全会一致で決まったんだよ
お爺ちゃんが出発してからすでに1年、ノルドの古文書の解読と研究は順調に進んでいるらしい。上級魔法の名前は『樹海創造』、名前の通り周囲の草木を活性化させて樹海を創りだす魔法だ。なんでそんなものを作るんだって思ったけどどうやらこの樹木魔法、そもそも精霊の国と言われるほど魔力要素の濃かったオヴェスト特有の魔法だったらしく彼の国が滅ぶ際に他国に侵略させまいとして発動させた大魔法のたぐいだったようだ。現に現在までオヴェストはその樹海によって誰も入れない難攻不落の土地となっている。歴史は奥深いね。
ノルドには僕と違ってきちんと成人して研究者として働く妖精種がいるらしく樹木魔法の発芽と操作については必要な属性も僕の話を元にした呪文作成も済んでおり、こちらの森の再生や向こうの砂漠緑化計画に貢献している。
しかし、あいかわらず上級魔法については再現出来ていない。そもそも国一つ飲み込む大魔法で自爆技、おいそれと発動実験できないのが原因だ。森をつくろうとしてうっかり国全部を樹海にするわけにはいかないからね。このままいくと発芽と土壌改良で10年20年、いや、100年計画で再生させることになりそうだ。あちらの砂漠についてはそれでも構わないがこちらはそうも行かない、冬の薪や一年を通しての動物性蛋白質の確保(こちらには家畜といった文化はあまりない、飼育しても魔獣に食われて終わるからだ、なんとお店で出す食材は特定の場所に生息している魔獣を狩って得るらしい)、薬草や建築資材までも王都から離れた町や村、他国からの輸入でまかない続けている。要するに物価が上がり続けていて経済破綻を起こしかねない。すでに一部の住民は引っ越しを始めているし国の上層部事態王都移転も考え始めているということだ。まじあの冒険者死ね。
あの冒険者の所業もみ消しについてサーシャさんを問い詰めたところ、あのバカはとある国の上級貴族のボンボンということだ。それで国同士で裏取引がありドラゴンの所業として処理することにしたとか何とか。実際には他にもいろいろ理由があるみたいだが興味ないから聞かなかった。上がそう判断したなら国にとってはそれがベストなんだろう。僕はこの恨みを忘れるつもりはないが。グレンさんも同意してくれた。殺されかけた記憶は消せないもんね。
エストではどのような研究がされているかといえば、まず前回の魔術講座全員での翻訳作業が評価されてメンバーは王宮魔術部隊と合同で研究することになった。ウォルフくんみたいな天才もいるし、やっぱり発端でありお爺ちゃんの研究施設を自由に使える僕をどうにかして引っ張り込みたいという思惑も動いたそうだ。おい、最初の禁止令はどうした。
そこでまずは1年かけて必要知識の詰め込み作業が行われた。具体的に言えば魔術用語と古代文字の完全習得だ。もともと講義単位にも会ったので問題ない。それに加えてそれぞれのグループに必要な知識を教えこまれた。
相変わらずの翻訳グループと、実際の実験部隊、別の視点(土壌改良のさらなる改良などなど)からのアプローチ部隊だ。これは単位修得後の進路によって別れた。
魔術講座は受けても魔導師として働く気のない、趣味とか他の職業(考古学に魔術文字や古代文字は必須である)のために受けたとかいうグループは翻訳部隊だ。魔術師、魔法師を目指している人は実験部隊、魔術師の中でもすでに専門、今回の場合は土壌改良に興味をもった人たちなんかは別視点部隊に配属されスパルタ教育を受けた。魔導師系は就職先が決まったようなもんだから張り切ってるしそれ以外でも翻訳に対して対価が支払われることになったから喜んでやってくれている。実に無駄のない政策である。
まあ長々と回想と言うか説明したわけだが、僕の配属先はそのどれでもなかったりする。どこかといえば家でグレンさんの助手という名の監視です。




