引き止めればよかった
その後、そのままのドレスに手を加えながらも、似合う宝石などを選ぼうか、という話をしていると、扉を叩く音がした。
サジタリーが扉に行き何か話をしだし、部屋から出た。
嫌な感じだ。
内容を私に伝えたくないから、部屋から出たのだ。
妙な胸騒ぎに不安になった。
だが考えて見れば、私に関係のある内容では無いかもしれない。ここは王宮で、サジタリーは王子だから、極秘な話があって当たり前だ。
そう、私には関係の無い事よ。
少しするとサジタリーが神妙な顔つきで戻り、私の横に座った。
何か手紙を持っている。
「レン落ち着いて聞いてくれ。カテリナが不義をしたと言う事だ」
・・・?
言っている意味が分からなかった。
「・・・カテリナが?どう言う事?」
一気に体から血の気が引く気がした。
「カテリナのお腹の子供はその不義の相手だとという事だ」
「そんな事ないわ!!お腹の子供はホーン様の子供よ!!そんなの屋敷の召使い達が・・・」
自分で言いながら、気づいた。
「その召使い達はほぼいない。私達の離縁の為に動いてくれていたので辞めている」
そうだ。その通りだわ。
「なんて事を・・・!!ホーン様は、カテリナを捨てたの!?自分の子供が宿っているのよ!!もうすぐ産まれるのよ!!」
「だからだろう。レンと離縁した時点でカテリナはもう邪魔者なのだ。それも子供がいるとなれば、跡取り問題が少なからず出てくる」
「そんな事分かりきっていた事じゃない!!だから、私が引き止めたのに、でもあの人は連れて帰ったのよ!!どうして・・・どうして・・・!!」
酷いわこんな仕打ち!!
引き止めたのだから、最後まで面倒を見ると思っていた。たとえ、ザカリ家を出たとしても、どこか静かな所で見守ってくれると思っていた。
正妻にするつもりはないのも分かっていた。
「不義を働いた男が、ホーン殿に隠し事は出来ないと白状したそうだ。カテリナはその後直ぐに屋敷を出され、行方不明という事だ」
「当たり前じゃない!元々実家には帰れないもの!!」
涙が溢れてきた。
帰れないのはカテリナだって知っている。それでもホーン様を愛していたから、私の手を払ったのだ。
ホーン様だってカテリナが自分を愛し、すがっていたのも分かっていたのだ。
それなのに、どうして、どうして!?
どうしてと、反芻しながらもカテリナにこんな酷い事をしたのが理解も出来、腹立しく、辛かった。
ホーン様はザカリ家当主。
立場を保つ為には最良の考えだ。
私と離縁すればカテリナの処遇は誰もが気になる所だ。あれだけ仲睦まじい様子を憚りなく見せていたのだ、下手に扱えばホーン様の資質が問われる。
由緒あるザカリ家と縁を持ちたい貴族は幾らでもある。しかし、自分の娘を差し出す親にしてみれば、そのカテリナの対応に一喜一憂するだろう。
カテリナはザカリ家にとって重荷でしかない。
けれど子を成している為、下手に扱えない。
それなら、カテリナの不義を仕立てあげれば、子供も、カテリナも、両方問題なく追い出せる。
とても簡単で、卑怯な手だ。
「・・・最後まで・・・最後まで・・・あの方は都合のいい女としてしか私達を見ていなかったのね!!」
「これを」
泣きじゃくる私の背中を擦りながら、持っていた手紙を私に渡した。
「君宛てだそうだ」
真っ白な便箋。
中を開くと見覚えのある字。
引き止めてくれて、ありがとう。
綺麗ではないが、懐かしいカテリナの字。
たったそれだけの文字なのに、胸が益々苦しくなり、益々涙が落ちてきた。
カテリナ・・・カテリナ・・・!!
もっと、
あの時、
引き止めれば良かった。




