王妃様の誕生日パーティー1
今日は王妃様の誕生日。
結局ドレスは王妃様がプレゼントしてくれた。似合いそうだから、と言って下さって薄桃色の上品な色のドレスを下さった。
サジタリーからはそれに合わせた宝石をプレゼントして貰った。
「流石に声をかけてこないな」
つまらなさそうに言うけど、当たり前よ。
「それはそうでしょ。側にサジタリーがいるんだもの、声をかけにくいわよ。それにそんなに怖い顔して睨んだら誰も側に寄りにくいわ」
つい笑ってしまった。
誰かが声をかけてくる度に、最低限の挨拶はするが、明らかに威嚇としか取れない睨みを向けるんだもの、逃げていくわよ。
誰もが、私がパーティーに参加しているのを気づくと興味津々の顔をし、声をかけたそうだが、べったりとサジタリーが側にいるから近寄れない。
コソコソと何か話をしてはいるが、思い切って声をかける勇気はない。それに、私の離縁とサジタリーの関係も気になっているだろう。
「当たり前だろ。見ろよ。不穏な空気をばらまいている奴らばかりだ。どうせ離縁の事を根掘り葉掘り聞きたいんだろ」
「まあ・・・仕方ないわよ。離縁自体が珍しいし、それも白き結婚だったなんて、気になる所よ」
「聞いてどうする。他人事だろ?そんな噂話ばかり聞いて何が楽しいのか分からん」
「人の不幸は蜜の味、よ。根掘り葉掘り聞いて楽しい人がいるのよ。だから、あそこで私達をずっと監視でもするように見てるでしょ?」
少し離れた場所で不躾な程に私達を見てくる人達がいる。
「暇な奴らだな。そんな事気にする前に、ここで繋がりでも持てるように動けばいいものを。下らん」
「ふふっ。そうね。私もそう思うわ。似てるのね私達」
「嬉しいこと言うな。さて、もういいだう。部屋へ戻ろう」
「サジタリー、少しいいか?」
不意に柔らかな声が聞こえ、無意識に頭を下げた。
「兄上、今、ですか?」
あからさまな嫌な顔はさすがにしなかったが、すこし棘ある返事だ。
「レン殿。サジタリーと少し大事な話があるので借りりてもいいかい?」
「勿論でございます、カイン様」
「兄上、後ではいけませんか?」
「すぐ終わるから」
ふうとため息をついた。
「分かりました。レンは部屋に戻ったらいい」
「分かりました」
私が微笑みを返すと頷きカイン様と目があい、小さく頷くとサジタリーと歩いて行った。
その瞳が全身を泡立たせる程、怖かった。
「あら、お久しぶりですわ、ザカリ侯爵夫人。あ、申し訳ありせんわ。今は違いましたわねぇ」ハリカ伯爵夫人。
「そうですわよ、出戻りされたのですから、今はまた、シュルク伯爵令嬢ですわよ」サーセン伯爵夫人。
「そうだったな。しかし療養中と伺っていましたが、どのような手を使って招待されたのですか?シュルク伯爵殿は招待される身分ではない。おお、失礼しました。はっきり言ってしまった」ナッジャ伯爵。
「あら、あら、そうですわよ」ルールン侯爵夫人。
待ちかねていたようで、関心する程自然に私の前に立ち塞がり、
これまた関心する程スラスラと嫌味をいい、笑いがおこった。
どこに、申し訳ありません、とか、失礼しました、とか、の思いがあるのか知りたいものだ。
いつもの殿方1人とご夫人の4人の人達だ。ザカリ家にいた時にお知り会いになったが、ザカリ家と親睦の深い家ばかりだ。
親睦。
聞こえは言いが、ザカリ家から恩恵を貰い共存している輩達だ。
ザカリ家の名誉を守らねば自分達も引きずられ落ちていく。だから白き結婚の離縁した私が、苛立たしい存在なのだ。どれだけ私が非道で愚かな女だったのか、つまり、白き結婚の離縁は私が作り上げた偽りだったと暴かなければ、ザカリ家の、そしてこの方達のこれからが困るだろう。
だって、金ヅルが居なくなってしまったのですものね。
「お久しぶりでございます」
軽く会釈し微笑んだ。綺麗に4人が壁になり逃げれない。
連携が取れていること。
感心するわ。
