それから治癒魔法をかけつつ、ゆっくりと鉄筋を抜いていく。ここでちゃんと治癒魔法をかけないと、命の危険があったり、跡が残っちゃったりするから結構慎重にやるんだ。それに満遍なく魔力を流さないと変な跡ができちゃうから、それを作らないように慎重に、慎重にやる。まだ皮膚とかに残っちゃったら見栄えが悪くなるくらいだけど、心臓とか肺とかはそれが元で何が起こるか全くわからない。だから、そういう臓器なんかはさらに慎重にやる。それに執刀医は私だから、患者の容体を診て的確に指示を出したりもする。ね、疲れるでしょ? それに鉄筋を抜き終わって終わりじゃなくって、閉胸するまでが手術。後が残らないように治癒魔法を使って閉胸してやっとおしまい。こんなに神経を使うんだもの。やっぱりお休みは必要。あー、ベッドってあったか〜い。このままずっと惰眠を貪ってた〜い。

「リリィ先生、そろそろ回診のお時間ですよ」

ふみゃ? 誰かが呼んでる気がするけど、空耳だねっ。すやぁ。

「リリィ先生、起きてくださいっ!」

む〜、うるさいな〜、今いいところなんだけど。

「リリィ先生っ!」

うっ、寒っ! 布団を剥ぎ取られてしまっては仕方がない。起きるとするか。

「ん〜、だれぇ?」

 私は眠い目をこすりながら起き上がる。うおっと、よだれが。パジャマの裾で拭いちゃえっ。

「先生、みっともないですよ・・・」

 ふぁっふぁっふぁっ。そのジト目、私には効かんわっ!

 と、このジト目をしているのはミツキ。私の助手で色々と頼りになる相棒。私と同じ魔法外科医で私の後輩。魔力量が私よりも低いからってことで助手になってくれたんだ。しっかり者の可愛い子っ。

「何を考えてるのかは知りませんけど、早く着替えてください。回診の時間ですよ」

 はいはい、わかりましたよ。

 私は着ていたパジャマを脱いで、白を基調にした浴衣に着替える。なんで浴衣かっていうと、私の趣味っ!

「それじゃあ、行こうかっ」

「はい!」

カルテを持った私とミツキは病室へ向かう。

 あんまり広くないミッドガルド外科病院は4階建てで、1階は診察室とかと手術室。2階は入院してる患者さんの部屋で3階は仮眠室とかスタッフルームとか。4階は倉庫と私とミツキの居住スペースになってる。私は3階から2階に降りて病室へ。

「やっほーっ、元気っ?」

「いや、普通に入りましょうよ・・・」

 私がミツキの鋭いツッコミ(本格的なハリセン付き)を受けつつ中に入ると、4人のおじさんたちがこっちを見ながら笑っていた。

「はっはっはっ! 相変わらず面白いなぁ、リリィ先生は」

「ああ、先生の回診は好きな時間の一つだよ。毎回漫才を見られるし」

ほぉ、漫才といいますか。

「そんなことをいう人には副作用のきついお薬を出しちゃいますよっ!」

「おお、すまんすまん」

こんな感じで私の回診は結構賑やかだ。

「さて、傷の具合は・・・うん、跡もないし大丈夫そうだね。このままいけば半月ぐらいで退院できそうっ」

 他の患者さんと話をしつつもちゃんと診る人を診る。それをやらないとなんのための回診かわからないし。スラスラとカルテに現状を書き込んで次の人へ。これを4回繰り返せば1部屋が終わる。

「それじゃあ、またくるねっ!」

「おう、楽しみに待ってるからなっ!」

1部屋終わればそこの患者さんに見送られて次の部屋へ。これを10回くらい繰り返せば回診も終わり。ふぅ、今日もつっかれた。



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