いいえ、食いついて来てありがとう、と言うべきね。
「ねえ、白き結婚の離縁だと聞いたのだけど、嘘でしょ?」
遠巻きに皆さんが見てるから聞こえないと分かって言っているのだろうけど、最低の言葉だわ。
「ハリカ伯爵夫人、そんなにはっきり聞いたらいけないわ。噂ではサジタリー様を誑かした悪女と言われているのよ、つまり、ねえ」
何がねえ、なのよ。誑かした悪女、なんてどこかの誰かが言った台詞ね。
そうね、違うわ。ホーン様とこの方達が話し始めた言葉だわ。
「医師に大金を渡し、白き体と偽りサジタリー様に泣きついた、という事よ。確かに、愚かな医師なら大金を見れば、簡単に嘘をついてくれるものね。あとは、その純情そうな顔をして、昔のよしみで助けを求めたのでしょう?言って下されば私の叔父が医師をしておりますので紹介して差しあげたのに。あ、ごめんなさい。それだと白き体ではないとすぐにバレてしまいますわね」
上から目線の苛立つ言い方。昔のよしみ、か。40を過ぎたサーセン伯爵夫人が私とサジタリーの何を知っているんのだろう。
それも、私が純潔では無いと、良くもまあそんな下品な事を言えるものだわ。
「そういう事ね。つまり、初めから白き体では無かったのよ。だから、誑かされたサジタリー様を脅し白き結婚の離縁だ、と偽れたのね。上手いことするわねえ。お相手がサジタリー様にするなんて、本当に恐ろしい人だわ。その薄汚れた色のドレスもサジタリー様の好みかしら?ああ、やだやだ。学生の頃からそんな浅ましい考えを持っていたのね、最低だわ」
たいして私と歳が変わらないハリカ伯爵夫人だから、私とサジタリーが仲良いのは知っているが、逆に言えば、いつもそんな事ばかり考えていたのね。
この方は元々男爵令嬢だ。夫となるハリカ伯爵とは、倍も歳が違うのに、子供が先に出来て婚姻となった。
ある意味あなたの方が上手くやったものよ。
「あらあら、全部当てられてものが言えなくなってしまったのかしら。大人しく引っ込んでいれば良いものを。サジタリー様に体を差し出し、社交界にもう一度花咲かせようとしているのでしょうが、見当違いもいい所だわ!」
汚いものを見るようにルールン侯爵夫人は吐き捨てた。
「お2人はかなり親密な関係だったんだろう?息子から聞いていたよ。ホーン殿もお可哀想に。そんなあなただがら興味が湧かなかったんだ。だから心底愛したカテリナを心のよりどころとしたのに、それさえも裏切られ・・・まだ伏せてっておいでだ」
ああ、それを言うのね。
ホーン様が今日招待をお断りしていたのは、悲しみに浸っている、という演技だとわかりきっている。
サジタリーに会って、何を言われるか戦々恐々と言うのも理由だろう。
「純愛に生きてきたホーン様が可哀想だと思わんか!?お前のような、悪女に騙されたサジタリー様も、お可哀想だ!!さっさと罪を認め修道院でも入ればいいのだ!!」
どこまでも、可笑しい話だ。
でも、とても心がすっきりしていた。
ありがとうございます、ナッジャ伯爵。最後のトドメをさして頂きまして私の決意が確固たるものになりました。
すっと背筋が伸びる。
「皆様、私、ホーン様と過ごした1年と、カテリナが行方不明になってから、とても強くなりました。ホーン様と皆様のおかげです」
顔を上げ心から満面の笑みが出た。
4人はその私の様子に訝し気に顔を見合わせていた。
この怒り、
この苛立ち、
この憎しみを、
お返し致します。
ありがとうございます、この機会を下さって。
4人のずっと先に見える方が、術策に満ちた微笑みを浮かべている。
だから、私からサジタリーを離したのだ。餌が食いつくように。
そうしてまんまと、餌に食いついた。
「それを、全てお返し致します。どこまでも、余すことなく、未来に続くように」
「おっほほほ。何か楽しそうね」
「本当ね。未来に続くなんて、何だかゾクゾクする言い方ね」
「本当だな」
「聞こうかしら」




